第153話・規定は続くよどこまでも…
さあ!準備は整った!突撃開始ーーー!!!
てな具合で正面の大扉を勢いよく開けて三人が攻撃を開始した。
流石に屋内での火の使用はマズいので、オズマさんは剣でマーティンさんは槍でスケルトンを切り伏せ、突き壊していく。そしてセリアさんは、フラフラと漂うゴーストを光属性の魔法で消し去っていった。
「おのれぇ~ザコ冒険者どもめぇ。我が根城に土足で踏み入った事、後悔させてくれる~~~」
リッチのおどろおどろしい怨嗟の声が教会に響く。
俺は静かに窓を開け屋内に侵入すると、姿勢を低くしてリッチの背後へと近づいていった。
リッチが何やら叫び声の様な呪文を詠唱すると、幾つもの黒いボールが現れた。
これが闇属性の魔法か。初めて見た。
「喰らえ!!ダークボール!!」
リッチが正面の三人に魔法を飛ばそうとした。
「ごちそうさまです!!」
すぐさま俺はDELSONで一気にダークボールを吸い込んだ。
これで、俺の魔法コレクションも増えるってもんだ。
「へ?」
リッチは何事が起きたのか理解できずいるのだろう。
だが、俺の存在に気が付いた時には、もう遅い。次の標的はリッチだ。
「お前も俺のコレクションになれや!!」
俺はDELSONの吸引力を上げ、リッチに向ける。
モーターがギュゥーーンと小気味良い唸りを上げる。
「な!?何が起こっ………!」
リッチはセリフを言い終える前に、キュポンという軽い音と共にDELSONへと吸引された。
「よしっ!!リッチGETだぜ!!」
軽くガッツポーズを決めて、残っているゴーストとスケルトンをコレクションにする為にDELSONを振り回した。
キュポキュポとゴーストを吸い込み、ガラガラとスケルトンを回収していく。
「ちょっと!?何やってんのよ?その魔導具ってアンデット用なの!?」
と、セリアさんが俺のDELSON無双を見て叫ぶ。
「ちょっとした特殊装備です!!詳細は企業秘密ってことで!!」
「秘密はわかるが、そんなのあるなら最初からゾンビに使って欲しかった!!」
と、オズマさんもスケルトンを破壊しながら言う。
「腐ったモノは、腹痛起こしそうなんで遠慮します!!」
「別にオマエさん自身の腹に収まる訳じゃねぇ~だろうが!!」
「そりゃそうですけど!心情的にイヤなんです!!」
そんなやり取りをしている内に最後のゴーストがセリアさんの光魔法で駆除され、教会内が静かになった。
そして……。
ピロロンといつもの軽いアラームが鳴り、DELSONのメッセージが表示される。
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魔法・・・ダークボール 8
*リッチ・・1---解析中
*スケルトン・・3---解析中
*ゴースト・・・38---解析中
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いやぁ~何でしょうか?DELSONさんはアンデットの解析までこなせるんだね。
「しかし、この教会は異常だったぞ。ゴーストが多すぎる」
そうマーティンさんが言い始めた。
「そうだなぁ、ゴーストを一匹見たら百匹いると思えって言われてるけど、あの数は多かった気がするよ」
と、オズマさんも賛同する。俺は初めての駆除だったからわからないんだが。
「そうね、宗教施設が廃棄されるとゴーストが湧きやすくなるとは言え、あの数は多すぎかな。しかも長く放置しないと湧かないリッチもいたし……」
「へぇ~そうなんですかぁ。それだけ長期間放置してたのかな?」
そんな疑問が出ている中、ロールさんが駆除の確認を取りに教会に入ってきた。
「ご苦労様です。なんかスゴイ音してましたけど、大丈夫でしたか?」
「ええ、リッチもいましたけど、どうにか駆除し終わりましたよ」
「へ?リッチもいたんですか?たかが三ヶ月程度の放置でリッチが湧くっておかしくないですか?」
ロールさんの持ってる資料によると、この物件でゴーストが目撃されたのが三ヶ月ほど前だったらしい。その時は自前の聖水を散布してゴーストの数を減らしていたらしい。
「だから、こんな短期間で上級種になるって事は考えられないんですけどねぇ?」
上級のリッチやヴァンパイアが湧くには最低でも一年~二年は放置しないと湧かないらしい。ただ、周囲のマナの濃度がすごく高いとか、不浄と言われる負の思念エネルギーが濃かったりすると短期間でも上級種に変異する事もあるんだとか。
「ここが教会だからって訳じゃないんですか?不浄が溜まり易いって話だったし」
と、俺は疑問をぶつけてみた。
「その可能性は無いとは言いませんが、低いと思いますよ。マナの濃度測定魔導具を持ってきて調べた方が早いかもしませんね」
なんだろう?駆除の仕事は終わったけど、続きがありそうだ。
単なる規定の仕事なんだから、ややこしい事にならないで欲しいなぁ~。




