第206話・モルドバ警備・マフィア連合
マーティンさんの一言で俺達の行動が決まった。
それからはマーティンさんとターナーさんが巡礼者の屋敷を、俺とクリスティさんがマフィアの事務所を見張る事になった。
まあ、このチーム分けはターナーさんとクリスティさんが暴走しないようにする為の措置でもある。無駄な正義感ほど怖いモノはないのだ。
そして事務所に張りこむこと5日。
ようやく、マフィアが動き出した。
真夜中過ぎのこと、マフィアの連中が数人ごとの小集団に分かれて事務所から出て行った。
俺とクリスティさんはその内の一組の後をつけていく。
つかず離れず尾行…と言っても俺のレーダー機能で簡単に尾行できるんだけど…。
小集団は町を離れ進んでいく。
そして朝方、日の出前に街道沿いの小さな森に入って行った。
そこには、事前に打ち合わせていたのか、マフィアの連中が揃っている。
彼等はそこで襲撃の手順を確認して散開していった。
どうやら、巡礼者を襲撃する手筈が整ったようだ。
レーダー機能でマフィア達の襲撃位置を確認する。
しかし、それは巡礼者のキャンプ地を包囲するような位置取りをしてはいない。
まるで敵にこちらの存在を誇示するかのような展開の仕方だった。
不思議に思い、レーダーの索敵範囲を広げてみる。
するとマフィア達とは反対の方に100人規模の集団が展開していた。
モルドバの警備隊だ。
「おやおや?これはどういうことだ?」
まるで示し合わせたように展開している。
という事は……警備隊とマフィアが連携していたってことか…。
これはモルドバの治安維持態勢がしっかり機能していたって事だ。
さすがはボスキャラの町、マフィアも使いこなしている。
どうやら俺が流した情報は蛇足だったようだ。
モルドバの警備隊は例の噂が流れた時点でマフィアを使って調査をしていたのだろう。そして、敵がどこの誰で何をしようとしているのか?が判明した事で今回の襲撃作戦に打って出るって事になったんだと思う。
「いやはや、モルドバの皆さんは優秀ですなぁ」
さて、戦況であるが巡礼者の戦力は30人ほど、それに対してモルドバの警備兵とマフィアの戦力は合計で150人ほど、戦力比は1対5。
数的には必勝パターンだ。
だが、相手はサルバン教ルメイ派の戦闘集団だ。マフィア程度じゃ傷一つつけられないだろう。
しかも、ルメイ派が魔導具を普通に使ってくるとは思ってもいないはずだ。
「そうなると、苦戦は必至だな…」
なんて考えている隣でクリスティさんが今にもマフィアを邪魔しそうな感じになっていた。そんなクリスティさんの腕を引っ張り無理矢理に移動する。
「ちょっと落ち着いて観察しましょうか」
と、クリスティさんに望遠鏡を手渡して巡礼者一行を示した。
クリスティさんは素直に望遠鏡を覗き巡礼者を観察し始める。
「え!?アイツ等の剣って…もしかして……」
そう小さく驚いてクリスティさんが俺を見る。
彼等に手にした剣の特徴に気が付いたようだ。
その剣の柄は独特の形をしており、そしてサルバン教のシンボルマークが彫り込まれていた。
「あの剣は『神兵の剣』……?」
それが決定的な証拠だった。
『神兵の剣』それはサルバン教の衛士しか携帯を許されない剣だ。
ちなみに例のシグナス隊の連中が携帯していた剣も同じ物だ。
「これでヤツ等の正体がハッキリしたでしょ?」
「そうね…。彼等は噂の通りサルバン教だったんだわ……」
これでクリスティさんも納得したようだ。
何せ、相手は国交すら通じていない国の連中だ。
その上、アイツ等はこちらを仮想敵国としても扱っている。
そんな連中がこの国で秘密裏に行動しているとなれば、この国にとってはマイナスにしかならない。
ならば、殲滅するのみ…。
そして、モルドバ警備・マフィア連合の攻撃が開始される…。
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