第105話・祝。管理棟完成ぇ〜
まだまだ寒さが厳しい日が続いているヤドラムの街だが、春が近づいてきているのか、少しづつではあるが雪かきの依頼は減ってきていた。
そんなある晴れた日にスライム牧場の管理施設が完成した。
俺とノーベルくんとサリナさんの三人はピカピカの牧場管理棟を眺めていた。
「いやぁ〜、立派なモノが出来ましたねぇ〜」
ノーベルくんが感心した様に呟く。
出来上がった管理棟は三階建てで一階は倉庫兼事務所、二階三階は事務員の宿泊施設になっている。宿泊施設にはお風呂も完備されているというからヘタな宿屋より豪華な造りになっていた。
「何せ施工主が伯爵様だからねぇ〜。どこぞのギルドみたいにケチったりしないのさ」
「まあ、ギルド主導だったら掘っ立て小屋だったかもしれないですからねぇ」
その予想をあながち否定出来ないところが何か怖いな。正直、伯爵様主導になって良かったよ。
この管理棟一つでこれからスライム牧場で働く職員のモチベーションも上がっていくはずだ。
「課長はぁ〜この管理棟にぃ〜引っ越すんですかぁ〜?」
と、サリナさんが聞いてくる。
「何で俺がダンジョンで生活しなきゃならないの?ここは仕事場だよ。泊まりはあるけどここに住むってのは無いの。それにここの課長は俺じゃなくて別の人がなるんだよ」
「え!?課長、クビになっちゃうんですかぁ?」
「クビじゃないよ。元々俺は『雇われ』だもの。契約期間が終わるだけだよ」
そうなのだ。俺の契約期間も残すところあと一ヶ月足らず。
その間に次の課長さんと仕事の引継ぎをしたり、スライムゼリー回収の企画書を提出したりと結構忙しいのだ。
「ええ〜!課長、逃げるんですかぁ〜?」
「逃げるって人聞き悪いな。最初からそういう契約だったの。次いでに言うけど、俺の契約期間が終わる前までには、君たちも新人さんを教育して、この牧場を稼働状態に持っていかないといけないんだからね」
スケジュール的にかなりキツいんだよ。と、二人に発破をかける。
そんなやりとりをしていると、これも出来立ての道を通って総勢30人ほどの集団がこちらに向かってきた。
「ほら、新人さん達のご到着だ」
彼らはこれからこの管理棟で働く職員と雇われ冒険者の一団だ。それと魔導ボイラーの試運転をする為に来た、大工のハンナさんと職人さん達が数名。そんな中に何故かクララ様もいた。
「お久しぶりです、ユウキさん。ようやく完成しましたわね」
「ありがとうございます。これもひとえに伯爵様おかげです。しかし…クララ様がなぜこの様な所に?」
「完成のお祝いというのもありますが、この事業の成功を確実にする為の権威付けというのもありますわ」
クララ様がにこやかにそう答える。
「権威付けですか?」
「はい、ユウキさん達がこの牧場を始めた時には、この仕事が馬鹿にされていたと話に聞いています。ですが、これからはこの仕事が名誉ある仕事として世間に認知さてれていなかいといけないと思ったのです。この牧場は左遷先であってはならないのです」
「その為の権威付けですか…」
「それだけこの事業に我々伯爵家が力を注いでいるという事です」
クララ様の話によると、職員の選抜にもクララ様直々に面接をして各部署から優秀な人材を揃えたという事だ。俺達の時のような適当に選んだくじ運の悪い連中の集まりではない。
「クラリベル様、皆に何か一言をお願いします」
と、新人さん達のまとめ役だろう人がクララ様を呼びに来た。これから管理棟の落成式が始まるのだろう。
「それでは、皆に権威付けをして来ますので、失礼いたします」
そう言ってクララ様は集まっている新人さん達に激励の言葉をかけに行った。
「主人が代われば、扱いも変わるんですねぇ」
ボソっとノーベルくんがつぶやく。
「それが現実ってモノだよ。だけど、優秀な人間=仕事が出来るってならないのがこの手の生き物を扱う仕事だろ?それを一番知ってるのはノーベルくん、君じゃないか」
「…そうでした。マニュアル通りに行かないのがこの仕事でしたね」
「これからあの新人さん達を使える人間にするのは、ノーベールくんとサリナさんの仕事だよ」
「課長…、そう言って都合良く面倒な仕事を僕たちだけに丸投げしないでくださいね」
……ちっ!バレてたか。流石はノーベルくんだ、俺の性格を理解している。
「丸投げなんてしちゃったら、呪っちゃいますよぉ〜」
サリナさん、それだけは御勘弁ください。丸投げなんてしませんから。
そうやって、俺達がふざけ合っている内に落成式は粛々と進み、最後のイベント、魔導ボイラーの火入れ式に移っていった。
ボイラー技師がコックやらレバーやらを操作して準備をする。
そしてOKの合図が出され、「点火!!」の掛け声と同時にクララ様がボイラーの起動ボタンを押して、落成式が恙無く終了した。
「それでは、これからここで働いていくスタッフの交流を兼ねて立食型式ではありますが、パーティーに移りたいと思います。皆さん管理棟の中にどうぞ」
式を取り仕切っているまとめ役さんの声と共に皆が管理棟に吸い込まれるように入っていく。
「やったぁ〜ご飯だ!ご飯だぁ〜」
サリナさんが飛び跳ねながら管理棟に突入していく。
「おおーー!やっぱ、トップがお金持ちだとハンパないですねぇ〜」
と、ノーベルくんもホクホク顔だ。
ホント、この二人は『タダ飯』が好きだね〜
俺も嫌いじゃないんだけどぉ〜




