第132話・思ってた以上ヤバかった?
ラムちゃんのゴーレム使用の提案は否決された。
そりゃそうだろう。低ランクのダンジョンで超魔法文明のゴーレムが無双するなんて悪夢でしかない。
第一、このゴーレムは俺の計画で使おうと思っているんだし、リバースエンジニアリングを施して超文明の技術をいただこうと画策しているのだ。
このゴーレムを高ランク冒険者に持っていかれたら、必ずどこぞの軍や権威どもがしゃしゃり出てくるに違いない。
そんな事にならないように、注意しないといけない。
「そういう事なんで、ゴーレムはラムちゃんにあげられません」
「え~!農場で使おうと思ってたのにぃ~」
ラムちゃんは農場の労働力としてゴーレムを見ていたらしい。
「それなら、農作業用に改造するまで待っててよ。今のままじゃ、コイツは使えないからさ」
「わかったぁ…待ってる」
どうにか、ラムちゃんを納得させて、ゴーレムを片付けようした時だ。
「ねぇ、これって戦闘用よね?ちょっとだけ試してみたいんだけど…」
と、ルキアさんが言ってきた。
なんですか?戦闘民族の血が騒いできましたか?
「ちょっとと言われても、これは基本形態でも相当強いですよ。Aランク冒険者程度でも瞬殺できますしぃ」
「ホントに~?見た目がヒョロっこいから、とても強そうに見えないんだけど~」
まあ、このゴーレムの見た目は強そうには見えないけどね。
単なる棒人形なんて侮ってたら痛い目に遭うと思うよ。
「私もそのゴーレムには興味ありますね。伝説とか説話なんかじゃ大きなダンジョンゴーレムみたいに言われてましたから」
と、マリアさんも興味津々だ。
伝説なんて時代を経れば、徐々に変化するモノなんだし、ゴーレムのイメージがダンジョン産のに入れ替わっていてもおかしくないと思うんだけどなぁ。
「私もこのゴーレムの性能は気になるわね」と、ユーノさんまで言い始めたので困ってしまう。
「でも模擬戦となると、ここじゃ狭すぎですよ…」
ここはラムちゃんの本丸だ。コアを傷つけでもしたら大変な事になる。
「んじゃ、広い所に移動する?」
と、ラムちゃんが提案してきた。
「え?そんな所あるの?」
「たくさんあるよ。まだ、冒険者が来てない所も隠し部屋もあるしね」
ああ~そう言えば、このダンジョンはまだ半分もマッピングされてなかったな。
「んじゃ、そこで模擬戦でもやってみましょうよ。ラムちゃん、案内して」
そう言って、ルキアさんがいそいそと行動を開始した。
エレベーターに乗って案内された場所は第五階層の広い部屋だった。
ラムちゃんに灯りをともしてもらって、部屋の中に入ると体育館くらいの広さがある。これならちょっとばかり暴れても大丈夫そうだ。
「ダンジョンって明るくも出来るんですね」
と、今更ながらにクララ様が感心している。
まあ、普通は真っ暗だものね。
「明るくするのにも魔力がいる。今日は特別」
ラムちゃんが気を使ってくれたみたいだ。ありがとうね。
「これくらいの広さなら、問題無いわね。早速やりましょうか!」
そう言いながら、ルキアさんは準備運動を始めている。
「ちょっと待って下さいよ。こっちの準備もあるんですから!」
俺は棒人形と制御盤を出してリンクを繋ぐ。
たしか、『模擬戦闘モード』があったはずだからぁ~。
と、制御盤の画面を操作しているとユーノさんとマリアさんが手元を覗いてきた。
「ねえ、ユウキくんその画面の文字、読めてるの?」
ユーノさんが変な質問をしてくる。
「?…。読めてますけど?何か?」
マリアさんが隣で、はぁ…と、ため息をついてこめかみを押さえている。
ユーノさんはあきれながら、こう言ってきた。
「あなたは気づいてないようだけど、その画面の文字って『古代文字』だと思うのよ。その文字って未だに解読出来てないから、私たちには読めないんだけど…」
ああ…なんかやっちまったみたいだ。
たぶん、俺に付いてる転移者特典の言語スキルかDELSONの効果で、俺は普通に読めていたから気づかなかった。
「この文字が読めてる時点で、ユウキくんって魔法学会に誘拐されてもおかしくない人になってますよ…」
マリアさんが心配そうに言ってきた。
そうかぁ~。これってば、かなりヤバそう…。
「ノートンさんではないけど、学会や軍は秘密裡に古代文明の遺物の兵器転用の研究を行っているらしいから…」
ああ~よくあるヤツだねぇ…。考える事は一緒かぁ~。
うむ、気を付けよう。こんな事で誘拐にあっちゃ堪らないもの。
「了解で~す。以後気を付けま~す」
「ホントにわかってるの?ユウキくんってかなりヤバい所に足突っ込んでるのよ」
マリアさんが本気で心配してくれるのはありがたいが、一応はこちらも自衛手段の研究をしているから安心してほしい。
このゴーレムだって、その一環なんだからさ。
そうこうしている内に俺は制御盤に『戦闘評価訓練』の項目を見つけた。
これならルキアさんの希望に添える事が出来そうだ。
「よし!準備完了で~す。ルキアさんはどうですか?」
「大丈夫!!いつでもイイわよ!」
そして、ルキアさんと棒人形との戦闘が開始された。




