第198話・仕事も大事だけど趣味も大事
夕方、モルドバの町に帰還してクエストの報酬を受け取った。
今日は地竜に踏み潰されそうにはなったけど、出稼ぎとしては順調そのもの。そこそこ良い稼ぎになった。
そして町に帰ってくれば、情報収集のお仕事が待っている。
俺はいつものように混雑している商店街をフラつき適当に居酒屋に入る。
一応はそこそこ繁盛している店を選んでいるつもりだ。
カウンター席に座ってメシを喰いながら、ちびりちびりとエールを飲む。
隣の席に座ったのは若い行商人の男。
どうだい、景気の方は?と何気なくを装い話しかける。
始めの内は世間話でやり過ごしてし、杯を重ねて興が乗ったところで本題に入る。
「最近、オモロい話ないの?ほら、変なヤツ見たとかさ…」
だいたい、この質問で聞けるのは酔っ払いの戯言なんだけど、その酔っ払いが増えるといろいろと変わった事が聞こえてくる。
曰く、どこそこの国は軍事に税金を突っ込み過ぎている…とか。
曰く、なんちゃら領の領主は変な宗教に入れ込んで国王に目を付けられた…とか。
曰く、ナントカ皇国は古代の遺物をかき集めているらしい…とか。
大抵は何の確証も無い噂話程度の事ばかりだ。まあ、確度が高くて金が絡む話なら酔っていても喋らないだろうけどね。
そんな愚にも付かない話の中に町の話が一つあった。
「どうも、どこぞの巡礼者がモルドバに入って来たらしいんだ…」
近くで屋台をしているという、おっさんが話し始めた。
「なんでも、ドラゴンを崇めているっていう奇特な連中らしいんだがな…」
ふ〜ん…この世界にも竜を崇める宗教があるんだぁ……。
大して興味も湧かないが、しばし話を聴いてみる事にした。
「それらしい教会も無いのに、どこで何をしているのやらわからんらしい。まあ、ドラゴンなんぞに祈ったところで炎を吹かれる程度しか御利益ないからな。変わった連中も居たもんだよ」
がはは!と、おっさんは豪快に笑っていた。
それからしばらくの間、噂話を集めてみたがピンとくるモノが無かった。
そして宿泊施設に帰る途中、ある人物が俺に近づいてきた。
中肉中背、容姿は凡庸。ほとんど印象に残らない男だ。
「1番か?」
レーダー機能で確認しているが一応確認する。
「はい。定時連絡と通信状況の確認です」
DELSONには彼等が集めた情報が随時受信されていた。
音声データはテキスト形式にも変換され、画像データも幾つか受信されていた。
「確認した。受信は良好だな。引き続き情報収集を頼む。今後の直接連絡は緊急時のみに変更。以上だ」
「了解しました。情報収集を続行します」
そう言うと1番は何事もなかった様に人混みへと消えていった。
まあ、当然の事ながら初日から有力な情報が入ってくるはずはなく、彼等が集めて情報は俺が聞いた噂話と似たり寄ったりという程度のモノだった。ただ人数が多い分、数も多い。
「今日はこんなモノだな。あとは家でのんびりと情報の精査をするか…」
マーティンさん達との情報交換は三日後の予定だ。
それまでの間は情報収集と出稼ぎに勤しむとしよう。
「どうせなら、『神竜』のブレスでもゲットしに行くかなぁ〜」
お仕事も大事だけど、趣味の方も大事にしないとね。




