第02話・DELSONを試そう
森の中を適当に歩き始めてしばらくすると
水の流れる音が聞こえてきた。
近くに川があるらしい。ラッキーだ。
川があればサバイバルも楽になるし、それに人里も遅かれ早かれ見つかるだろう。
そう安易に考えて、水音が聞こえる方へと足を向けた。
森を抜けると、そこそこ広めの河原に出た。
川の水も澄んでいて飲んでも大丈夫そう。
それに流れも緩やかだし、魚も居そうだ。
これなら「水」と「食料」の確保も簡単にできるろう。
ならばと思い、ここでDELSONを使ってみる事にした。
まずは吸引力のチェック、足元にたくさんある1㎝くらいの小石を吸い取ってみよう。
DELSONのスイッチを入れると、甲高いモーター音が響き始めた。
静音設計の賜物だろう、微かにしか聞こえない。
ゆっくりとホースの先端を小石に近づけると、ズココッって感じに小石を吸い込み始めた。
スゴイ!何の抵抗も無く、気持ちいいくらいにドンドン小石を吸い取っていく。
自分の周囲にある小石をあらかた吸い取ってみたが、DELSONが重くなったようには感じない。
ちゃんと吸い込んでるのかな?と確認しようと思ったら、ピロンと軽い音がして目の前に何か表示された。
「小石 3486」
……小石の個数かな?
ダストケースはラノベの定番のストレージみたいな仕様になっているみたいだ。うむ、便利ぃ~。
正直、こいつは俺自身に付いて欲しかったなぁ……。
次は川に向かってスイッチを入れた。
ゾゾゾって感じで川の水が吸い込まれていく。そして、確認。
「水 158」
こっちの単位は「リットル」かな?よくわからん。
さて、お次はどうしようかなぁ~
あ!あれにしよう!少し離れてる所にある1m程の小さめの「岩」
その岩に向けてDELSONのスイッチを入れる。
初めは何の反応もなかったので、少しづつ吸引力の威力を上げてみた。
モーター音も徐々に上がってくる。
すると岩がカタカタと動き始め、バコッという音と共にすごい勢いでこっちに飛んできた。
「のぁ!!!」
正直、ビビって腰を抜かした。が、岩は消えていた。
「岩 1」
うむ、成功~。なんとか吸引できたみたいだ。
ホッと一息ついて、もう一度川へ向かった。
食料確保のためだ。サバイバルなんだから水と食料の確保は絶対条件だ。
だが、DELSONがあればなんとかなりそうだ。
川に目を凝らして探してみると、数匹の魚が泳いでいるのが確認できた。
食べごろサイズの大きさだ。DELSONなら簡単に捕れるだろう。
あとはどうにかして「火」を起こせば、当面は安心できる。
では、「魚捕り」といきましょうか。
DELSONのパイプをライフル銃の様に構えて魚に狙いをつける。
そしてスイッチON!チャポーンという感じで魚が飛んできてDELSONに吸い込まれた。
「やった!!」
と、思った次の瞬間
ポーンと魚が吐き出されて、川に落ち逃げていった。
「え?どういう事?」
何かの間違いだろうか?
確かに魚は吸引されたはずなのに……なぜ?
もう一度だ!試してみよう。
…………。
いかん……。あれから、数回試してみたが同じ事の繰り返しだった。
魚は確実に吸引されているはずなのに、何かに弾かれる様に吐き出される。
マズいぞ……この問題を解決せんことには、このサバイバルは確実に詰む。
考えろ~……どうして弾かれる?~……。
……弾かれる?……弾かれる?!……
「そか!」
ダストケースのストレージ機能だ!
DELSONは何でも吸い込めるが、ダストケースのストレージ機能は生きた動物は収納できない。
だから、吐き出されたんだ!
そうとわかれば、あとは簡単。
お魚さんには悪いが、とどめを刺さしていただきましょう。
これも生きる為です。ごめんね。
ならば今度はDELSONの「お魚殺傷兵器」としての機能を確認せねばなるまい。
そう思って、俺はお魚との死闘に向かうのだった。