第112話・部屋の整理と学校のこと
引っ越しが終わって三日が経った。
現在、俺は自分の部屋でまったりして…いない。
いやぁ~、俺の引っ越し作業は荷物の少なさとDELSONのおかげで、その日の内に片付いたんだけどね。
例の三人組の引っ越し作業が終わってないんだわ。
だから、俺はその手伝いをしている。
俺がやる事は彼女たちの家具を部屋に運び入れる事だ。
DELSONがあるので作業自体は簡単なんだが、問題は家具の配置だ。
彼女たちには各々のこだわりがあるらしく、やれベットはここに置けだの、タンスはあっちに置けだのとうるさい。
しかも、一度配置しても気に入らないとやり直すというこだわりよう。
DELSONで簡単に作業が出来るので、更にそのこだわりに拍車が掛かるんだわ。
もう、かれこれ半日近く彼女たちに付き合って家具を出し入れしていた。
「ねぇ~。もうこの辺で決めちゃってイイんじゃないんすか?」
「ナニ言ってるの。ここは私達の拠点になるんだから、そう簡単に適当になんか出来ないわよ」
「そうそう、妥協したら心地良い居住空間は望めないわよ」
ユーノさんとルキアさんが力説するが、正直俺にはこの感覚がわからない。
「そうですかぁ~。まあ、ほどほどにして下さいねぇ」
この二人が飽きるまで俺は付き合うしかなさそうだ。
そしてだ……。
「はぁ……」
と、さっきから会話にも加わらずため息ばかりの人が一人いた。
「マリアさんも諦めてください。失敗は誰にでもあるんですから」
マリアさんがへこんでいるには理由があった。
それは、部屋に入らない天蓋付きのベットを購入してしまったのだ。
このパーティーハウスの件では冷静だったはずのマリアさんだったが、実は一番テンションが上がっていたようだ。
で、サイズも図らずに貯金をはたいて豪華なベットを購入した。
それで部屋に運び込んだは良いが、ベットがデカ過ぎた。
マリアさんお気に入りの天蓋の高さも高すぎだ。何せ、天井より高いんだからね。
「せっかく買ったのにぃ~」
と、嘆いても無理なモノはナニしても無理。
とりあえず、天蓋を外して寝室に入れたけど寝室がまるごとベットという状態になってしまった。
「まあ、とにかく広いベットでは寝れるんですから良いじゃないですか」
「そうなんだけどぉ。でも、天蓋付きってのに憧れてたのぉ」
「寝室の天井が天蓋の代わりって事になりませんか?」
「うぅ~~~。なんか納得いかない!」
納得いかないと言われても仕方がない。サイズも図らずに購入した自分の責任って事で諦めてほしい。
マリアさんはブチブチ言っていたが、文句を言われてもねぇ~。
さて、それから5日ほど経ったある暖かい日。
このアサイ村にトンデモない事が起こった。
なんと、クララ様がご来訪したのだ。
こんな田舎の村に貴族が来るなんて事は普通は無い。
だが、今やこの村とヤドラムの街は王様の勅命で実験都市となったわけで、そこに貴族のクララ様が来るのは当然の事。
もう村は始まって以来のお祭り騒ぎだ。
村長のパレオさんもガッチガチに緊張してクララ様御一行をお出迎えしていた。
「『アサイ村冒険者育成学校』の生徒さん達もお連れしました」
そう、クララ様はこの学校の第一期生となる生徒6人を伴っていた。
ついでに、うちのパーティーハウスに自分用の家具を持ってきたのだろう、荷馬車がたくさん並んでいた。
そして、クララ様と御付きの一行は村長の歓待を受けるべく村長宅へ、生徒さん達は入校手続きの為に学校へと向かった。
で、俺はと言うといつもの通り畑のお手伝いをやっている。
そろそろ、狩りにでも行こうかなぁなんて思っていたんだが、ヘイゼル爺さんに止められた。
これからは俺の狩りのスケジュール調整はギルドの出張所がやる事になったんだってさ。爺さんも学校の方でサバイバル教官をやるんで俺の面倒が見れなくなったし、出張所の方でも生徒達にギルドの予行演習をさせるんで都合が良いらしい。
「ユウキも臨時講師をやってもらう事があるから覚悟しておくように」
って爺さんから予告されちゃったよ。
まあ、俺的にやってる事は去年とほぼ変わらないんで気楽にやっていこう。
そうそう、マリアさんのベットの事なんだけど、布団やらマットやらを干す時に寝室から出すだけでかなり大変な事になっていた事をお知らせしておこう。
その時、俺は手伝わなかったよ。
だって女性の寝具って軽々しく扱っちゃダメでしょ。いろいろとマズい事もあるだろうし…。
親しき中にも礼儀ありって言うしね。




