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第107話・「おかえり」と「ただいま」


早春と言うにはまだ早いとある早朝。

俺は、ヤドラムの街の出口に来ていた。

本日、アサイ村に帰るからだ。


「おはようございます。ガンツさん」


「おう。おはようさん」


待ち合わせ場所には既にガンツさんを始め第一陣でこっちに来た村の人達が集まっていた。


「世話になった人に挨拶はしたのか?」


そうガンツさんが尋ねてきた。


「ええ。一応は…」


「一応」である。実際にちゃんと挨拶できたのはヤーヴェさんとクララ様だけだ。

ルキアさん達『雇われ』組みの人達は、既に街を出てしまったのか?挨拶が出来なかった。それにユーノさんも休業中でどこいるのかわからず挨拶出来ていない。

何だか消化不良のまま街を出る事になってしまった。


冒険者って随分とアッサリしてるんだなぁ…なんて思ってしまった。


「それじゃあ、みんな揃ったようだから出発するか」


ガンツさんの号令で出稼ぎに来ていた全員が馬車に乗り込んでいく。

帰りの馬車はお土産やらで荷物が多いのか、何気に狭くなっていた。


ゆっくりと進み出す馬車に揺られ、俺は第二の故郷アサイ村に向かうのだった。


街道はそこそこ混雑していた。これもヤドラムを起点に始まった好景気の影響だ。

どん詰まりの田舎のアサイ村でさえ、その恩恵に預かっている。


「この混雑も学校関係ですかねぇ?」


「どうだろうな?学校だけって事はないんじゃないか?」


そんな会話をしつつ、アサイ村への帰還の旅は続いていく。

この帰りの旅も行きと同様にイベントらしい事は発生せず、至って平和な旅だ。

ちょっと景気が良くなったんだから、盗賊なんかのイベントがあっても良くね?とも思っていたが盗賊の気配すら無く、順調に…ホント順調に旅が終わり、夕方近くになって懐かしのアサイ村が見えてきた。


うん。このイベントの無さは想定してた。だから、ヘコみもしないよ。

立て続けに『荒事』に巻き込まれる様な主人公特性なんて持ち合わせてないもの。

平和が一番。俺のモブ特性が少々強いだけの話だ。何も起きない日常こそスローライフの醍醐味なんだ。無味無臭の日常バンザイ!!である。


アサイ村の広場に馬車で乗り入れると、村のみんなが出迎えてくれた。

そこかしこに「おかえり」の声が聞こえてくる。家族の笑顔が印象的だ。


「ユウキ…おかえり」


声のした方を向くと、そこには笑顔のミーシャ婆さんがいた。


「ただいま…、婆ちゃん。みんな、元気だった?」


「ああ、おかげさまでね。みんな待ってるよ。家に帰ろう」


「うん。帰ろう…」


何気ない出迎えの会話、でも何故か心が温かくなった。


その日の夕食は豪勢ですごく美味しく、村長のパレオさんとしこたま酒を飲んだ。




翌日の早朝の事。


「いい若いもんがいつまで寝とるんじゃ!!さっさと起きろーー!!」


ミーシャ婆さんの容赦ない大声で起こされた。

昨日の今日でこの通常運転、しかもまだ朝の5時だよ…。

外はまだ真っ暗な上に昨日は村長のパレオさんとしこたま飲んで二日酔い気味なんだけどなぁ~。


「うぅ~。もうちょっと寝かせてよぉ~。飲み過ぎてキツいんだからぁ」


「ナニ甘えた事ぬかしておる!もう、みんな起きて朝食の用意も出来てるんじゃ!さっさと顔を洗って来い!!」


厳しい…。いくら農家の朝が早いとは言え、これは厳しすぎる。

んが、ミーシャ婆さんにはそんな甘えは通じない。布団を引き剥がされて部屋から叩き出された。

庭に出て冷たい井戸の水で顔を洗って歯を磨き、朝食の待つリビングへと向かう。


「おはようございます」


と、挨拶。パレオさんはとっくに朝食を済ませたようで、ゆったりとお茶を啜っていた。


「おはよう。ちょっと辛そうだね。二日酔いかな?」


そういうパレオさんは二日酔いの気配もない。こっちの世界の人は肝臓が強力に出来ている人が多いらしい。ガンツさんを始め知り合ったほとんどが酒豪だ。


「ちょっと昨日は飲み過ぎたようで…」


「大丈夫かい?今日から仕事を入れてるんだろう?無理しないで休んだらどうだい?」


「大丈夫ですよ。今日は午前中だけ畑仕事の手伝いですし、午後は学校の進捗状況を見に行くだけですから」


「そうかい?あまり無理せんでくれよ。帰ってきたばかりなんだからな」


「はい。お気遣いありがとうございます」


まあ、多少の二日酔いならすぐに収まるし、畑仕事って言ったって焚き火の番をするくらいだから大したこともないんだけどね。


そして、俺は軽めに朝食を済ませると仕事に向かった。


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