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第156話・地下の調査とDランク昇格

明けましておめでとうございます。

今年もダラダラと更新していきます。

ヒマつぶしにお読み下さい。

本年もヨロシクお願いします。


ギギギィ〜と不快な音を上げて床板が開いていく。

そこに現れたモノは案の定、地下へと続く階段だった。


中を覗き込む形になったマーティンさんが「うっ」と顔を顰めて鼻を押さえた。


「下は真っ暗で何も見えんが…。この臭いは、かなりヤバいぞ」


その臭いは俺も方に漂ってきていた。この独特な臭いは「腐臭」だ。

地下の状態がなんとなく想像できる…。


「下りて確認するのは良いが、イヤなモノ見る破目になるかもしれんな」


マーティンさんも俺と同じような想像をしているみたいだ。


「暗くても魔法はまだ使わないで下さい。濃度が危険値より高いんで…」


そうギルドの職員さんが注意してきた。

じゃあ、どうしようか?俺だけならDELSONの暗視スコープ機能があるから大丈夫だけど、他の人たちは暗がりで手探り状態になってしまう。


「これなら使えそうじゃないですか?」


と、アクトさんが持ってきたのは礼拝堂に置いてあった燭台だった。

蝋燭も残っていてすぐにでも使えそうだ。


しかし、一般家庭ですら灯りなんて魔導具のランプを使ってるのに、なぜに蝋燭なんて?って言ったら、宗教施設には荘厳な雰囲気が大事だから蝋燭は重要なアイテムなんだってさ。


「じゃあ、俺とユウキが下りて確認するとしてアンタ等はどうする?」


これは調査なんだから、俺たち受験者だけでは確認は行えない。必ずギルド職員もしくは規定の発注元の関係者が同行しないといけない決まりがある。

さすがにロールさんを連れて行くのはマズいだろう。ならば同行するのはアクトさんか、ギルド職員の二人って事になる。


三人とも青い顔をして見つめ合っている。暗に「オマエが行けよ」って言い合ってるみたいだ。だが、このままじゃ埒が明かない、三人は意を決して厳正な抽選の儀式を始めた。


「「「最初はグー!ジャーンケーン!ポン!!」」」


……何だろう?少しは異世界情緒ってモノを考えて欲しい。

ジャンケンは無いだろう?しかも「最初はグー!」って……。

一体、どこの誰がこの世界にこんなモノを伝えたんだ?


「なぜ?!なぜ?!!あそこでチョキが出せないのかなぁ?!ぼくはーー!!」


十数回の激戦を終え、勝負がついた。負けたのはギルド職員のグロアさんだ。

ガックリと項垂れているが負けたんだから仕方ない。ご同行願おう。


「さて、同行者が決まったところで調査と参りますか」


「どっこいせ」とマーティンさん腰を上げ、燭台を片手に地下へと降り始める。

続いて降りるのはガクブルしてるグロアさん、そんで俺が殿(しんがり)を務める。


ゆらゆらと蝋燭の炎に照らし出される階段を下りる。

俺はDELSONのスコープ機能を起動して地下の様子を確認した。


「ここは……。拷問にでも使ったのか?」


マーティンさんが呻く様に呟いた。

石壁に設置されている手枷や錆びついたデカいペンチみたいなヤツ。

黒いシミは血液で着いたのモノか…。


「でも、ここは宗教施設ですよ?そんな拷問なんて…」


グロアさんは、信じられないという風に呟く。


「異端審問てのもあるだろうが。神様を免罪符にすりゃ、どんな悪行でも正義に早変わりだよ」


まあ、宗教にはよくある事だ。特にこの世界の様に文明度が低いとね…。


「異端審問かどうかは別として、こんだけ腐臭がするのに、どうして死体が無いんでしょうか?」


そう、何故かここには死体が一つも無い。廃棄した時に片づけたなら腐臭なんて残っていないはずだ。


「たぶん、あの時俺らが片付けゾンビ集団がそうだったんじゃね?」


「え?それじゃあ、俺らは証拠隠滅の手伝いをしたって事?」


そうかもしれん…とマーティンさんは部屋を物色しながら呟いた。


それから、三人で部屋の探索を行ったところ、グロアさんがある物を見つけた。


「マーティンさん…。こんなモノが落ちてますよ」


そこにあったのは『ギルドスティック』の残骸だった。

20本以上はあるだろうか?どれも折れ曲っている。


「ここで拷問されてたヤツ等って冒険者だったのか?」


おいおい、まさかあの時の誘拐事件がここで繋がるんじゃないんだろうな?

勘弁しろよ…。こっちはそれほど頭イイ主人公じゃないんだぞ。


そんな嫌な事を考えつつ、俺もまた更に嫌なモノを見つけた。


「ん〜?そいつは『ルメイ派』のコインだな。なんでそんなモノがあるんだ?」


マーティンさんが後ろから覗き込むようにして言ってきた。

それは俺が潰したヤツ等が持ってたコインと同じ物だった。


「ルメイ派?なんすか?それ?」


「遥か東の国のエストラーダって所の国教でね、『サルバン教』ってのがあってだな。その宗派の一つさ。かなり過激な思想で有名なんだよ」


どうも原理主義の一派らしい。そんなヤツ等がこの国に潜伏してるって事か…。


「どうかな?この国じゃ『サルバン教』自体が珍しいし、ましてや魔導技術を悪魔の技とか言ってる『ルメイ派』がこの領都に潜伏してるとは思えんがなぁ?」


マーティンさんはそういうが、実際、俺は『ルメイ派』の連中を潰した。

だが、その件は今は言わないでおこう。なんか怒られそうだし…。


「物証はあっても推測しか出来ないんじゃ仕方がないか。この件は上の方に報告して丸投げするのが一番かもな」


そうマーティンさんが結論を出して、調査を終了する事になった。




そして、この件はギルドを通して辺境伯様に伝えられた。

伝えられたんだが、その後は何も起きなかった。

まあ、例の教会とその周辺の施設が、『焼却処分』という手荒な浄化手段を取られ事だけが大きな出来事だったんだけどね。


そして、今回の規定でマーティンさんは無事にDランクに昇格し、俺はロールさんがヤドラムに帰る際の商隊の護衛を規定扱いにしてもらい、俺もDランク昇格を果たすのだった。


なんのかんので一ヶ月近く掛かった昇格試験だった。


あ〜あ、疲れた……。


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