第159話・村もいろいろとあったようです
さて、昇格の合格祝いも済み俺の処遇も決定した。
ついでに言うと、我がアンデット部隊の名付けも同時に完了させてもらった。
ちなみに、『ハイ・リッチ』の名前は「リード」。
足が無くいつも浮遊状態なので彼に与える『強化鎧』も足の無いタイプに決定した。
まあ、ぶっちゃけちゃうと超有名アニメの「脚なんて飾りです」と言わしめた例のヤツに似せて造るつもりだ。腕とか頭が取れてオールレンジ攻撃が出来る様にしたいって言ったら「いくらアンデットでも、それは勘弁して下さい」と断られた。
そして、『ナイト・スケルトン』三人衆は「アルム」「ベルタ」「ガンナー」と名乗らせる事にした。
彼らの『強化鎧』は、おわかりかと思うが踏み台にされた例の黒いヤツに似せる事にした。
勿論、例の攻撃方法も習得させるつもりでいる。
ガッツリと趣味に走らせてもらった、うれしい限りである。
んでもって、俺のいない約一ヶ月の間にアサイ村でもいろいろとあったらしい。
まず、おめでたい事にアドルさんの奥さんジェシカさんがご懐妊された。
村長にとっては初孫、ミイシャ婆さんにとっては曾孫って事になる。
来年早々に出産予定ということだ。そういう事なんでジェシカさんは、しばらくの間「産休」となりアサイ村のギルド出張所には、代わりの職員さんが転勤して来る事になった。
そして、学校の生徒達にも変化があった。
前回、森での訓練を受けられなかったヘンリー君とサラさんが劇的に変わった。
いやね、変化なんてもんじゃないのよ。まるで別人になっちゃった感じ。
この二人は火起こしの訓練で、他の4人に遅れをとっていたんだけど、鬼軍曹ことミュラー爺さん直々の修行を受け格段にレベルアップした。
それは良い事なんだけど、その後に受けた森の訓練でジョブチェンジしちゃったらしい。
以前のヘンリー君は末席ではあるが元貴族、物腰も柔らかで笑顔が眩しいくらいのイケメンだったんだけど、訓練後のヘンリー君は死線を百回くらい潜り抜けた様な戦士の顔つきになってた。眼つきなんてギラギラして怖いのなんのって…。
そんでサラさんは綺麗系女戦士から闇に潜む女アサシンにジョブチェンジ。
気が付くと背後から虎の様な殺気を放って、そりゃもう生きた心地がしません。
一体、どんな訓練を受けたのかと不安になってヘイゼル爺さんに聞き込みをしたところ、これが学生が受ける訓練の域を超えちゃってるんだわ。
ある日、突然にその訓練は開始された。二人は寝ている間にミュラー爺さんに拉致られ、どことも知らない森の奥地に一人放置された。
装備らしい装備は一切なく、あるのはナイフ一本と地図のみ。
地図には目的地を示す×印と『十日後、夕刻までに集合』のメッセージ。
何でしょう?これはレンジャー部隊の訓練なのかな?明らかに常軌を逸しているように思えるんだけど……。
そして開始される訓練。二人はこれまで仕込まれた知識と技量をフルに使って目的に向かった。
しかし、これはミュラー爺さんの仕込んだ訓練だ。ただでは済まない。
彼らは行軍中にミュラー&ヘイゼルのダブル爺の巧妙なブービートラップとゲリラ攻撃に晒された。
孤独と飢え、そしてまともに睡眠すら摂れないという過酷な状況に置かれてもヘンリー君とサラさんは挫けなかった。
幾つもの死線を潜り抜け、十日の期限ギリギリに目的に到着したのだそうだ。
ミュラー爺さんはそんな彼ら評して『これならば、どんな戦場からでも生きて帰って来られる』と語ったそうだ。
……何かねぇ〜、俺の思ってた冒険者のイメージと違うんだけど?
この学校って冒険者育成の学校だよね?いつの間に最強の戦士を育成する学校に変わっちゃったんだろうか?
まあ、ヘンリー君とサラさんの生還能力が格段に向上したのは良い事なんだろうけどさ…。なんか違う気がするのは俺だけじゃないと思う。
そして本日は久々に学校のお手伝いにやって来ました。
今回のお手伝いの内容はというと、『パーティによる狩猟スキルの向上と連携の練習』だそうだ。
森の入り口には6人の生徒達とヘイゼル爺さん、マリアさん、ルキアさん、俺の総勢10人が集まって今回の狩りのミーティングをしているところだ。
「え〜今回はお前たちの狩猟スキルの向上と連携の訓練だ」
ヘイゼル爺さんが切り出す。今回、決まっている事は大型の獲物を2頭狩ってくる事だけ、あとは生徒達が決める。これは彼らの計画性の訓練も兼ねているのだ。
それを聞いた生徒達がミーティングを開始、自然とレベッカさんが議長を務めているところが面白い。彼女には人をまとめる能力があるようだ。
しばらくして、彼らの狩りの概要が決定した。
森に入っている期間は最大で五日間、それで獲物が獲れなければ学校に戻って仕切り直し再装備の上また森に入る。
それで獲物が獲れない場合、任務失敗となる。と生徒達が決めた。
うむ、かなり余裕のある行程だね。幾ら獲物探しに時間が掛かるとは言え、森のどこにどんな獲物がいるか程度の知識は彼らには入っているから、五日もあれば鹿でもイノシシでも狩れるだろう。
俺は彼らの予定を聞き、それに合わせて食料、水、その他装備を渡した。
そして訓練開始。これからは彼らの自主性に任せ俺達指導者は後に付いて行くだけだ。その間、爺さんとマリアさん、ルキアさんは生徒達の行動評価をする。
俺は周囲の警戒と荷物持ちがお仕事。
さて、生徒達の成長ぶりはいかがなものかなぁ…。




