第142話・俺を怨むな
訓練二日目。
ドロドロになった生徒達4人は、かなり御立腹の様でミュラー爺さんからの看板に当たり散らしていた。
そして看板は最終的には焚き火の刑に処せられ、灰になった。
その後、彼らは前日の罠を確認して食料の確保に努めたんだが…。
まあ俺が邪魔したんで、獲物はゼロという結果だった。
「耐久訓練とは言ってたけど…。ここまでやるかぁ~?」
ボロボロ状態でバディー君がブーたれている。
「罠が軒並み潰されてるのはヒド過ぎよねぇ。これじゃ今日はメシ抜きじゃない」
レベッカさんも空腹なのか?フラフラとした足取りで彷徨っている。
勿論、ウサギ一匹見つかりはしない。だって俺がそう仕向けたから…。
「仕方ないですね…。森に入って食べられる野草でも取って来ましょうか?」
ケビン君が、そう言いだした。
「え?草?食べるの?てか、そんなモノ食べられるの?」
ビクター君は山菜を食べるなんて習慣がなかったようだ。
「ええ、木の実にはまだ早い時期ですけど、森にはいろいろと食べられるのが生えてますよ。うちの村は貧乏だったから、森の恵を最大限に利用しないと飢え死にする人が出ちゃうんですよ」
うむ……。ケビン君は幼少の頃から苦労してただけに、サバイバル能力が高い。
この知識は共有する方が良いかもね。職員会議の時に報告しよう。
「それじゃ、森に入って食料確保といきましょうか!ケビン君、食べられそうなモノがあったら教えてちょうだい!」
レベッカさんの号令で彼らは森に入って行った。
生徒達が森に入ってから3時間ほどすると、そこそこの量の野草が集まった。
なぜか、ビクター君はその緑色の山を見つめて、げんなりとしていた。
そして、彼らはそのまま拠点を森の中へと変更する事に決定し移動を開始した。
小一時間、移動している間に運良く、体長20cm程のオオネズミを2匹ゲット。
これはビクター君が、かなり張り切った成果だ。
実はビクター君は「超」が付くほどの野菜嫌い、山菜のみの夕食なんて考えたくもなかったのだろう。
ビクター君は「た……助かったぁ……」って小声で言っていたが、レベッカさんに野菜嫌いを治すように御小言を喰らっていた。
その日の夜は、彼らは前日の襲撃にビビっていたのか、二人組みで厳重な警戒態勢を敷いた。なので、俺は襲撃を断念した。(だって、昨日はほぼ徹夜だったから眠かったんだもん)
翌日、訓練最終日。
少々早めだったが、彼らの起床を確認してから生徒達と合流した。
流石に二日連続の睡眠不足は効いてるようだ。みんなフラフラしている。
「諸君!おはよう!」
こっちは充分に睡眠を取ったので元気いっぱいです。
「「「「……おはよう~ございま~す」」」」
うむ、辛そう。しかも、ジト目で睨んでくる。
だが、こちらは教育係だ文句あるなら鬼軍曹のミュラー爺さんに言って欲しい。
「少々、早めだが今回の訓練はこれで終了する。キャンプ地の清掃を済ませ帰還の準備をするように。評価などは後日に発表するので、今日明日はゆっくりと身体を休めておくように。以上!!」
俺は言う事だけ言うと、さっさとその場を離れた。
正直、生徒達の視線に耐えられなかったのよ。なんかギラギラした眼つきで、今にもこっちを襲ってきそうな感じなんで怖かった…。
そして、無言の生徒達を引率して昼前に校舎に到着。解散となった。
君たち、俺を怨むんじゃないぞ。悪いのはこんな事をさせた鬼軍曹だ。
ホントはもっとキッツい項目もあったんだけど、俺の判断で取り止めたんだから有り難く思って欲しい。




