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第17話・慣れるとあっという間


日常とは、ルーティンワークの別名だ。

取り立てて何かが起こるわけでもなく、平和な日々が、ただ過ぎていく。


「朝、起きて

  ご飯食べて

    夜、寝た」


あえて日記にするならば、こうなる。

夏休みの宿題で提出したら、先生が頭を抱えそうな日記だが、日常なんてのはこんなモノなのだ。

それでも、冒険者訓練校の計画は着々と進み、あとは計画書をギルドに提出するだけとなった。


そんな秋も深まったある日のこと。

俺は近くの小麦畑の最後の刈取り作業の手伝いをしていた。


「この作業がおわったら、そろそろ出稼ぎ時期だねぇ」


そう言ったのは、この畑の持ち主ヨーマさんの奥さんダリアさんだ。

この村では、麦刈りが終わって、秋の収穫祭が済むと出稼ぎ組みが街に行く。

そこで、春まで稼いでくるって感じだ。


「そうだな。ユウキは今年から街に行くんだろ?準備は出来てるのか?」


そう尋ねてきたのは、ヨーマさんだ。この人も出稼ぎ組の一人だ。


「いや、まだ何にもしてないっすよ」

「ずいぶん余裕だな。おまえさんの場合は俺らより街でやらなきゃならない事が多いんだから、早めにやっておいた方が良いぞ」

「は〜い、今日、帰ったら用意しま〜す」

「気の抜けた返事だなぁ。おまえ大丈夫なのか?」


大丈夫?と聞かれたところで、俺自身に出稼ぎの経験も冒険者の経験もないのだから仕方ない。

準備と言われても必要なものさえわからないのだから。

とは言え、俺はそれ程慌ててはいない。

なぜなら、村長と決めた学校の訓練期間は標準で一年間だからだ。

俺がこの村で世話になりながら、訓練をしはじめからまだ半年も経っていない。

それに今は、猟も俺の乱獲癖からヘイゼル爺さんの管理下に置かれている。

正直、その乱獲癖もDELSONあっての事。DELSONが無ければ森で生き残るなんて無理だろうと思っている。

ま、街に行くのは来年だろうなぁ。なんてのんびり考えながら、その日の刈り入れ作業を終えて夕方に帰宅した。


「ただいま〜」

「おかえりなさい。ユウキ君、ちょうど良かったわ」


そう言って村長婦人のエイダさんが出迎えてくれた。その手にはなんか変なバックパックを持っている。


「これがちょうど出来てきたところなのよ」

「なんですか?それ?」


そのバックパックは、一番の収納スペースが無かった。

なんて言うか、蓋付きの箱の周りに収納ポケットが付いただけの張りぼて?の様なバックパックだった。


「ヘイゼルさんがね、ユウキ君の装備は赤くて街じゃ目立ち過ぎるから言ってたから、隠せるようにって作ってみたのよ」

「え?!そうなんですか!ありがとうございます!」


早速、作ってもらったバックパックをDELSONに装備してみた。

DELSONが張りぼて部分にピッタリ嵌って隠れて違和感を感じない。しかも、ポケットが工夫してあって、DELSONを出さずにダストケースに手が届くようになっている。

それに腰の辺りにホルスターまで付いているから両手が自由にできる。


「ヘイゼルさんの意見を聞きながら作ったんだけど、どうかしら?」

「いや!最高です!!ありがとうございます」


これはなかなか使い勝手が良い。ヘイゼル爺さんとエイダさんに感謝しまくりだ。


「ユウキ君が街に行くまでに間に合って良かったわ」

「え?今年、街に行って良いんですか?」

「そのために今まで頑張ってきたんでしょ?ユウキ君なら大丈夫よ、自信をもちなさい」

「はい。頑張ります」

「さ、みんなが戻ってくるまでに、夕飯の用意をしちゃいましょう。ユウキ君、手伝ってくれる?」

「はい。誠心誠意、お手伝いさせていただきます」


その日の夕食はいつもより美味しく感じられた。


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