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第152話・イベントなんて幻想さ……


翌日、俺は領都郊外にある廃教会に来ていた。

勿論、試験官役のロールさんも一緒に来ている。


「で?何故にこの御三方もいらしてるんですか?」


何故か前回の規定で一緒だったオズマさん、セリアさん、マーティンさんが来ていた。


「ユウキさん一人じゃもったいないですし、どうせなら受けてもらおうと思って、お誘いしました」


まあ、領都の仕事は規定が少ないものね。ついでと言っちゃあ何だが、規定があるなら独占するよりは良いかな。

それに駆除対象がたくさん居たら、俺一人じゃ手に負えないから少しでも人手があった方が楽だ。


それにセリアさんは光属性の魔法を使えるらしいし、他の二人は火炎系の魔導具を持ってるって話だから俺よりもこの規定に合ってたみたい。


しかし、このシチュエーション。仲良し五人組で心霊スポットに探検!!って感じじゃありません?

夏の定番イベントですよ!幽霊を怖がる女の子とキャッキャウフフのイベントですよ!!


って、興奮していたんだけどねぇ〜。

ここが異世界って事を忘れちゃいけませんよ。

こっちの世界と元の世界じゃ、幽霊に対しての恐怖の質が違うんです。


元の世界の幽霊への恐怖って、何かわからない未知への恐怖なんだけどね。

こっちの世界じゃ、幽霊は現実のモノ。対策も立てられるし、駆除っていう現金が発生する仕事の対象だ。

これに対する恐怖ってのは、街中に出たイノシシとかクマに対しての恐怖と同じモノなんだよね。


こっちの世界の「幽霊〜怖〜い」は「クマに素手で戦うとかムリぃ〜」と同じレベルの事なんだよね〜。


「やっぱりかぁ…。薄々は感じていたけど、心霊スポットイベントなんて幻想にすぎなかったんだなぁ〜」


「なに黄昏てるんですか?さっさと駆除してきてください」


と、ロールさんに背中を押されて廃教会に近づいて行った。


「真昼間の心霊スポットで幽霊退治かぁ〜。これっぽちのイベント感もありゃしないわ……」


「ゴーストの駆除は昼間にやるのが常識ですよ」


ロールさんや他の三人に言わせると、ゴースト系のモンスターは夜行性なんだってさ。昼間に外をうろつくのはゾンビやグールなどの「生ける屍」の人たちだけだそうだ。他のゴースト系モンスターは、光の射さない屋内にいる事が多いのでまとめて駆除できるので都合が良いんだそうだ。


ちなみにゾンビとグールの違いはほとんどない。領都では死体の鮮度で区別しているらしく、新鮮なヤツがグールで腐ってるヤツをゾンビと呼称している。地方ごとに呼び名が逆になる事もあるくらい曖昧なんだそうだ。


さて、イベント感は皆無だが仕事は仕事、さっさと片付けよう。


教会は高い壁に囲まれ、門は硬く施錠させられている。

壁の向こう側はどうやら墓場だったらしく、ゾンビやグールの団体さんがフラフラとうろついていた。

ゾンビやグールは壁を登るとか鍵を開けるとかの知恵は回らないので、ただひたすらに壁の内側をウロウロしているだけだ。


「おお〜、こりゃまた沢山いるねぇ〜」


のんびりとマーティンさんが呟く。


「うわぁ〜。俺、この臭い苦手なんだよなぁ〜」


「臭いもキツいし、虫もわんさかいてヤダぁ〜」


と、文句を言ってるのはオズマさんとセリアさんだ。


「さっさと燃やして駆除しちゃいましょう。建物への延焼は俺が防ぎますから」


「それなら、安心して火を使えるな。助かるよ」


そう言ってマーティンさんは壁によじ登って魔導具の『ファイアーアロー』をゾンビに打ち込み始めた。


「イイなぁ〜。マーティンさんの魔導具って高級品じゃん」


オズマさんもそう言いながら魔導具で『ファイアボール』を放つ。


「独身者の貯金額を舐めるなよ!クッソーー!ゾンビなんぞ焼き払ってくれる!」


オズマさんの一言はマーティンさんのナニかに火を着けたようだ。


「ターンアンデット!!」


そして、二人がせっせと火葬している傍らでセリアさんは、焼けたゾンビから抜けだしたゴーストに厨ニっぽい呪文で光属性の魔法を飛ばしている。


俺はというと、壁や建物に火が回らないようにDELSONで適度に放水していた。

時折、DELSONで製作した火の魔法をゾンビに打ち込んで焼きの手伝いもしたよ。


午前中一杯をかけ、俺達は壁の内側のゾンビ集団の駆除を完了した。

そして火葬場臭の漂う中昼食を摂り、午後は教会内の駆除へと乗り出した。


教会の窓から中を覗くと、ゴーストやスケルトンがわんさかいる。

一応レーダーでも確認すると、もっと大物が隠れていた。


「おい!ここヤバいぞ!『リッチ』がいやがる!」


オズマさんは別の窓から確認したようだ。


「どうするよ?俺らの装備じゃ『リッチ』の駆除は無理だぜ」


マーティンさんはそう言うが、ここで逃げちゃったら規定の合格は貰えない。

普通なら、高ランクの冒険者にバトンタッチといくところなんだが、今回は俺のDELSONがあるので大丈夫だ。


「大丈夫ですよ。『リッチ』の対策はやってますから、俺に任せて下さい」


ウソである。対策なんて考えていない。ぶっつけ本番でリッチを吸い込んでしまおうって思っただけだ。

まあ、それっぽく簡単な作戦を考えて皆に話してみた。

作戦はこうだ。オズマさん、セリアさん、マーティンさんの三人で正面入り口から突入、ゴーストやスケルトンなどのザコを掃討しつつリッチの気を引いてもらう。

その間に俺は窓から侵入しリッチを背後から強襲してDELSONで吸引する。


「リッチ相手にそんな簡単な作戦て……ちょっと不安なんだけど…」


セリアさんは不安そうに言うので、ヤバいと思ったら即座に撤退して良いよって言っておいた。


さあ!!午後のお仕事、ガンバっていきましょう!!


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