第219話・物件探し
え~と……物件探し、舐めてました。
ヤドラムの歓楽街なら栄えてるんだし、サクっと見つかるんじゃね?とか思ってたんだけども……それが見つからないのよ良い感じの物件が……。
そりゃそうだよね。ここのところの好景気でヤドラム周辺の人口は増加した。
人が増えればそれを目当てに商売する人も増えるってもの。
今やヤドラムの歓楽街は店舗が足りていない状況だ。
歓楽街のメインストリートに面した店舗に空きがあるはずもなく。
裏通りの店舗ですら空きを待っている状態なんだそうだ。
一応、不動産関係を取り仕切っているのは新設された商業ギルドなんだけど、そこはそれ歓楽街の方面は前からマフィアが仕切っているわけで……。
「歓楽街の物件が軒並み『エシェド・ファミリー』に押さえられているとは…」
正直、今回の件にはマフィアを絡ませたくはないんだよねぇ。
いろいろと秘密な事もあるし、個人的に店舗を魔改造したいとも思っている。
マフィア如きに秘密の一端でもバレるような事があったらと考えると、物件探しも慎重にならざるを得ない。
「マフィアが邪魔なら潰してしまえば良かろう?」
とレッドさんは簡単におっしゃるが、マフィアにも使いようがあるんで安直な方法を取るわけにもいかないのよ。
こりゃあ困ったぞ。と、嘆いているところへ商業ギルドから朗報が届いた。
なんと歓楽街との境界線の近く商業ギルドが仕切っている側にちょうどいい空き物件があるという。
そこは繁華街と歓楽街の境にある物件だった。
大通りからは少し離れているが、石造りで地上3階地下1階の物件。
元は歓楽街でやっている飲み屋兼風俗店の事務所だったらしいんだが、事業が上手くいかずに撤退。店の方はマフィアが手に入れたんだが、事務所の方は場所が繁華街側だったのでギルドが仕切る事になったそうだ。
ただ、なぜかこの物件では商売が長続きしないらしい。
はっきり言って事故物件級の厄介な物件。持ってるだけで赤字が増えるのでギルドでは安値でマフィアに買い取らせようかという話も出ているとの事。
「裏でマフィアがイタズラしているパターンじゃね?」
「仮にそうだとしても、我とユウキなら問題にもなるまい?」
だよねぇ~。戦闘力ならレッドさんだけでもオーバーキル状態だものね。
安値でマフィアに買われるくらいなら俺が買っちゃおう。
貰った支度金なら充分に賄える額だし、立地条件は少々悪いけど大人の隠れ家っぽい店を目指しているって考えれば気にはならない。
てな事で、早速ギルドで物件買取の手続きをして支払いも済ませ、権利書を手に現場へとやって来た。
「う~ん、見た感じはちょっと古いけど頑丈そうな造りでイイんじゃね」
「そうだな。裏通りだから人通りはちと少ないが仕方あるまい。儲け云々の店でもないしの」
「商売の方は半分レッドさんの趣味みたいなものだしね。経理や仕入れなんかは俺がDELSONチートを使ってなんとかするから気楽にやってちょうだいな」
「なにかもやってもらってスマンな。感謝する」
「イイってことよ。俺とレッドさんの仲じゃん」
「しかし、ユウキの世話になるだけでは我としても気が咎める。だから我の真名をお主に教えておこう。ちと耳を貸せ」
そういうと、レッドさんは俺に耳打ちをした。
真名?前に名前は無いって言ってたのに?
「この名を気軽に口にするな。お主が本当にどうにもならない時にその名を使え、どこに居ようとも我が助力しよう」
「あ……ああ、わかった……」
よくわからないが、これはレッドさん成りのお礼なのだろう。
とりあえず、ありがたく思っておく事にしよう。
それからレッドさんと内見がてら店の内装やら魔改造部分を話し合い、手近な所かた着手していった。
そして、十日ほどで魔改造は半分程度だが開店の目処が立ち、静かに営業を開始したのだった。
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