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第116話・ダンジョン農場化計画


扉が静かに開くと暗かった部屋に明かりが灯った。

ラムちゃんの姿は見当たらず、ダンジョンコアがゆっくりと明滅を繰り返しているだけだった。

ラムちゃんは、どこに居るのだろう?少し不安を覚えて呼びかけてみた。


「久しぶりぃ~。ラムちゃん、どこに居るのぉ~?」


すると、突然ダンジョンコアが激しく明滅し、俺の目の前に光の玉を放出した。

そして、その光の玉が一段と厳しく光ったと思ったら人の形になり、見知った人物が姿を現した。


「呼ばれて飛び出てj「ピーー!!ピーー!!」ァ~ン!って、なんで挨拶の途中で『ピー音』を入れるかな?」


ラムちゃんである。元気の良い挨拶はイイんだが、そのセリフはくしゃみの大魔王さまのセリフだ。いろいろと問題になりそうなんで止めていただきたい。


「フぅ~…、危ないセリフの挨拶をありがとう。てか、その恰好はナニ?」


久しぶりに会ったラムちゃんの服装はピンクのフリフリ付いたスカートに頭にキラキラしたティアラ、そして右手にはハート飾りの付いた短いステッキを持っていた。明らかに幼児向けの魔法少女の恰好だ。


「さすがに、くしゃみの大魔王の恰好をするとビジュアル的に問題があると思ったんで、自重して大きなお友達向けに魔法少女っぽい恰好にしてみた」


うん…そか…。でも、そう言う余計な気遣いは必要のないと思うよ。

なんだか、ラムちゃんのヲタク化が進んでいる気がする。


「そんな事より、ユウキ!ワタシは農業の知識を手に入れたぞ!!」


あら?恰好の事はどうでもいいのね。新しい知識を仕入れた事に大興奮してるよ。


「ラムちゃん、これでも飲んでちょっと落ち着こうか。一体、何があったの?」


俺はラムちゃんを落ち着かせる為にDELSONから冷えたお茶を出して渡した。

そのお茶をラムちゃんはゴクゴクと一気に飲み干し、プハぁ~と一息つくと最近ダンジョンで起こっていた事を話し始めた。



ラムちゃんの話では、ここ数ヶ月の間ダンジョンでやっているスライムへの餌撒きの量が徐々に増えてきているらしい。

スライム牧場だけでは使い切れないほど廃棄物が増えてきているのだ。

しかも、何故か知らないがスライム牧場の近くで小さな畑を作り始めたらしい。

そして、その畑の管理に農業の知識を持った人物がダンジョンに住み込みで働いているとの事だった。

俺の世界の食べ物の再現を目指すラムちゃんにとっては最高の出来事。

ラムちゃんは現在、全勢力を傾けてこの農業従事者を観察し、その技を盗み取っているという事だ。


では、何故ダンジョンで農業をやる事になったのか?

理由は簡単、ヤドラムの人口増加とそれに伴う食料の輸入量の激増が原因だ。


実際、このヤドラムの急激な人口増加は問題になりつつあるとクララ様がおっしゃっていた。ヤドラムの食料自給率では増加した人口を養う事は到底無理な事なので、それを見越した商人達が食料の輸入量を増やしたのだ。

その結果、精肉の処理の段階で出る廃棄部分の量が増加したという訳だ。


ただ、今のように食料を輸入だけに頼るわけにはいかない。

徐々にだが、食料品の価格が高騰し始めているからだ。

そこでギルドは食料自給率の向上を目指し、ダンジョンでの農業が計画にあがったのだ。切っ掛けはスライム牧場内の草の繁茂が異様に早かった事らしい。

スライムへの餌やりが草の成長に良い影響をもたらすならば、野菜にも良いのではないかと考えたわけだ。

で、現在は試験的に小さな畑を作り、野菜を育てているらしい。



「クララ様から聞いてはいたけど、ギルドも手広くやってるんだなぁ」


「うむ、そのおかげでワタシの知識量が増加する!」


目指せ!農業ダンジョン!!とラムちゃんが明後日の方向に気合いを入れまくってた。


「ちょっと、上の階層の様子を見に行ってみるかな」


俺は少し気になったの第一階層の畑を見に行く事にした。


エレベーターに乗り込み第一階層へ、出口は牧場近くの森に設定した。

DELSONのステルス機能を起動して、牧場に近づいみる。

牧場は周辺の地域より下草の生育が良いようで緑の色が濃くなっているようだ。


『スライムは森の健康のバロメーター』とヘイゼル爺さんが言っていた。

これは長い間の経験から導き出された猟師達の常識だ。


牧場の状態を見るとそれがあながち間違ってはいないように思える。

それはスライムの出す『ソーマ』が肥料のような働きをしているからなのだろう。

スライムが繁殖している森は『ソーマ』が多く、『ソーマ』が多いと森が活性化して動物や魔獣が増え、それがスライムの餌が増える結果に繋がる。

こんな循環が起こっていると考えれば、スライムが食物連鎖の要と言えるんじゃないだろうか。


そんな事を考えつつ畑を探してみると牧場から少し離れた場所にそれはあった。

10m四方の小さな畑が3枚ある。試験的だから家庭菜園のレベルかな。

畑には各々に立て札が立ててあり、そこには畑の状態が書かれていた。

『普通の畑』『森の土の畑』『牧場の土の畑』といった具合だ。


「畑に苗を植えてから一ヶ月半か…。生育に差が出てるな…」


立札に掛かっている観察日誌を読んでみると、そこには細かく苗の生育状況が記してあった。

やはり、一番苗の育ちが良いのは牧場の土を使った畑みたいだ。


「この分だと、結果を待たずに本格始動しそうだな」


あとは収穫量の違いを検証すれば、ダンジョンの1~2階層の農場化が開始され、今年中には食料自給率を上げる事ができる見込みだな。


ダンジョンコアの部屋へ戻ってきた俺はラムちゃんに畑の様子とこれからギルドが行うであろう事を伝えた。


「うむ。1~2階層の農場化は別に構わない。それが進めばワタシが補給できる『ソーマ』が必然的に増えるという事だから」


と、ラムちゃんは農場化には賛成のようだ。


「ただ、今のままだと畑の知識は入るけど『水田』の知識がユウキの記憶だけに頼る事になる…。これじゃあ、お米の再現に時間が掛かるなぁ」


ああ~。この辺りじゃ稲作の文化ってないものねぇ~。

俺の記憶じゃ、テレビで見た程度のモノだしね。


「コンバインやトラクターの再現は魔獣じゃ難しいから、田植えはワタシがやるしかないか!?」


え?農業機械も再現するつもりだったの?

ラムちゃん、本格的だねぇ~。


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