第133話・ルキアVS棒人形
よっしゃこ〜い!!と、ルキアさんはやる気満々だけど、一応はルール説明をしておかないといけない。
「模擬戦とは言っても、ゴーレムは攻撃を当ててきますから注意して下さいねぇ。それと、格闘戦を想定してますから、魔法は無しでお願いします。んで、3分経ったら終了ですから、そこんとこヨロシクで〜す!」
「了解!了ぉ〜解!!さっさと始めよう〜!!」
ホントにわかってるのかな?ちょっと心配だけど、ご本人がやる気になってるんだからしかたないか。
「んじゃ、始めますよ!!……よ〜い!始め!!」
合図とほぼ同時にルキアさんがゴーレムへと一気に距離を詰める。
「タァ!!」
ルキアさんは気合いの入った一撃をゴーレムに加えて離脱、そしてまた攻撃とスピードを活かした一撃離脱戦法をとっている。
しかし、ゴーレムはその場に留まったままルキアさんの攻撃を弾き返していた。
ルキアさんの攻撃はすべて防がれ、甲高い金属音が室内に鳴り響いている。
「クソっ!!これならどうだ!!」
ルキアさんは上半身への攻撃をフェイクに足払いを仕掛ける。
が、ゴーレムはその場で軽業師のように側転して、その攻撃を避けた。
そして、それが合図かのように防御から攻撃に転じる。
ルキアさんは間合いを取ろうとするが、ゴーレムはそれを許さない。
ゴーレムが執った戦法は間合いゼロ距離の超接近戦だ。
今度はルキアさんが防戦一方になる。
「ああ!!もう!!やり難い!!!」
ルキアさんの悲鳴が聞こえてくるが、模擬戦を中止するつもりはないみたいだ。
ゴーレムの攻撃を受け流すこと十数回、ルキアさんがゴーレムの隙を衝いて一気に後方に飛び距離をとろうとする。
ゴーレムはそれに合わせて前進する。ルキアさんが得意とする一撃離脱戦法を完全に封じるつもりなのだろう。
しかし、ルキアさんはそれを予測してたようだ。ルキアさんは真上に飛び上がり、ゴーレムの頭上を飛び越えて背後を取った。
「もらった!!」
渾身の一撃!大上段から切りつけるルキアさん。
ギン!!と、金属音が響き戦闘が止まった。勝敗がついたのだ。
勝ったのは、ゴーレムだった。
ルキアさんの攻撃は受け止められ、彼女の首筋にゴーレムの腕がピタリと突き付けられていた。
「うそぉ〜……」
ルキアさんは冗談でしょ?って感じで唸っている。そう思いたくなるのは解らなくはない。
だが、ルキアさんの闘っていた相手は、あの超魔法文明のゴーレムだった事を忘れてはならない。
このゴーレムは単なる人形ではないのだ。
このゴーレムの関節は生物の関節とは違い360度どの方向へも曲がるのだ。
この特性により、ゴーレムの前面と背面との違いが無くなる。
ルキアさんは確実に背後を取ったはずと思ったに違いない。だが、まんまとゴーレムの目の前に出て来てしまったというわけだ。
相手が生物的な動きしか出来ないゴーレムなら勝てただろうが、こちらはより機械的な動きも出来る性能がある。
そこを見誤ったのがルキアさんの敗因と言えるだろう。
「終ぅ〜了ぉ〜。ルキアさん、お疲れ様でした」
俺は制御盤を操作してゴーレムを待機モードして、模擬戦の終了を告げた。
「このゴーレム、強すぎだわぁ。手も足も出なかったなぁ……」
「そりゃ、対人戦じゃ無敵のゴーレムですからねぇ。でも、なかなかのモノでしたよ。俺だったら10秒ももたないですよ」
ゴーレムをDELSONに収納しつつ、ルキアさんの健闘を称える。
「そうかなぁ?でも、3分も闘ってないでしょ?」
そう言われて、俺は制御盤の判定画面を確認してみる。
「え〜と…。戦闘時間は2分12秒でしたね。総合判定は『C+』ってなってますよ」
「ふ〜ん。で、その『C+』って良いの?悪いの?」
「さあ?どうなんでしょう?とりあえず判定はA〜Dで+−が付きますから、全部で12段階評価だから……。7番目?真ん中くらいの評価って出てますね」
「真ん中か〜。可もなく不可もなくって感じかな?」
「まあ、評価データを多数取れば基準が分かるんですけどね。今回が初めての事ですから、良いか悪いかわかりませんよ」
そんな事を話しながらみんなの所に戻ると、ユーノさんが何かを考え込んでいた。
今のルキアさんの模擬戦を見て、何かに気づいたのだろう。
「どうしたんですか?」
「う〜ん…。ちょっと気づいたんだけどさぁ。あたし達のパーティーってバランス悪くない?」
ユーノさんは今回の模擬戦を俺達のパーティーでやってみたらどうなるか?を想像していたみたいだ。
それで気づいたのだろう。俺達のパーティーには前衛が一人しかいないって事に。
「言われてみれば、そうですね。ルキアさんを抜かれたらユーノさんもマリアさんも後衛だから、下手したら全滅ですねぇ」
俺はソロでやっていたから気づきもしなかった。
このパーティーはバランスが悪すぎる。
「せめて、もう一人くらいは前衛が欲しいわね」
とユーノさんは言うが、そう簡単にはメンバーを増やす事は出来ない。
なんせこのパーティーには秘密が多いのだ。
「ガルダさんはどうですか?口は堅い人ですよ」
マリアさんが推薦してきた。うん、ガルダさんなら腕も良いし仕事もキッチリこなす人だから大丈夫そうだ。
「ガルダは無理ね。アイツはもうヤドラムから出てるはずよ。ギルドを辞める時にどこぞのダンジョンに行くとか言ってたから」
「え?ガルタさんって、もうヤドラムにいないの?」
「そのはずよ。ギルドの雇われをやってた理由だってダンジョンアタックの資金集めだったんだから。今頃は隣の国にでも行ってる頃じゃないかしら」
なんだ…俺はてっきりガルダさんは居付きの冒険者だと思ってたよ。
ヤドラムにいないんじゃ、こっちに引き込むのは無理か……。
と、横を見るとクララ様が小さく手を上げておられる…。
……まさかとは思うが、ちょっと聞いてみよう。
「クララ様、何かご意見でもありますか?」
「あの…。私ではダメですか?最近は騎士のロイダールから剣の手ほどきを受けていますし、筋が良いと褒められましたから…」
あのね…いくら筋が良いって褒められたからって、ハイどうぞって貴族令嬢を前衛にするはずないでしょ。
このお嬢様はワザと俺達を困らそうとしてるのかね?
「クララ様、ダメなのわかってて言ってますよね?」
「はい……。すみませんでした……」
お嬢様を前衛に迎えたなんて伯爵様に知れたら、俺達全員、縛り首になっちゃうでしょ。クララ様は貴族らしく後ろでデンと座ってて下さい。




