第178話・試験会場に行きます。
ダンジョン管理棟はいつになく混雑していた。
ダンジョンへの改札口に冒険者達がズラぁ〜と並んでいる。
「うわぁ〜、大盛況ですねぇ〜」
改札口の処理能力が追いついていない。
ダンジョンに入るだけで20〜30分はかかりそうだ。
「とりあえず、トラス部長に挨拶するのが先ね」
と、ルキアさんの一言で行動が決まる。
俺達は受付に行き面会を申し込むと、すぐに部長室に通された。
部長室にはトラス部長とダルトン課長が待っていた。
「よく来たな。待ってたぜ」
と、ダルトンさんが挨拶してくる。
「なんかスゴイ混雑だねぇ」
と、ルキアさん。
「そりゃあ、お前さんたちがやらかしてくれたおかげだよ」
何かの書類を眺めながらトラスさんが言う。
「それに10年ぶりのオルトロス討伐だからな。騒ぎも大きくなるさ」
ついでに魔導具の公開試験まで付いてくるんじゃぁ、冒険者が集まらないはずはない。運が良ければ『階段発見』が転がり込んでくるしね。
「でも、こんなに混んでたらアタシ等がダンジョン入れるのは、いつになる事やら?」
ルキアさんが心配そうに言った。
そりゃそうだ。このイベントは俺達がダンジョンに入らないと始まらない。
「そんな事は心配するな。今回、オマエ等は特別待遇だ。俺が会場まで案内してやっからよ」
んじゃ、行くぞ。と言ってダルトンさんが立ち上がった。
ダンジョンへはダルトンさんに案内されて事務所の通用口から入った。
第二階層への洞穴は大き目に出来ているので、それほど混雑はしていなかったが、第三階層への階段は狭いので、ここでも渋滞が発生していた。
「すまんな。ちょっと道を開けてくれ」
ダルトンさんが渋滞中の冒険者達に声を掛ける。
すると、ブツくさと文句が出るが冒険者達が端に寄っていった。
「悪ぃ〜な。コイツ等が現場入りせんと始まらんからな」
そう軽く詫びながら渋滞を押し退け先を急いだ。
今日の目的地は第三階層の中央付近にある『第二大広間』と言われている所だ。
広さは体育館二面分くらいの大部屋で、初期の頃は、このダンジョンでの難所になっていた場所だ。
ちなみに、ラムちゃんはこの大部屋をモンスターハウスにする予定だったらしい。
「モンスターを貯める前に食糧難になっちゃったから放置した」との事だった。
今回その大部屋で、一回目の判定試験を実施する事になっていた。
「うわぁーー!!なんすか?この明るさは?」
現場に到着すると大部屋にはこれでもか!ってくらいに照明が設置されていた。
「そりゃあ、ここで公開試験をやるんだから、これくらい明るくしておかないと試験の様子が見えないだろうが?」
いやぁ〜、ギルドの気合いの入れようがわかるね。天井にまで大型の魔導照明が設置されてるよ。
「あの守銭奴ギルドがここまでやるとはねぇ〜」
と、ルキアさんも呆れている。
これだけ見てもギルドが儲かると判断した事が分かる。
「試験に使う物なんかはそこに置いてあるから、雇われ共に指示してくれ。あとはオマエ等の寝床はあそこだ」
そうダルトンさんが大広間の端を指差して言ってきた。
そこには石灰で線を引いたのか、白線で広めに囲ってあった。
「じゃあ、ユウキ君はあそこにコンテナハウスを設置して、私たちは試験会場の設置をしましょう」
ユーノさんの指示で俺達は会場とコンテナの設置を開始した。
「んじゃ、俺も自分の寝床の設置でもするかな」
「え?ダルトンさんもここに残るの?」
「ああ、会場警備ってのもあるが、俺も判定試験の見物がしたいんでね」
そう言いながら寝床の設営をしていく。
ここにいる冒険者たちも思い思いに場所取りをして寝床を設営している。
その光景は、花見の場所取りに似ていた。
新入社員の時に俺も花見の場所取りをやらせれたっけ…。なんか懐かしい。
そんな事を思い出しつつ俺はいつものようにコンテナハウスを指定の場所にドカンと設置した。
「目の前であんなモノを出されると、ちょっとイラっとするんだよな…」
と、ダルトンさんが小声で言っていた。




