第179話・技術者の生活向上の一手
手分けして会場作りを開始した。
一回目の判定試験ではユーノさん製作の杖が2本と俺が製作した剣2本とちょっと変わったヤツが一個をテストする事になった。
会場には標的を幾つか設置し、あとはテーブルを置いて準備完了。
あとは明日に備えて打ち合わせって事になった。
俺達は設置したコンテナハウスに戻って打ち合わせをする。
勿論、ダルトンさんにも参加してもらった。
「で、明日の試験に使うモノなんだけど、一つだけ判定し難いというか、判定しなくてもイイようなモノがあるんだけど…」
と、ユーノさんが俺を睨みながら言ってきた。
テーブルの上にはその問題のモノが置いてある。
「これの事か…?てか、これは何に使うモノなんだ?武器には見えねぇが…」
と、ダルトンさんがその魔導具を弄んでいる。
その魔導具は高さ3cm大きさ5cm四方ほどのの台に黒い半球形のクリスタルが乗っている。台にはスイッチやダイヤルが備わっている。
「え〜と、コイツは武器じゃなくてですね。ちょっとした玩具なんです」
俺がそう説明しだすと、ユーノさんがイライラし始めた。
「また、面倒な事をやらかそうしてるんじゃないわよね?」
「いやぁ…たぶん面倒な事になるのはギルドの方かなぁ?」
と、俺は恐る恐るダルトンさんの方を窺う。
そのダルトンさんは物凄く嫌そうに顔をしかめた。
「オイオイ、勘弁してくれよ。また仕事を増やす気か?」
「一応、内密にクララ様に相談してますから、道筋は出来そうなんですが…」
「クラリベル様?オマエ、伯爵様に話を持っていったのか?」
「ええ。何せコイツは本品のオークションじゃなくて、契約の方をオークションに掛けるつもりでいますから」
そう言いながら俺は件の魔導具のスイッチを入れた。
すると、魔導具の半球形のクリスタルがぼんやりと発光し始めた。
「ん〜?玩具にしても、光っただけって…?こんなモノ売れるのか?」
とダルトンさんが首をかしげる。
まあ、コイツの楽しみ方は本体にあるわけじゃないからね。
「マリアさん、すみません。室内の照明を暗くしてください」
そうマリアさんに頼んで照明を暗くしてもらった。
「わぁ〜。きれい…」
最初に気づいたの照明の操作をしたマリアさんだった。
照明を確認する時には自然と天井に目が行くからね。
そして、天井には満天の星空が映し出されていた。
マリアさんの言葉に皆が天井を見る。
「ほぉ〜。これはスゴいね〜」
と、ルキアさんは感心してるし、ユーノさんは無言で天井に映し出された星空に見惚れている。
ダルトンさんは興味が無いのか?子供騙しだったようだ。
ならばと俺は魔導具を操作する。
すると、星空には花火が打ち上がる。音は無いけど、色とりどり光の華が咲き乱れた。
「こんな事も出来るんですよ」
と、俺はスイッチを押す。すると、星空には『おめでとう』の文字が浮かび上がった。何もめでたくはないんだけど、それっぽい文字にしてみただけだ。
「ま、こんな感じの玩具ですよ」
と、お披露目が終えて照明をつける。
女性たちには概ね高評価を貰えたが、ダルトンさんは何が良いのか?分からない様子だった。
「一体、誰が買うっていうだ?こんなモノ…」
と、ダルトンさんは言っていた。
「いやぁ〜、何が売れるか分かりませんからね。試しですよ、試し…」
そう、これはフリーの魔導具技師たちの地位向上を狙ったものだ。
ユーノさんの様に高い技術を持っているのならば良いが、普通の魔導具技師たちは自由に研究開発が出来るほど稼げてはいないのが実情だ。
そんな魔導具技師たちは、生活為に大きな組織に所属して研究や開発の道具に成り下がる。そして、彼等の成果は組織に取り上げられ、技師個人の評価には決してならない。それが完全に『悪』だとは言わないが…。
そして、フリーの技師たちの生活向上の為に『特許』に似たモノが出来ないか?と考え、クララ様に協力して貰い『製造ライセンス』の制度の道筋を作ってみたわけだ。
「それで伯爵様まで担ぎ出した事か?よく、そんなことを思いつくな…」
と、ダルトンさんは感心していた。
まあ、ホントのところは思いついたワケじゃなく、元々は俺個人がヤーヴェさんとの契約でやってた事を公的機関を通してやってみたらイイんじゃね?って思っただけの事なんだよね〜。




