第139話・森で訓練をするようです
ランクアップの更新も終えて、サクっとアサイ村に帰ってきた。
いやぁ〜、空を飛べるってホントに楽チン。
でもね、パーティーのみんなの反応がいまいちなんだよねぇ。
ランクアップしたんだから、おめでとうの一言もあっても良くない?
って言ったら、Eランク如きでお祝いなんぞチャンチャラおかしいって返された。
FからEのランクアップは、読み書きが出来ればすぐにでも出来る事らしい。
だから、お祝いはDランクになるまでお預けって事になった。
そんな事があってから数日が経ち、今日は学校のお手伝いの日。
本日の授業は森での耐久訓練。参加メンバーは前回、火起こしに成功したケビン君、バディー君、ビクター君と新たな成功者のレベッカさんの計4名。
レベッカさんはあの後、悔しいってんで自主訓練をしていたんだってさ。
意外にガンバリ屋さんだったんだね。
残りのヘンリー君とサラさんはもう少しで5分を切れるところまできているらしいんだけど、ここは厳しく居残りと相成った。今頃は鬼軍曹ことミュラー爺さんの指導の下、校庭で火起こしの練習をしていることだろう。
さて、訓練組四人を連れて俺とヘイゼル爺さんは森の手前へとやって来た。
懐かしい場所だ。俺もここで耐久試験を受けたっけなぁ〜。
「では、今からオマエ等四人には耐久訓練を実施する事にする。今までの間に授業で習った事を実践出来れば簡単なはずだ。訓練内容は、ここ居るユウキに伝えているのでそれに従うように。では、訓練終了時に迎えに来るのでガンバって生き残れよ」
後は頼むゾ。とヘイゼル爺さんは訓練用の荷物を置いてさっさと帰っていった。
俺は四人を集めて、それぞれに荷物を渡しながら訓練内容の説明を開始する。
「え〜と…今から四人は協力して、この森でキャンプをしてもらう。期間は三日。
その間の食料や水は自分達で調達するように。俺は少し離れた場所で君たちの行動を監視している。君たちに危険が及ばない限り、俺は手を出さないのでそのつもりで行動するように。以上、解散」
「「「「は〜い!」」」」
と、元気の良い生徒たちの返事を聞き、俺は少し離れて彼らの行動を見守る事にした。
まず、行動を開始したのはバディー君とビクター君。
荷物をさっさと担ぐと移動を開始しようとする。
それを止めに入ったのはレベッカさんだった。
「ちょっと!アンタたち、訓練内容を聞いてなかったの?全員で協力するようにって言ってたでしょ?それなら四人パーティとして行動するのが普通でしょ?」
その通りだ。この訓練にはパーティを組んだ時の協調性も見る事になっている。
レベッカさんがバディー君とビクター君の行動を止めている時、ケビン君は荷物の確認をしていた。
うむうむ。ちゃんと勉強してるね。突発的なサバイバルの時ほど現状確認ってのは大事だ。
これも訓練内容に入っている。なんせ、荷物の中身は半リットルの水しか入っていない水袋以外は、全部バラバラになっている。
ちなみに、ケビン君の荷物には水袋以外に、簡単な地図と丈夫な糸100m分、小さめのナイフだけ。
その中身を見たレベッカさん達も焦って自分たちの荷物を確認する。
全員の荷物の中身を確認したバディー君がボソッと呟いた。
「圧倒的に水が足りない…。これじゃ干乾びちまうぞ…」
だからと言ってたでしょ?全員で協力しないと三日間は地獄を見る事になるよ。
「とにかく、水場に移動するのが先決だな」
と、ビクター君の言葉に全員が頷き、移動を開始した。
「近くに水場ってある?」
レベッカさんの当然の疑問に答えたのは、地図を見ていたケビン君だった。
「この地図によると、ちょっと離れた所に泉があるみたいですよ」
「その方向はどっち?」
「地図だと北の方ですね」
「北ってどっちよ?」
「…………?」
マヌケな会話である。コンパスが無い時の方角の確認方法も勉強したはずだよ。
「え〜と…。たしか、切り株で方角がわかるんだっけ?」
ビクター君が思い出したようだ。
「そうそう、でも確実性が低いって言ってたはず…」
バディー君も授業を思い出したようで、方角の確認をしようとあれこれと知恵を絞っている。でもねぇ、方角の確認の難易度は高く設定してないんだよ。ある事に気づけば簡単に方角がわかる場所で訓練しているんだから。
「とりあえず、開けた場所に移動しようよ。景色で方角がわかるかもしれないし」
レベッカさんのその一言で、すぐ近くの開けた草原に移動を開始した。
森から出てすぐの事だ。ケビン君が地図と景色を見て方角がわかった事を告げた。
開けた場所への移動は正解である。方角もわかるようにしてあるし、食料の確保もこの草原でなら可能だ。
あとはキャンプ地の設定をするだけで一段落つけるはず。
彼らのガンバリに期待しよう。
「北はあっちの方だから、泉もあっちにあるはずですよ」
と、ケビン君が地図を見ながらみんなに告げる。
「じゃあ、キャンプ地は泉の近くに設定するって事でケビン君、案内をお願い」
「はい。皆さん、移動しましょう」
レベッカさんの指示で更に移動を開始。更にレベッカさんは……。
「ついでに、バディー君とビクター君は適当に括り罠を仕掛けてよ」
と、二人に指示をしている。
効率的だな。移動のついでに食料の確保もしようって考えたみたいだ。
二人は素直に指示に従って罠を仕掛ながら移動を開始した。
うむ、いつの間にかレベッカさんがリーダー役になっているようだ。
周りも自然にそれを受け入れているようだし、これは案外と良いパーティになるかもしれないな。
そして、小一時間ほど歩き小さな丘を越えた所で目的の泉を発見できた。
「はぁ〜、やっと着いた…。これで水の確保は安心だな」
と、ビクター君が丘に腰を下ろしながら呟く。
「だな。じゃあ、この丘をキャンプ地にして手分けして準備しようか?」
バディー君の提案に全員が賛成し、各自行動を開始し始めた。
俺はそれを見てから、彼らから隠れる事ができるような場所を選んで自分のキャンプの設営を始めた。
彼らの訓練は、これからが本番である。




