第216話・お披露目
「アンタって人は厄介事を増やさないと生きていけない病気でも患ってるの!?」
リビングの隣の部屋へと連れ込まれた俺は、案の定というかいつもの如くというかユーノさんのアイアンクローを食らっていた。
「いだだだだだ。脳がぁ~脳がはみ出るぅ~」
ユーノさんの白魚の様な指がいつも以上にギリギリと食い込んでくる。
「まさか、あのイケメンの正体が神竜とはねぇ。どおりで動けなくなるはずだわ」
と、感心しているのはルキアさんだ。
「ええ、息をするのもキツいくらいの覇気でしたねぇ」
と、マリアさんも追従する。
「あれだけ人間離れした覇気を扱えるから、あの人が神竜だって事はまず間違えじゃないと思うけど、アンタあの覇気だけで判断したわけじゃないでしょうね?」
ユーノさんが主張するのももっともだけど、俺はドラゴンモードのレッドさんも見てるから安心してほしい。
「だ…大丈夫ですよぉ~。初対面の時はちゃんと竜の姿だったんだからぁ~。だから…だから、アイアンクローを解いてぇ~」
「そうは言っても、こればかりはちゃんと確認しておかないと今後の事に支障が出るのよ?」
「わかりました。レッドさんに説明して証明してもらうようにしますからぁ~。脳がぁ~脳がぁ~」
ユーノさんのアイアンクローでしこたまHPを削られた後リビングに戻された。
「……んで、レッドさんには悪いんだけどドラゴンモードになってもらいたいの」
レッドさんに理由を説明してお願いしてみる。
「まあ、そうだな。この姿のままで信用しろというのも無理だろう。構わんぞ」
と、快諾してもらった。
んじゃあ早速、竜の姿に変身~てなわけにはいかない。
ここでドラゴンモードになろうものなら家がバラバラになっちゃうものね。
てなわけで、パーティメンバーとメイドさんたち全員で連れ立って森の奥に来た。
「ここら辺なら大丈夫かなぁ」
ここは俺がいつもロケットベルトを使って離着陸している場所。
そこそこ開けてもいるし村人も滅多にに来ないのでちょうど良い。
レーダー機能で周囲に誰もいない事も確認済だ。
「んじゃあ、レッドさん。よろしくお願いします」
「うむ、少し離れておれ。少々嵩張るのでな」
そう言われて俺はレッドさんの左側に少し離れておく。
ユーノさん達は俺とレッドさんに向かい合う形で離れた。
それを確認したレッドさんは一つ深呼吸した。
その途端、レッドさんが淡い光に包まれ、見る間に竜の姿へと変身した。
「これで我が神竜だと証明出来たであろう?」
深紅の身に神々しさを湛えるドラゴンモードのレッドさんは、相も変わらずカッコ良いね。
「どうです?これが本物の神竜のレッドさんです」
ちょっと自慢するように振り返ると、そこには身を屈め傅くユーノさん達がいた。
その光景は、まるで絶対的な存在に仕える信徒のようだ。
なんか俺がすごく偉くなったみたい。
「うむ、苦しゅうない。良きに計らえ」
ちょっと言ってみたくなったのでカッコ良さげに言ってみた。
「……ユウキよ。オマエはたった今、自分で自分の死刑執行書にサインした事に気づいておらんのか?」
なんかレッドさんが可哀想な子を見る目で俺を見ている。
「え?」
そう言われてみんなを見ると、全員がなんか殺気の籠った目で俺を睨んでいた。
ああ~……。これは……俺、死ぬかもしんないわ……。
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