第150話・規定のお仕事
「いくらユウキさんでも、それをやったらダメですよ」
と、領都のギルドに出張中のロールさんに言われました。
一応、強力な貴族カードを切るのに際して相談しておこうと思ったので、ロールさんの仕事終わりを待って食事に誘ったんだ。
んで、今の状況を説明した上で相談してみたんだが、結果はダメでした。
まあ、元の世界でも日雇いのバイトを見つけるのに、政治家の伝手をコンビニ感覚で使うのはいかがなものか?って事なのだろう。
しかも、こちらの世界は身分制度がキッチリしてる。
いくら俺が辺境伯様に目を掛けてもらっているからと言って、その伝手を安易な気持ちで使うのは不敬に当たる事もあり得る。
物理的に首は飛ばないと思うが、仕事的にクビが飛ぶかもしれない。
「んでは、俺はどうしたらイイのよ?」
「事情はわかりますよ。ルキアさんやユーノさんのムチャ振りだって事も…」
う〜〜ん、と唸りながらデザートのケーキを頬張るロールさん。
そこそこ高い店の高い食事を奢ってるんだから、良い知恵絞って下さいね。
「ユウキさんのお願いですからね。優秀なギルド職員の私が一肌脱ぎましょう!」
よっ!!流石はロールの姐御!お願ぇ〜しやす!!
それから三日後、俺はロールさんに伴われてとある商会に来ていた。
その商会『アラギ商会』は領都でも有数の商会だそうだ。
どういった伝手を頼ったのかわからないが、ロールさんが言うには今回の規定の仕事を依頼してくれるとの事だった。
「この商会は領都の不動産もやっていて、今回の仕事はそちらから回していただきました」
と、ロールさんが説明してくれた。
「流石はロールさんですね。こんな大きな商会に伝手があるなんて…」
「ああ、その事ですか。実はこの商会の会頭が私の親戚なんですよ。ご紹介しますね」
そう言ってロールさんは、俺を引っ張って店内へと入っていった。
ロールさんは先にアポイントをとっていたらしく、店員に話しかけるとすんなりと奥の応接間に案内してくれた。
出された紅茶を飲みつつ、しばしの間待っていると恰幅の良い男性が入ってきた。
優しさに満ちたタレ目が印象的な人だ。何かこんな猫がいたなぁ〜。
「ロール。久しぶりだね」
「お久しぶりです。叔父様」
「この度はご無理して頂き、ありがとうございます」
そう言ってロールさんが頭を下げた。俺も慌てて頭を下げる。
「何、気にする事は無いよ。可愛い姪っ子の頼みとあっては、断る理由なんてないさ」
「ありがとうございます。それではご紹介しますね。こちらが今回の規定の仕事を受けてもらう事になっているユウキさんです」
「ユウキと申します。この度は御尽力いただき、ありがとうございます」
「こちらこそよろしく、ただ私の方でも尽力した訳ではないんだよ。ギルドに依頼を出すかどうか迷っていたモノがあってね。渡りに船って事で規定にさせてもらったんだよ」
そう言うと、ロールさんの叔父「アラギ」さんは、領都のとある場所の地図を広げた。
「実はうちで取り扱っている物件にアンデットが住み着いてね。それの駆除を頼みたいのだよ」
「アンデットですか?」
「ああ、ここにある物件なんだがね」
アギラ氏が指差す場所は領都の外れにある教会だった。
「知り合いに処分を頼まれて手に入れた物件なんだが、理由は定かでないんだが、この教会が廃棄されてね。そこにアンデットが住み着いてしまったんだよ」
………教会ってのは神聖な場所のはずじゃないの?何故にそんな所にアンデットが住み着くのよ?って疑問をぶつけたら……。
「教会は不浄を祓う場所でもあるからね。神父さんやシスターが不在になると不浄が溜まってアンデットが湧くんだよ」
ナニそれ?ゴミ屋敷に害虫が湧くみたいな感じなの?
だから、アンデットの『討伐』ではなく『駆除』なのねぇ。
「まあ、教会を復活さすにも取り壊すにもアンデットを駆除しない事には、どうにもならないからねぇ」
「了解しました。では、用意が整い次第アンデットの駆除を始めますね」
「ああ、頼むよ。でも大丈夫なのかい?いくら規定とは言え、アンデットの駆除を一人でするのは、いささか危険だと思うのだが……」
……はぁ?一人?この仕事って一人でするの?そんな事、聞いてないんだけど?
「ええ!叔父様。このユウキさんは優秀な冒険者だから大丈夫よ!大船に乗ったつもりで安心していて!!」
あ…あの…ロールさん?評価してくれるのは嬉しいんだけど、俺ってばアンデットのアの字も知らないんだよ?これからアンデットの勉強しないといけない人なのよ。それを一人でってキツ過ぎやしませんか?
「せめて経験者の同行とかないんですか?」
「ユウキさん!大丈夫です!私が一からアンデットについて教えてあげますから、安心してください!」
いや…ロールさん一人で気合い入りまくってるんだけど、マジで大丈夫なの?
今回の相手はアンデットなのよ?ゾンビとかグールとかホラー映画の定番の人たちなのよ?なんか、不安しかないんだけど〜〜。




