表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/227

第186話・ダンジョン経営

本年ラストの更新です。

今年もお付き合い頂き、ありがとうございました。

来年もダラダラと続きますので、ヨロシクお願いいたします。



そんなこんなでオルトロス討伐も無事に終わり、ダンジョンの第八階層の出現も上手くいって七日ほど経った。


そして、本日はダンジョン定例会である。


クララ様には既にギルドから報告はいっているけど、裏事情の報告もしなきゃいけない。ついでに、ラムちゃんの成長祝いもやる事になっている。


「てなわけで、ラムちゃんの第八階層開放を祝って、カンパーイ!」


「「「「カンパーイ!!」」」


みんなでグラスを傾け、お祝いの開始です。


お祝いのワインは奮発してちょっとお高めのヤツ。

なかなか美味しいワインです。


「しかし、イイんすか?今回の討伐は赤字だったんでしょ?」


いくらお祝いの費用がパーティの運営資金から出ていると言っても、我がパーティはパーティらしい仕事を一切していない。

今回の討伐だって、表向きは『趣味』って事になっている。


「大丈夫ですよ。オルトロスの素材がそこそこ高額で売れましたから」


と、マリアさんが収支報告書を見ながら言う。

実際のところは「ちょっと足が出ちゃった」って程度の赤字で済んだのだとか…。


「オルトロスの素材がほぼ無傷だったのが大きいよねぇ〜。これもユウキのおかげだね」


とルキアさん褒めてくれる。

ああ〜…あの罪悪感が、ここで役立ったと思えば良いんだな。


「しかも、申請すればオルトロスの「単独討伐」って称号ももらえるしねぇ」


それは言わない約束ですよ、ユーノさん。

あの後、ギルドでそんな称号があるけど、申請しとくか?ってダルトンさんに言われたが、拒否らせてもらった。

爆睡中の相手の寝首を掻いただけで称号なんて恥ずかしすぎる。

しかも、申請にそこそこの費用が掛かるって事なら称号なんぞいらんわ。


「あんな称号なんて無駄の極致ですよ。恥の上塗りな上に赤字を増やしてどうすんですか」


「でも、称号があると指名依頼が入り易くなるらしいわよ」


「それなら、尚更いりませんよ。ただでさえスケジュールがいっぱいなのに」


「それはユウキ君が無駄に趣味が多すぎなだけでしょう?」


「趣味の無い人生ほど味気ないモノはありませんからねぇ」


アタシはその趣味で苦労してるんだけねぇ〜ってユーノさんは苦笑してた。





「それはさておき、ラムちゃんの方はどうなの?」


大事なのは俺等の赤字ではなくラムちゃんの方。

何せ、こちらはヤドラム周辺の命運も掛かってるからね。


「うむ、第八階層の開放に伴い、クララとも話し合って各階層のモンスターの一部を変更する事になった」


最近、ラムちゃんはクララ様から「領地経営」の勉強をしてもらっている。

クララ様に言わせると、ダンジョン経営も領地経営も似たモノらしいのだ。


「要は、どれだけ多くの人を引き寄せ、逗留させるか?って事です」


とクララ様は言うが、ダンジョンに冒険者を逗留させるだけじゃダンジョンの栄養にはならないと思うんだけどなぁ?


「冒険者の死体だけがダンジョンの栄養とは限らないよ」


とラムちゃんが、いつの間にか白衣姿になって説明しだした。


「それはどういうこと?」


「ワタシの栄養である『マナ』は空気中からも摂取できる事は知ってるでしょ?でも、それだけじゃ足りないから、外にいる動物を誘い込んでいるんだけど、その動物だってバカじゃないから、大半は出ていっちゃうの」


「うん、それは何となくわかる。だからモンスターで狙うんだよね?」


「でも、誘い込んだ動物を全部殺してるわけじゃない。その証明に第一、第二階層には生態系が出来てる。まあ、この生態系は勝手に出来ちゃったんだけども…」


「んじゃ、その生態系はラムちゃんの栄養にはなってないって事?」


「その通り、言わば無駄な存在なんだけども、外の動物を誘い込むのには役立っているから放置しているの」


「なら、他の栄養源って?」


「外から来る動物の『排泄物』だよ」


……そういう事か……。ダンジョンを食虫植物に例えた事があったが、まさしくその通りだった。

元の世界にも食虫植物とネズミが共生しているモノがあった。

それはネズミが食虫植物の出す蜜を舐め、その時に食虫植物の中に排泄する。

この排泄物が栄養になって、食虫植物とネズミの共生関係が成り立つ。

時々、ドジなネズミが足を滑らして食虫植物の中に落ちて自ら栄養になる事もあるらしい。


肝心なのは『マナ』の素になるモノ。

それは死体だけじゃなくても良い。外から持ち込んだ残飯でも、汚い話になるけど『ウンチ』でも構わないのだ。まあ、『マナ』の含有率は低くなるけど…。


そういう事ならば、危険度の低い階層では餌である冒険者を狙うよりは、ある程度の期間逗留させる様にした方が、長期的に見て効率良く『マナ』の摂取が出来るというわけだな。


「雑な計算だけど、20人の冒険者が3日間の逗留する事で死体一人分と同等のマナが摂取できると踏んでいる」


その為に第三、第四階層のモンスターを一部、昆虫系から動物系にシフトチェンジするんだって。

じゃあ、どんなモンスターにするかって事なんだけど、そこはクララ様がいろいろと資料を集めて検討したんだと。

んで、検討した結果、他のダンジョンでも人気の高い『オオネズミ』が採用されたんだわ。このモンスターは30cm前後と小さめだけど、肉が美味いんで人気がある。

マナの使用率が少々高めらしいんだけど、ダンジョン内に常時200人程度の冒険者が逗留すれば、充分に採算が取れるんだってさ。


ダンジョンも収支計算が必須の時代に突入したらしいです。


目指せ!居心地の良いダンジョン!!ってラムちゃんは張り切っておりました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ