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第140話・訓練とは意地悪いモノ


さて、生徒たちは二人一組になっって行動を開始。

その間に、俺もキャンプの設営をしよう。

と、言っても俺の場合はコンテナハウスを置くだけの事、とっても簡単だ。


ちなみに、このコンテナハウスには何の工夫もしていない。

単なる箱にベットを置いてあるだけの代物だ。

だけど、魔法文明の遺物の解析が終了したら魔改造する予定だ。

ユーノさんに叱られるのは覚悟の上である。


やっぱアウトドアをやるなら、より快適な方が良いに決まってるじゃん。

テントと寝袋より、キャンピングカーで寝泊まりする方が良いし、コテージなんてあればより快適って思っちゃうんだよねぇ。


と、こんな所で俺のキャンプ嫌いをぶっちゃけても仕方ない。

ちゃんと、生徒たちの監視をしないと…。



で、みんなはどうしているかというと、レベッカさんとケビン君は全員分の水袋を持って泉の水を汲みに行っている。

バディー君とビクター君はシェルター造りと分担している。

やる事はそれだけではない。キャンプ地の安全確保もあるし、今日の分の食料確保だってしないといけない。

キャンプの設営だけでもやる事が多岐に亘っている。正直、俺には面倒この上ない作業なんだよねぇ。しかも、夜の見張りもあるから睡眠不足確定だ。


俺みたいに街クエストをメインでやってると、稼ぎは少ないがキャンプの部分がほぼ無いんで楽で良い。そう考えると冒険者家業って大変なんだね。


だけど、文句も言わずそれを遂行するのが冒険者家業。

みんなガンバってますな。


で、水汲みが終わったレベッカ・ケビン組は野営地に戻って火起こしの準備。

ビクター・バディー組は食料調達の為にウサギ狩りへ…。

今時期のウサギは小さな群れで行動しているので、見つけ易く狩り易い。

しかも、バディー君とビクター君は素人ではない。

ウサギ狩り程度なら簡単にこなせるはずだ。



一時間ほどしてビクター・バディー組は小さめのウサギを仕留めてきた。

猟師だったなら、そこそこ優秀なチームだね。

4人分の食料としてはちょっと足りないと思うけど、今日の夕食にならこれで充分だろう。


生徒達が野営地で合流するのを見届け、俺は次の行動に出る。

それは、生徒達への意地悪だ。一応、耐久訓練っていう名目があるので、ヘイゼル爺さんからは思いつく限りの邪魔をするように言われている。


まず俺がやったのは、彼らが仕掛けた罠を潰す事。

全部は潰さない。5か所ほど残して全部潰した。

故意に食糧難の状態にして、彼らの行動を観察する。


これから三日間、彼らはいろいろな困難に会う事になる。

かなりキツい訓練になるだろう。

でも、俺自身もかなりキツいんだよね…。なんせ彼らに与える困難を全部俺一人で演出しないといけないから……。

この三日間は俺もほぼ徹夜の予定になっている。

ヘイゼル爺さんが、この訓練を俺に任せたのはその為だ。

学校を卒業しても、あの爺は俺にブラックな仕事を押し付けるんだからなぁ~。



夜も更け、野営地の生徒達にまったりとした時間が流れている。

彼らはウサギ肉を焼いて食事を摂り、今は夜の見張りの順番を決めているようだ。

で、俺はというとステルス機能を起動させて、野営地の周りをウロチョロ歩き回っている。これはさっき罠を潰した仕上げだ。

実は野営地の周囲と罠を仕掛けた辺りにウサギが嫌う匂いの素を撒いているのだ。

匂いの素の原料はウサギの天敵『オオカミ』の縄張りにある土。

まあ、縄張りなんでオオカミの尿がたっぷりと染み込んでいるんだわな。

この土を少しでも撒いておくとウサギが警戒して出て来なくなるんだと。

意地悪にも程があると思うんだが、ヘイゼル爺さんの御達しなんで心を鬼して撒いている。


それが終われば次の意地悪。

それは、野営地の周囲に張り巡らされている警戒用の『鳴子』(鳴り物が付いてるロープ)を不定期に鳴らす事。

これで生徒達の警戒心を強めた上に寝不足も誘うという、悪魔の所業だ。

ちなみに、発案者は鬼軍曹ことミュラー爺さん。

なんだか、軍隊の訓練にもあるらしく。これをやるのとやらないとでは、兵士の生存率に違いが出るんだとか…。

うちの学校は兵士を育ててるんじゃなくて、冒険者を育ててるはずなんだけどな?

何か違う気もするが、鬼軍曹は怖いので素直に従っておこう。


さて、明日の朝は生徒達がどういった具合に疲弊しているのか?楽しみである。


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