第202話・定期報告は飲みながら…
レッドさんとの出会いは少々衝撃的ではあったが、上手く信頼関係を築けた。
そして、レッドさんとは定期的に会う約束も取り付ける事に成功した。
「久しぶりにまともな者との会話が楽しめた。次を楽しみにしているぞ」
とレッドさんに評価されたのが嬉しかった。
翌日も荒野でクエストを熟してからレッドさんの所に行き、昔ばなしを聞いた。
とは言え、レッドさんの話は当時の戦争の話ばかり、超文明の人達の生活や文化の事となると情報は激減した。
「元々、興味なんぞ無かったし、人化してまで探る事でも無かったからな」
とレッドさんは言っていた。
しかしながら戦争の生々しさは伝わった。遠目ではあるが自らの眼で見た現実の話は、かなり強烈だった。
血で血を洗う戦場…意味なく殺されていく人々の怨嗟…。
正に地獄の光景がそこには広がっていた…。
「動物や魔獣を低俗で野蛮な生き物と言っていたヤツがいたが、私に言わせれば人間の方が野蛮で低俗に見えるのだがな…」
俺はその言葉に何も言い返せず、ただ肯定も否定も出来ずに無言でいるしか出来なかった。
「人間はいつになったら、知恵という武器の正しい使い方を覚える事が出来るのであろうな?」
「どうだろう?下手したら最後の一人になっても覚えられないのかもしれないな」
「ユウキは思った以上に冷徹な考えの持ち主だな」
「まあ、俺はどこぞの宗教家と違って、人間は神様に造られた特別な存在なんてコレっぽっちも思っちゃいないからさ」
「知恵を得たのは進化の偶然…か。それもまた正しい見方ではあるがな…」
俺とレッドさんとの会話は終始こんな感じで進んでいった。
そして夕刻、レッドさんとのおしゃべりを終えて町に戻った。
今夜はマーティンさんたちと定期報告の日、一応は尾行を警戒して町中をしばらくフラついてから指定された裏通りにあるバーに入った。
店内は薄暗くテーブル席にはパーテーションが切ってある。
一番奥の席からマーティンさんが手を振っている。
席には全員が揃っていた。
「すみません。遅くなりました」
「いや、こちらも今しがた来た所でね。まずは一杯いこうじゃないか」
と、ターナーさんがメニューを寄越してくる。
俺はワインをターナーさんとクリスティさんは『火酒』別名『ドワーフ・ワイン』という強めのお酒を頼んだ。
マーティンさんはすでにエールを飲み終えているらしく、二杯目は何にしようかとメニューとにらめっこを始めていた。
注文のお酒が来たので、軽く乾杯。
早速、情報交換に入った。
「たかだか三日じゃ、大した話も集まって無いとは思うが、どんな具合かな?」
と、マーティンさんが話を振ってきた。
じゃ、まずは俺からと答えたのターナーさん。
「俺の方は収穫ゼロだ…。冒険者達に聞いて回ったんだが、大した事は聞けなかったよ」
「私の方も似たり寄ったりね…」
とは、クリスティさんだ。
「護衛の仕事を請け負ってた連中にも聞いたんだけど、普通の商隊護衛のクエストばかりだったわ」
ふ〜ん…。やっぱり三日程度じゃ大した情報は無さそうだねぇ。
でも、マーティンさんの方は収穫があったみたい。
「裏の方から仕入れた事なんだがな…」
マーティンさんに因ると、治安の良いモルドバの町でも裏を仕切っている連中がいるらしい。大きな組織ではないんだけど、いろいろと胡散臭い仕事をやっているんだとか…。
で、そんな連中にも情報屋なんて仕事あり、そこから買った話なんだそうだ。
「ここ数ヶ月に掛けて素性の知れない連中がモルドバに入っているらしいんだ」
そいつらは少人数で数回に分けて入ってきたらしい。
規模は20〜30人程度、今現在は裏通りにある古い屋敷を借りて生活しているらしい。何しにモルドバに来たのかも不明なんだってさ。
「それって…。俺が商人連中から聞いた巡礼者かな?」
「巡礼者?」
「うん。竜を崇めてる連中なんだってさ。数ヶ月前から何組か入って来てるって屋台のおっちゃんから聞いたよ」
「竜を崇めてるねぇ…。『神獣信仰』か?すでに廃れていると思ってたんだがな…まだ、生き残っていたのか?」
流石はマーティンさん。宗教関係には強いね。
何やらブツブツと考え始めちゃってるけど、説明してくれないかなぁ〜。
お読みいただき、ありがとうございました。
不定期更新で、のんびり進めていきます。
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