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第184話・いよいよ討伐……


「いやぁ〜、最後は全部マリアに持ってかれちゃった感じねぇ〜」


とは、ルキアさんの感想だ。


あの後、ダルトンさんが判定試験の終了を宣言して、会場の片付けを始めたところでマリアさんが見物客の冒険者さん達に囲まれて質問攻めにあっていた。


どうも、冒険者さん達も「早撃ち」をやってみたくなったらしい。

まあ、一部の冒険者さんはマリアさんのサインをねだっていたけど……。


この光景を見ていたダルトンさんは、「射撃」自体がイベントになると思ったらしく、ギルドに企画書を出すと言っていた。

元の世界でも射撃大会は人気のイベントだったから、こっちの世界でも良い金稼ぎイベントになるだろうな……。



さて、そんなこんなで片付けも終わり、一泊してからの翌日は移動日だ。


目指すは第七層に降りた所にある最終宿泊地点。

ここで、討伐の用意をして翌日は中央闘技場で決戦という予定になっている。


我がパーティ「紅の風」初の戦闘だ。

なので、今回はDELSONで製作した装備の試験も兼ねて戦おうと思っている。

と言っても、目立つ装備はユーノさんから却下されたので、見た目だけは普通レベルの『パワーアシスト・スーツ』をみんなに装備してもらう事になっている。


このスーツは例の古代文明都市で発見した『コンバットスーツ』を改造したモノなんだが、見た目が革製のツナギっぽい。

しかし、中身の方はオーバーテクノロジー満載。

表面は防弾、防刃、耐熱仕様だし、二層目は衝撃を吸収、拡散するし、三層目の人工筋肉は関節部の小型ゴーレムモーターと連動して、常人の50倍のパワーで装着者をアシストしてくれる。


ただし、今回はリミッターを入れてフルパワーを出せない状態での使用するって事で、ユーノさんが譲歩に譲歩を重ねて使用許可を出してくれた。


「まあ、フルパワーだったら、このスーツだけでオルトロスを瞬殺出来ちゃいますからねぇ」


「そんな悪目立ちするような事が許可できるわけないでしょ!」


と、ユーノさんは怒っていた。


って事で、今回は常人の1.5倍程度のマイルド仕様での戦闘になる予定だ。


普通レベルで目立たない様にとは言っても、たった四人でオルトロス討伐って事自体が異例なんだから、多少の事は目をつぶって欲しいってのが本音なんだけど…。




んで翌日、討伐本番の日がきた。

お揃いの『パワーアシスト・スーツ』は、ちょっと派手目に赤色のストライプで模様を入れてカッコ良さげのデザインにしてみた。


いいねぇ〜。何か特撮物の防衛隊の隊員になったみたいでテンションが上がる。


女子チームの三人はちょっと恥ずかしそうだけど、俺だけはウキウキモードで中央闘技場に向かう。

勿論、ダルトンさんも見物客も引き連れて大行列になっているけど……。



そして、闘技場に近づいてきた時だった。


ゴゴゴゴぉ〜……ゴゴゴゴぉ〜……


地響きのような低音が微かに聞こえ始めた。


後ろからついて来ている冒険者達は何やら不安気だ。

そりゃそうだろう。真っ暗な迷路を松明やランプの光のみで進んでいる時に、この不気味な音が聞こえてきたら不安にもなる。


だから、周回で稼ぐ冒険者は中央闘技場には近づかない。

変な好奇心を発揮して死んだら元も子もないからだ。


あのダルトンさんでさえ……


「オルトロスの唸り声か……ヤツはもう俺達の事を感づいていやがるな」


なんて警戒していた。

さすがはギルドを支える元冒険者、こういう慎重さがあるからBランクまでのし上がれたのだろう。


そして、この警戒心が元で行軍のスピードが落ち始めた。

まあ、それ自体は悪い事ではないんだが、いかんせんこの音の正体を知っている身としては、この後の事が心配になってくるんだよねぇ〜。


そして、現場に到着するとラムちゃんとの打ち合わせ通りに中央闘技場が明るく照らし出された。




そして、ヤツが明るみに晒される。


オルトロスは爆睡中だった。腹を出してひっくり返った状態で……。

年末に見た時と同じ格好で寝てやがってますよ……。


……あぁ〜、やっぱりだったか……。年末から状況に変化は無かったようだ。


冒険者のみなさんを始め、ダルトンさん、そしてユーノさん達女子チームもその光景を見て固まってしまった。


そう言えば、女子チームはちょくちょくダンジョンに来てたけど、このオルトロスを見るは初めてだったねぇ〜。


さて、どうしようか?冒険者のみなさんは手に汗握る死闘を期待なさっていたはずだが、この状況で死闘を演出するのはかなり難しい。


「ええ〜と…。緊急会議を招集しま〜す」


俺は小声でパーティメンバーを集めた。

円陣を組んでヒソヒソと話し合いを開始する。


「ちょっとユウキ。オルトロスが寝てるなんて聞いてないわよ」


と、開口一番ルキアさんが抗議してくる。


「そんな事、俺に言われても知りませんよ」


「じゃあ、どうするのよ。ちょっかいでも出して起こすの?」


と、ルキアさんは無理矢理オルトロスを目覚めさせようと提案してくる。


「そうね。とりあえず、オルトロスには起きてもらわないと話にならないわよね」


ユーノさんもオルトロス起床には賛成のようだ。


「じゃ、戦闘準備をしてからオルトロスを起こして、一斉攻撃をしますか?」


マリアさんは寝起きのオルトロスを瞬殺しようと考えているようだ。

いやぁ〜冒険者の考えってのは、容赦ないねぇ〜。

でも、その方が少人数での討伐が不自然に見えないはずだ。


「それが良いかもしれないですね。楽に勝てそうだし……」


そう、討伐方法の話をしていると近くにいたダルトンさんが話に加わってきた。


「おい、ちょっと待て。なぜ?わざわざヤツを起こす必要があるんだ?」


と、ダルトンさんが異を唱える。


「え?でも…。ヤツが寝てたら戦闘になりませんよ?」


「なんでわざわざ戦闘する必要があるんだよ?相手は寝てるんだぞ。寝込みを襲うのが一番手っ取り早いだろうが…」


「でもそれだと、魔導具の実戦試験になりませんよ」


「あのなぁ、なんでそんな事に拘るんだ?実戦試験なんてオマケみたいなモノだろう?魔導具の売り込みは判定試験で済んでるだから、戦闘するリスクなんぞ負わんでもイイだろうが?」


……あ!そうだった。討伐に二級危険魔導具を使用するのは、少人数での討伐の不自然さを消す為だった。

爆睡中のオルトロスの討伐なら、わざわざ二級危険魔導具を使用する事もない。

寝ている間に止めを刺せれば戦う必要もない。


「オマエ等は冒険者なんだぞ。正々堂々と闘いを挑むのは騎士とか近衛兵だけで充分なんだよ」


そうなのだ。冒険者とは命を賭けたハイリスクな商売だ。だからこそ冒険者達はそのリスクを如何に下げるかに苦心するのだ。

目の前の討伐対象が爆睡中なら、これほど低リスクな状況は無い。


こうして、討伐方法が決定した。


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