第194話・推薦の経緯
合格をもらえたので、まずは一杯やりながらお話でもしようって事になった。
まあ、俺には仕事の話よりも確認しておきたい事があるんだわ。
「まさか、マーティンさんがこっちに来ているとは思いませんでしたよ」
「一番驚いてるのは俺自身だよ。まさかこの俺が御貴族様の御厄介になるとはなぁ……」
「どういう伝手で伯爵様のお世話になったんですか?」
「ああ、そいつは例の教会の一件でな…。どうもあの件は根が深いらしい」
「まあ、ナンチャラ派のコインやら壊れたギルドスティックやらいろいろと発見されてましたしねぇ」
「どうもな、それが伯爵様が探りを入れてた事件と絡んでるらしくてな。本腰を入れて調べるって事になって『特務騎士団』が創設されたんだとさ」
「んで、マーティンさんがスカウトされたと……」
「そういう事だ」
「じゃ、なんで俺まで?」
「そりゃオマエさんが、教会事件の前から似た様な件を探ってるってわかったからだよ」
へ?俺、そんな事してた覚えはないんだけど?
なんて思っていたら、マーティンさんが領都で起きたある事故について話始めた。
それは、俺が昇格試験合格後にヤドラムへ帰還している頃に起こったらしい。
ある日の早朝、散歩を楽しんでいた老人が池の傍で遺体を発見したのが事の始まりだった。
当初、泥酔した被害者が足を滑らせ、そのまま溺死したという事故としてその件は片付けられた。
だが、その件に疑問を持ったのがその時ヒマをしていたマーティンさんだった。
「いやさ、あそこら辺って飲み屋の一軒も無いし、酔っ払ってブラつくにも繁華街から離れてるからさ、変だな?って思ってさ。それにもし事件だったら報奨金の一つも貰えるんじゃないかって考えて、ヒマつぶしに調べてみたんだよ」
調べていくうちに被害者の名前が判明した。
それがサロメ商店に人足として雇われていたジプト氏だった。
どうもこのジプト氏という人物は領都に到着してすぐにサロメ商店を理由も告げずに辞めていたようだ。
「んで、このジプトって野郎を洗ってみたらさ。偽名を使ってやがったんだわ」
結局のところ本名は判明しなかったんだが、どうやら裏の仕事をする為にサロメ商店に潜り込んだらしい事が判明した。
「どうも奴さんは、押し込み強盗なんかを請け負ってる一味で『引き込み』って仕事をしてたらしいんだが、その一味ってのに例の教会が絡んでるらしいんだわ」
ま、あくまでも噂で証拠なんて無いんだがな…とマーティンさんは言っていた。
で、マーティンさんはその事を伯爵様に報告したところで『特務騎士団』にスカウトされたんだそうだ。
「んで、調べている内に分かった事がもう一つあったんだわ。それがオマエさん、あの試験の時にジプトの野郎に探りを入れてたって話じゃないか」
ああ…、そういう事か…。その事で俺もこの件に首を突っ込んでいると思って伯爵様に推薦したって事か…。
「俺はたまたまジプトさんが怪しいって感じただけなんすけどね……」
「それもオマエさんは鼻が効くって証拠さ。だから、俺はこの仕事に絡んでもらおうって思って推薦したんだよ」
はぁ〜…と俺はため息が出た。マーティンさんには森での事は知られてはいないようだけど、俺が調べてた事がバレてちゃ仕方ないか。
それに伯爵様からの依頼だから拒否なんてあり得ないしね。
「そういう事でしたか…。じゃ、役に立つかはわかりませんが、お手伝いさせていただきますよ」
「ああ、頼むよ。勘の良いところを見せてくれよな」
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