第209話・領都へ……
それではみんな一緒に領都に帰りましょうってな事にはならない。
わざわざ証拠を三等分した意味が無くなっちゃうからね。
てな事で、第一陣としてターナーさんクリスティさんチームが最初に旅立ち、次にマーティンさん、最後に俺がモルドバを出る事になった。
まあ、借りていた宿泊施設の返却手続きやらで3日ほどの間隔を空けての移動だ。
んで、俺がラストなんでその間の6日間ほどはガッツリと稼がせていただいた。
そりゃもうガンバりましたよ。一ヶ月分は稼いだね。
だもんで、モルドバを出立する時にはホクホク顔でした。
もちろん、お土産も忘れずに購入しました。忘れたら命に係わるからね。
うちの女性陣はメイドさんも含め、この手の事に厳しいのだ。
そして、ギルドで出立に際しての手続きをしている時にある噂が流れた。
曰く、クゥオンロン山から爆発音が聞こえた。
曰く、クゥオンロン山から噴煙が上がっているのを目撃した。
曰く、クゥオンロン山が噴火するのではないか?
曰く、誰かが神竜を怒らせたのではないか?等々……。
そんな不穏な話が流れれば、ギルドとしても事実確認をしないわけにはいかない。
近々、探索隊が編成されクゥオンロン山に向かう事が決定されたらしい。
まあ、俺としては例の巡礼者がレッドさんの洞窟に突入して、レッドさんが仕掛けた罠が発動した結果だろうと推測はしている。
でも、一応はクゥオンロン山は火山なわけで、マジで噴火の予兆だったら大変な事になる。それを確認する事はとても大事なことだ。
しっかりと確認してきてほしい。俺はモルドバから離れるんで関係ないけども…。
というわけで、いろいろと名残り惜しいが一路、麗しの領都へと向かうのだった。
領都への行程は、まず領境の町『テリア』へ行き、そこから定期馬車に五日ほど揺られて二つの村を経由。そして更に定期馬車を乗り継いで三日ほどで領都の手前の町『マネウサ』到着した。
ここまでほぼ半月ほど掛かってますよ。正直、アサイ村に帰りたい。
しかし、仕事は仕事。途中で投げ出すわけにもいかない。
とりあえず、マネウサの町で二日ほど休んで疲れを癒し領都行きの定期馬車に乗り込んだ。
そして三日後、領都『メルキア』に到着。定期馬車の駅に待っていたのは仕事仲間のクリスティさんだった。
クリスティさんはモルドバでのスカウト姿ではなく、白銀に輝くプレートメイルを着用していた。
「長旅、お疲れ様」
と、労いの言葉を掛けられた。
「お出迎え、ありがとうございます。やはりクリスティさんはスカウト姿より騎士姿の方がより美しさが際立ちますね」
「ふふ。お世辞でも嬉しいわ。ありがとう」
「いえいえ、お世辞なんて本心からですよ」
事実、彼女の濃い髪色と白銀のプレートメイルとの対比は、一幅の絵画のような美しさを醸し出していた。
「疲れているところ申し訳ないんだけど、伯爵様がお待ちかねなの」
そう言って彼女は俺を先導する。その先には立派な馬車が待機していた。
「お待ちかねですか…。なら、急ぎ参上致しましょうか…」
正直、すぐにでも宿に入って休みたいのだが、上司が待っているのならば行かねばなるまい。宮仕えになるつもりは1ミリもないんだが、これも給料の内と諦めるしかない。
ため息と共に馬車に乗り込む。
これじゃ、まるで護送される囚人の気分みたいだな…。
なんてその時は冗談めかしく思っていたのだ。
まさかそこに地獄の口が開いて待っているとは知らずに……。
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