第183話・切っ掛け
マリアさんの射撃シーンをちょっと変更。
さて、一回目の判定試験も無事に終わり、翌日は移動日。
目指すは第五階層の中央付近にある大広間だ。
順調に目的地に到着したら、試験の準備。
それが終われば、余裕を持って一泊とあいなった。
んで翌日、第二回判定試験が開始される。
まずは、ユーノさん特製の魔導具の杖は当然の如く2本供『二級判定』を受けた。
次は俺の造った魔導具の一つ目、手甲タイプのヤツだ。
これは風魔法を利用してパンチのスピードを上げる様に開発した。
「ブースト・ナックル」と命名した魔導具だ。
拳闘士とかモンクとかいう職種の冒険者向けに作ってみた。
ガイーーン!!と派手な音を立てて標的の鎧がひしゃげる。
「これは、なかなか気持ちイイわね!!」
とルキアさんはご満悦のようで、標的をガシガシ殴り飛ばしている。
「ただ、攻撃力もほどほどだし超接近戦用じゃ、三級が妥当かな…」
とユーノさんの評価は辛口だった。
しかも……。
「普通に売れないモノだな。コレクターズアイテムにしかならん」
これはダルトンさんの評価だ。
何故かというと、拳闘士とかモンクとかいう職種の人たちは、自分自身の鍛えた肉体や技術に対してプライドを持っている。
そんな彼等は、安易に攻撃力を増すような魔導具は装着したがらない。
装着するのは、せいぜいスピードアップ系やジャンプ力を上げるような魔導具で、戦闘の時の手数を増やすモノが好まれるらしいのだ。
うむ……。これは俺の失敗だな。職種別の好みがあったとは気づかなかった。
これからはお客様のニーズに合わせたモノを製作していこう。
んで、お次はというと……。
「これはオマエ等じゃ扱えそうもないからな。俺に任せろ」
と、ウキウキ顔のダルトンさんが大きの戦鎚を担いで現れた。
この戦鎚の打撃面には凹面状の凹みが5個ほど空いている。そこにはそれぞれに小型の爆裂系の魔法の発動体を複数仕込んでいる。
コイツは打撃面に衝撃を与えると自動的に魔法が発動する仕掛けになっている。
そして、凹面状で発動した爆裂系魔法は『成形炸薬弾』で発生する『ノイマン効果』と似たような現象が起こるって寸法だ。
爆発自体は小規模だけど、凹面に合わせた薄い銅板でも仕込んでおけば、メタルジェットで30mm程度の装甲板なら楽に貫通出来るはずだ。
ちなみに「インパクト・ハンマー」と命名した。
「オゥリャーーー!!!」
ドーーーン!!
威勢のいい掛け声と共に盛大な爆発音が響く。
濛々と立ち昇る煙が消えると、ダルトンさんが満足気な顔をして立っている。
今回、標的にしたのは鉄の盾、それもタンク職の使う厚さ1cmのモノだ。
それが無惨にひしゃげている上に直径3cmほどの穴が開いている。
「ほぉ〜、この厚さの盾に穴が開くとは……。これは文句無く二級判定だな」
と、高評価をいただけた。
さて、最後の魔導具なんだけど……。
これは「ワンド」と言われる種類の短い杖。
長さは15cmほどのモノだ。
正直、オーラスを飾るには地味な魔導具。
しかも威力もショボ目で狩人が使っている弓矢の方が強いくらい。
んじゃ、ちょっと演出でもして…と、魔法少女っぽい衣装を用意したんだけどね。
「なんで、こんな恥ずかしい格好をしなきゃいけないの?」
と、マリアさんが黒いオーラを背負った笑顔で全力の拒否。
これ以上の説得は危険と判断して、次の演出を考えた。
衣装がダメならテクニックを披露してもらおう。
この魔導具なら少しの練習でそれが可能な造りになっているからだ。
今までの魔導具は魔法回路とキャパシタが必ず一体化していた。
過去のモノだと導線が回路と接合してあるモノさえあったくらいだ。
しかし、このワンドはキャパシタの交換を簡単に出来る様にしたのだ。
ぶっちゃけ、ハンドガンのマガジン交換くらい簡単にできるようにした。
キャパシタの容量は少なく、低出力の光属性の魔法弾を6発撃つのが精いっぱいなんだが、キャパシタの交換が素早く行えれば、自衛で使える武器くらいにはなるだろうと考えたわけだ。
元々、護身用のハンドウエポンとして開発してみたんだけど、取り回しが良い武器なんでちょっとばかり工夫してみた結果だ。
ユーノさんは苦い顔をして「なんで余計な工夫をするのよ」と言っていた。
別に、これくらいはイイじゃん。
各国の大型兵器には似たようなシステムが普通に付いているんだからさ。
んで、マリアさんには付け焼刃だけど練習の方を頑張ってもらった。
正直、元の世界での早撃ちでもやって盛り上げてみようと考えていたんだけど、こっちの世界に秒単位で測れる正確な時計ってモノがない。
なので、的でも狙って撃ってもらおうと考えたんだわ。
そして、本番。
マリアさんの格好はというと、いつものローブは着ておらずシャツとズボンという超軽装備。
ベルトにはワンドと交換用のキャパシタマガジンを2つ装備してもらった。
う~む…これならば革のベストにカウボーイハットでも用意しておけば良かった。
マリアさんほどのスレンダー美人なら、かなり見栄えが良いカウガール姿が披露できたと思う。
これは失敗だった……。そっち線は思いつきもしなかった。
などと己の迂闊さに後悔しつつ、標的の前に立つマリアさんに目をやる。
用意してもらった12個の標的と対峙するマリアさんは、静かに呼吸を整え集中力を高めているようだ。
そして、それまで騒めいていた会場の冒険者達もマリアさんの雰囲気に飲まれてか波が退く様に静寂が訪れた。
静まり返った会場に緊張した時間が流れる。
しばらくして、マリアさんから俺にアイコンタクトで合図がきた。
「用~意……。撃てっ!」
俺は上げた右手を射撃開始の号令と共に振り下ろした。
タン!タン!タン!
小気味良い射撃音を響かせてマリアさんの射撃が開始される。
右手で3発、左手で3発、続けてマガジンを素早く交換する。
そして、背中を向けて背面射撃。
乾いた射撃音だけが会場に響き渡る。
合計12発の射撃が終了したところでマリアさんは「ふう」と一呼吸して肩の力を抜いた。
なんか、会場が静まり返ったままだ……。
やべ……。また、ダダすべりか?と思った次の瞬間。
オオオオーーーー!!
と、会場の冒険者達から歓声の雄叫びが響き渡った。
中にはスタンディングオベーションをしている冒険者もいる。
その光景に俺はもちろんパーティの皆が驚いている。
一番驚いていたのは、この時の主役のマリアさんだ。
恥ずかしがりながらも会場の冒険者達に挨拶をしていた。
オーラスの演出は大成功だったようだ。
これが、後にヤドラムで名物となる「射撃大会」の切っ掛けとなった……。
そして、この時の「ワンド」は三級の判定をいただけた。
お読みいただき、ありがとうございました。
不定期更新で、のんびり進めていきます。
作品を読んで面白いと思われたら、評価&ブックマークをお願いします。




