第199話・問答無用かよ!?
翌日はギルドに行かず、直接荒野に向かった。
本日のミッションは赤竜のブレスをいただきに行きます。
とは言え、この赤竜さんが住んでいらっしゃる場所ってのがそこそこ遠い。
この荒野を超えてクゥオンロン山の麓まで行かないといけない。
歩きで4〜5日は掛かるって話だ。
でも、この俺が素直に歩いて行くなんてあるはずない。
ここはロケットベルトの出番である。
いくらスピードが遅いとはいえ、2時間も飛べば目的地付近には行ける。
昼メシ前には赤竜さんと御対面できるって寸法だ。
てなわけで、早速ロケットベルトを装着してビュ〜ンとクゥオンロン山の麓まで一っ飛び、2時間ほどで目的地付近に到着、念のため上空からレーダー機能で地上を観察してみたが地上には人はいないようなので、そのまま着陸した。
町で噂の巡礼者がここら辺に来て居てもおかしくはないんだがなぁ?
まあ、巡礼のやり方にもいろいろあるんだろう。
知りもしない連中の心配しても意味はないから、放っておくとしよう。
それから赤竜が住まう洞窟を探して周囲を探索する。
ギルドで調べていたのが幸いし、目的の洞窟はすぐに発見できた。
見た目はいたって普通の洞窟、神の眷属が住んでいる様な荘厳な雰囲気は無い。
「まあ、目的は洞窟じゃなくて、中にいる竜の方だし関係ないか」
そう気を取り直して、俺は洞窟の中へと歩を進めた。
暗い洞窟を進んで行くと普通の洞窟ではない事がすぐにわかった。
中が少しづつ明るくなっていくのだ。ダンジョンの様に壁自体が光っている。
5分も歩くと松明も必要ないほどの明るさになっていた。
そして、俺はもう一つの事に気づいて寒気がした。
それは壁や地面の一部がガラス化しているのだ。
「ガラス化が起きるほどの熱量か…。流石は赤竜、神の眷属は伊達じゃないな」
こんな密閉空間でブレスを吐かれたら、逃げる事さえ無理だろう。
「タコツボを掘って隠れても無駄そうだな…」
過去に『加護』を貰った連中は、どんな装備でどう戦ったのか?興味が湧く所でもある。
更に10分ほど奥へ進むと目的地に到着した。
目の前に赤竜と思われる竜がいた。
全身が赤く美しい鱗に覆われ、手足があり、背中には立派な翼が生えている。
いわゆる西洋型の竜だ。
ちなみによくラノベに登場する竜には「逆鱗」が有って、そこが弱点として扱われているけど、調べると西洋型の竜には逆鱗は存在しない。
逆鱗があるのは東洋型の竜だけだ。
これは東洋思想独特のモノで、『事物は完成した途端に崩壊が始まる』という考えからきている。
ここから『未完成の事物は永遠に存在する』という逆転の発想ができ、未完成の象徴として一枚だけ鱗が逆になっているのだ。
これは神社仏閣にも見られ、天井板や飾りを一つだけ逆にしておく事で『未完成』な事を表し、建物の永遠性を表しているのである。
なので、昔話の東洋の竜のほとんどが『不死』の存在として語られている。
西洋の竜の場合、大抵は「悪魔の化身」と位置付けられているので神の信徒である人間に滅ぼされるのが常となっている。
ついでに言うと、こっちの世界には『逆鱗』という概念そのものが無いので弱点も存在しない。
閑話休題、話を戻そう。
件の赤竜だけど、こちらに背を向けて座っている。
何をしているのか?と気になって覗き見しようとしたところ…。
「もう少し待っていろ。すぐに切りの良い所まで読み終わる」
と、声がした。赤竜は読書をしていたようだ。
ギルドで調べた時に赤竜は人語を解するって記述があったけど、事実だったみたいだ。
良かった…。会話が出来るなら話し合いでこちらの要望も聞き入れてもらえるかもしれない。
待つことしばし…。読書を中断したらしい赤竜がこちらに顔を向けて、こう言い放った。
「加護を欲しがる愚か者よ!私の至福の時間を邪魔した罪は重いぞ!消し炭にしてくれるわ!!」
そして、当然のことながら俺に向かってドラゴンブレスを吐きやがった!!
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