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第14話・パーティーを組んでみよう


お祭り騒ぎから一週間が過ぎた。

その間、俺は村長と一緒に訓練学校について話を詰めていた。

ヘイゼル爺さんはと言うと、次の準備があるとの事で俺の訓練もそこそこに、村中を駆けずり回っていた。


訓練の難易度を上げてくるんだろうなぁ~。なんて思っていても仕方ないので、俺と村長は訓練学校で使う教科書を仕上げていった。


これがまた、面倒くさい仕事なんだよねぇ~。

冒険者の基礎知識に、森の動物の生態だの、魔獣の生態だの。

サバイバルの基礎知識まで網羅するんだよ。

いくら俺の能力を基本に決めていくにしても、ここまで懇切丁寧にすることはないんじゃないかなぁ~。

なんて思ってみたりもしたんだけど、村長曰く。


「魔石頼りにしている人が多いから、これくらいやっても不安」らしい。


少々、値は張るけど魔石や魔道具が普及している昨今、道具無しじゃ何も出来ない冒険者も増えているんだとか……。


「これも時代だよ……」


と、ヘイゼル爺さんも嘆いていた。



さて、俺がこっちの世界に飛ばされて、一ヶ月ほど経った。

そろそろ、こっちの世界の季節も暑さが本格的になってきて、夏になろうかとしている頃合いだ。


普通のラノベなら夏の定番イベント「海でビキニの美少女とキャッキャウフフ」となるはずなんだけど、俺が飛ばされた世界は、そんなに甘くはないらしい。


俺の目の前には、ヘイゼルの爺とムサいおっさんとニヤけた兄ちゃんが集まっていた。


あぁ~なんだかなぁ……。異世界の神様にいじめられてる気がするぅ~。


久しぶりにヘイゼル爺さんに呼び出されたと思ったら、男臭い連中に囲まれるって……。


「うちは日本一不幸な冒険者やぁ……」


なんてセリフが自然に出てきた。


「何を言っているんだ?これからみんなで狩りにに行くぞ」

「お?!パーティー組むんですね」

「そうだ。冒険者には必要な事だからな。慣れておくに越した事はない」


それから俺はみんなに紹介がてら、自分の出来る事を説明し、ポジションを決めていった。


チーム構成は次の通り

前衛、ヘイゼル爺さんとニヤけた兄ちゃんのロイドさん

使用武器は爺さんは長槍で、ロイドさんは弓。

この二人で獲物を追い立てる。

後衛、俺とムサいおっさんのガンツさん。

ガンツさんの使用武器は投げ槍。

俺と二人で獲物をしとめる。

こんな感じだ。狩りは三日間の予定で、獲物次第で予定を切り上げる。


いろいろ荷物の用意をしてみると、結構は量になったので俺が荷物持ちをかって出た。

ストレージ持ちは、こういうところで点数稼いでおかないとね。


んで、俺たちはぞろぞろと連れだって、森に入って行った。

しばらく歩くと俺のレーダーに反応が出たんで、ちょっと忠告なんぞしてみた。


「爺さん、近くにスライムがいるぞ。どうする?」

「スライム?どこにいる?見えんし、気配も感じないぞ」


そうだった。レーダーは俺だけの機能だったのを忘れてた。


「右、1時半の方向、距離は300メートル。30センチ級のスライムがいる」

「ユウキはそんな小さいスライムの気配もわかるのか?スゲェ~優秀じゃん」


ロイドさんが誉めてくれた。ロイドさんは普段は斥候もやっている人だ。


「小さいな……。よし!ユウキ。試しにお前が狩ってみろ」

「了解。俺の道具はスライムと相性が良いからね」


そう言って、俺はみんなをスライムの元へと先導していった。

木陰に隠れて見てみると、ほんの数メートル先にスライムがいる。

スライム狩りはもう慣れた。俺は気づかれないように静かにスライム近づき、プスッとDELSONをスライムに刺し吸引を開始した。


ズココっと不快な音と共に狩りが簡単に終わった。

振り向くとみんなが引きつった笑顔でこっちを見ている。


「どうです?案外と簡単でしょ?」

「ん?あ…あぁ…簡単だな…」


なんか爺さんの歯切れが悪い…。


「どうしたんすか?」

「あぁ…ちょっと…音がなぁ…」


あ~音ねぇ~気色悪いものね~

こればっかりは仕方ないっしょ?諦めて~。


俺はスライムのコアを拾い、音に関してはガン無視を決め込んだ。


さて、俺のスライム狩りのお披露目も済み、次の獲物を求めて森を彷徨っている間に俺はヘイゼル爺さんから、獲物をを探すコツのレクチャーを受けていた。

レーダーに頼り切りにならないように、知識は貯め込んでおくべきだよね。

それに知識とレーダーの組み合わせで、より効率的に獲物を見つけることができるようになるしね。


しばらくするとロイドさんが足跡を発見した。鹿の足跡らしく、ほんの数時間前にここを通って行ったと思われる。

さすがは猟人、レーダー頼りの俺より全然頼もしい。

知識に裏打ちされた経験則は、ぽっと出のチートなんかよりも役立つのだ。


ただ、ここでボーっとしていてはいけない。俺もレーダー持ちなんだから少しでもみんなのサポートにならなければ。

俺はレーダーの索敵範囲を広げ、検索を掛けてみた。


いた!かなり離れた場所だが、鹿の反応があった。


「正面、3キロほど先に鹿の反応が出たよ」

「お!そんな遠くの事までわかるのか!さすがだな」

「俺がスゴいんじゃなくて、DELSONコイツの性能のおかげなんすけどね」

「よし、ユウキ。そこまで案内できるか?」

「大丈夫です。行けます」


こうして、俺の案内で鹿狩りが始まった。


森を歩くこと、小一時間。数頭の鹿の群れがいた。

ここでヘイゼル爺さんを中心に簡単な打ち合わせをした。

作戦はこうだ。爺さんとロイドさんが鹿を追い立て、俺が足止め役、とどめはガンツさん。

実にシンプルな作戦だ。シンプルだからこそ、成功率も高い。

早速、狩りが開始された。

爺さんとロイドさんが鹿の群れを大きく回り込み位置につく。

俺とガンツさんは鹿が追い込まれる予定のコースに陣取り行動開始を待った。


「おおおおーーー!!!」


突然の大声と木を叩く音が響く。爺さんとロイドさんが鹿を追い立て始めた。

俺はDELSONを構えて身を隠す。

すると、ガサガサと茂みをかき分け大きな鹿が予定のコースに飛び込んできた。

すかさず、3連射した。2発はハズレたようだが、3発目が脚にヒットしたようだ。

ドゥと倒れ込む鹿に向かってガンツさんが槍でとどめの一撃。


何というか。あっけなく狩りが終わった。

これも優秀な経験者のおかげだ。


「今回はずいぶんと簡単にいきましたね」


とガンツさんが言い出した。


「そうだな。普通なら獲物探しに1~2日掛かるからな」

「これもユウキ君が獲物まで的確に案内してくれたおかげですね」


う~ん。なんかDELSONのおかげで、効率的に狩りが出来たみたいだ。


こうして、俺の初のパーティーでの狩りは無事に終了した。

良かった良かった。



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