第188話・職員会議
ラムちゃんがダンジョン農地の開拓を開始した。
念のためと思い、軽く棒人形の扱い方をレクチャーしたんだけど、ほぼ完璧にマスターしてたものね。
流石はラムちゃんだ。伊達にDELSONとホットラインで繋がってないね。
これなら、放っておいてもちゃんと開拓するだろう。
そして、本日はアサイ村冒険者育成学校の職員会議の日である。
今日の議題は生徒達の今後の教育方針について。
まず、本校の一応の責任者である村長のパレオさんから発言があった。
「報告書によると、今期の生徒達の成績は非常に優秀との事なので冬期の訓練内容の変更を検討したいと思うのですが、何かご意見はありますか?」
予定通りの訓練だったら、村の麦刈りの時期が終われば越冬訓練などが実施される事になっているんだけど、第一期生が6人だけだった事からほぼマンツーマンの指導がなされていた。
それが良い方に転がって、生徒達はそれぞれに優秀な成績を収めている。
何せ、戦闘能力とサバイバル能力に至っては、ダブル爺の尽力で下手な兵士より優秀らしい。
そこで教師陣から訓練の前倒しを検討しては?という意見が出てきた。
要は、このまま訓練するよりはヤドラムの街で冒険者として実地訓練をした方が彼等の経験になるんじゃないか?という事らしい。
「今の彼等なら冒険者として充分に対応できるはずだ。あと必要なのは経験だけと言えるだろう」
と、鬼軍曹ことミュラー爺さんが言った。
「ただ彼等に冒険者生活を送らせるだけでは訓練にならない。指導員の同行が必要と思うのだがどうだろうか?」
まあ、彼等だけでヤドラムで冒険者生活をしろってのは問題だろう。
ならば、指導員が見守る形で経験を積ませるのが教育というものだろう。
てなわけで、指導員の選抜になったのだが……。
「え?俺っすか?無理ですよ。この冬は別の仕事が入ってますから」
みんなが視線が、どうせヤドラムで出稼ぎするんだからオマエが指導員になれよって言っていた。
しかし、無理なものは無理だ。なんせ俺には先約がある。
「あれ?冬はヤドラムで出稼ぎって言ってなかった?」
ってルキアさんが聞いてきた。
「今年はモルドバで稼いぐ予定です」
「何故にモルドバ?」
「商人情報ですよ。あっちは町中の仕事をする冒険者が少ないらしいんです。それにヤドラムより報酬が良いって話なんで……」
と、一応は誤魔化す。まあ、商人の情報は事実なんだけど、今回の仕事に伯爵様が絡んでる事は秘密にするって事になっているんでね。
「それに俺は講師のお手伝い扱いですよ。正式な講師じゃないんですから指導員の方はちょっと問題があるかと……」
ってわけで、指導員は他の講師陣から選ぶ事になった。
そして議論の末、指導員に選ばれたのはミュラー爺さんとルキアさんとマリアさんの三人に決まった。
この三人なら少々キツ目の課題を出すかもしれないが、生徒達に有意義な経験を積ませる事が出来る人選って事なのだろう。
この冬、生徒達は更なる飛躍を遂げる事、間違いなしである。




