第126話・空を自由に飛びたいな
昭和アニメの中学生バリに廊下に立たされてから三日後、今日はクララ様の御帰還の日だ。
各所の視察及び関係者への激励を終え、クララ様御一行は本日、ヤドラムへと帰って行った。
帰り際、何故か俺はクララ様から「くれぐれもご自重してくださいね」と念を押された。なんか解せない…、別に何もしていないんだがなぁ。
少々、納得できないが一応納得したように返答しておいた。
ちゃんと自重してるつもりなんだけどな。文化ハザードなんてやらかすつもりは毛頭ないんですよ。俺は……。
さて、クララ様が帰還する際、この家に残ってくださった方達がいる。
このパーティーハウス専属のメイドさん達、5人だ。
これで家事一切がメイドさん達に委ねられて一安心だ。
ユーノさんのお世話問題も解決したって事になる。
クララ様に感謝だね。
んで、いつもの日常生活に戻ったんだけどぉ~。
ここのところ、仕事と言えば畑の手伝いと学校の手伝いだけ。
畑の手伝いだけなら俺のアバターでも出来る仕事なんで、再びアバさんを呼び出し三日ほど時間を作った。
「イイ~の?クララ様に自重しろって言われてるんだろ?」
と、アバさんが心配そうに言ってくる。
「その辺は大丈夫だよ。ちゃんとステルス機能を使ってテストするんだしさ」
「まあ、今回はハザード系の無茶じゃないけどさ~。バレたらマジヤバだよ?特にユーノさんとか…」
「大丈夫、大丈夫。森の奥でテストするんだし、早々、見つからないって」
俺はアバさんに仕事を任せ、森の奥に向かった…。
ロケットベルトとかジェット・パックと言われているアイテムをご存知だろうか?
ランドセルの様に背負ってジェットの噴射によって推進する飛行器具だ。
元々は船外活動のために開発が進められていたらしい。
古くからSF作品には登場していたが、実用化に至ったのは20世紀末で1984年のロスアンゼルスオリンピックで実演されたのが有名だ。燃料の関係で飛行時間は数十秒だったんだが、近年では小型のターボファンエンジンを搭載してこの欠陥を解決している。
翼を備えた機種も開発されていて、長距離飛行も出来るのもあるってことだ。
なんでこんな話をしたかと言うと、今回テストをする新アイテムがこのロケットベルトだからだ。
と言っても、製作したのは5点式のフルハーネスと方向操作が出来るようにしてある噴射ノズルが付いた背負子だけ。
こいつにロケットエンジンの代用としてDELSONをセットしてロケットベルトにしようって思ったのだ。
先ほど話した通り、ロケットベルトの欠点は極端に短い飛行時間。だが、エンジンをDELSONで代用するなら、ほぼ無限に飛べるはずだ。
まあ、こっちの世界での移動手段としていろいろと考えてはいたんだけどね。
やっぱさ、『飛行』ってラノベの定番じゃん?魔法とか使って簡単に飛んじゃってる主人公がたくさんいるじゃん?
だからさぁ、飛んでみたくなるんだよ、俺もさぁ……。
一応は他にも移動手段は考えたよ。自動車とか戦車とかね。
でも、いざ造るとなると仕組みやらパーツ数やら、いろいろと問題が出てくるんだよね。他の主人公さん達はあっさりと造っちゃってるけども……。
みんな主人公になれるくらいの人たちなんだから、頭がイイんだろうね。
俺なんか、エンジンの簡単な構造は知ってても、トランスミッションやドライブシャフトの構造なんて知ってるわけない。
正直、俺には無理だ。強引にやれば出来なくはないけど、絶対に不具合が出るに決まっている。
だから、今回はDELSONを使ってかなり強引だけど、一番簡単に再現できるロケットベルトにしたってわけだ。
まあ、こんなオーバーテクノロジーなんかユーノさんに見つかった日には、折檻コース一直線なんだけどね。
では、早速テストといこう。
まずは、DELSONに装着してある偽装用バックパックを外して……と、それからDELSONを今回製作したオール鉄パイプ製の背負子に装着。
間違っても外れないように直径5mmの針金で造ったカゴに入れてロックした。
それから吸引パイプを噴射ノズルに装着、これもちゃんとロックする。
で、ここで問題になったのが、DELSONの出力の調整をどうするのか?って事。
普段は吸引パイプのスイッチ部分で出力の調整をやっているんだけど、今回は構造上スイッチ部分に手が届かない。
なので、電源コードを利用してみた。プラグ部分を変形させてラジコンのコントローラーみたいな形にして噴射ノズルの操作レバーに取り付ける。
出力調整はコントローラー部分の引き金を引くと出力が上がる仕組みにしてある。
んじゃ、そろそろロケットベルトを装着してみよう。
5点式のフルハーネスは両肩、胸部、両足の付け根にセットする。
両足の付け根のハーネスには特に注意、挟むとモノごっつ痛いからね。
よし!ステルス機能を起動して準備完了だ。
「ユウキ!!発進します!!!」
コントロールレバーを引いて、出力を上げていく。
噴射ノズルから振動と甲高い音と共にエアーが勢いよく噴き出し始めた。
そして、土埃を舞い散らせ俺は飛び上がった。




