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第104話・アドルさん、故郷へ錦を飾る


好景気に湧くヤドラムの街、冬場だというのに街はかなりの賑わいをみせている。

しかも、その効果は周辺地域にも波及していき、商人達の荷馬車がひっきりなしに街道を行きかっていた。


「いやぁ〜、壮観だねぇ〜」


スライム牧場&学校建設が始まって早一ヶ月、その日の俺はのんびりと午後のひと時を行きつけの喫茶店でコーヒーを楽しみつつ、窓の外を行き交う人々を眺めていた。


「まさか、ユウキさんの実験がこんな事になるなんて思ってもいませんでした」


そう答えたのは受付嬢のロールさん。今日はタイミングよく一緒にランチになったんだけど…。


「ホントですよねぇ。ユウキくんのスライム牧場が今や鳴り物入りで実験都市計画になっちゃうんだもの」


「まさか、国王陛下の勅令が下されるなんてねぇ」


「まぁ、そのおかげで我々ギルドの職員は寝る間も惜しんで働かないといけなくなってしっまたんですがねぇ」


マリアさん、ルキアさん、アドルさんがそう続けてくる。

アドルさんはいつもお世話になってるから良いとして、何でマリアさんとルキアさんがここに座ってるのかな?

しかも、食後に頼んだデザートの支払いが全部俺の伝票に付いてるのはなぜ?


「イイじゃない。アンタ最近儲けてるって聞いてるわよ」


「俺はルキアさんと達と違って薄給でギルドにコキ使われてるんですよ。儲かってるはずないじゃないですか」


「そうなの?最近、ガッツリ仕事入れてるって話聞いたけど…」


「そりゃ、この好景気で仕事が増えてるからガンバっていますけど、儲けの半分はアサイ村の仕送りに回してるんですぅ」


「流石、出稼ぎ冒険者の鏡!!ユウキ、偉い!!」


そう言ってルキアさんが囃し立てる。


「おだてて奢らせようったって、ダメですからねぇ」


「イイのかなぁ?そんな事言って…」


そう言いながら、ルキアさんが俺の耳を引っ張ってくる。

イタ!痛いですってばぁ〜〜〜。

そして、ゴニョゴニョと耳打ちしてきた。


「知ってるわよぉ。アンタここのところ、やたらと魔石を買い込んでるらしいじゃないの?また、何か企んでるんでしょ?ユーノに言いつけるわよ」


ちょっと!それは勘弁して下さいよ!今回の事がバレたら怒られるどころじゃなくなっちゃいますって!!


「クっ………。わかりました…奢りゃイイんでしょ奢りゃ〜」


「やったぁ〜ゴチになります!!」


ルキアさんが満面の笑みでデザートに頬張る。

もっとゆっくりと食べて下さいよ。こっちの世界じゃ甘味はそこそこ良い値段するんですからねぇ。


「あら〜?ゴチはルキアさんだけですかぁ?」


って、マリアさんが上目遣いでコッチを見てくる。

あぁ〜…こりゃあマリアさんも知ってるパターンだわ。


「もう…、俺が全部支払いますから皆さん好きなの注文して下さい…」


「わぁ〜ユウキくん、ありがとう〜」


「良いんですか?ごちそうさまですぅ」


「悪いね、妻の誕生日が近くて今月ちょっとピンチだったんだ。助かるよ」


あぁもう、エライ散財だ…。

てか、アドルさんて結婚してたのね。今更ながらビックリしたわ。


「まあ、皆さんにはいろいろとお世話になってますからね。そのお礼って事で」


これは事実だ。この人たちのお蔭で俺はかなり助かっている。

だからと言って、デザートを追加するのはどうかと思うよ!ルキアさん!!


「そんな事より、このお祭り騒ぎみたいな状態はいつまで続くのかなぁ?」


羽の生えた銀貨が飛んでいくのを想像して涙に暮れる俺を無視してルキアさんが呟いた。


「そうだねぇ。あと一ヶ月ほどでダンジョンの物件は完成する予定だから夏になる前には落ち着くと思うよ」


と、アドルさんが答える。


「でも、アサイ村の方はしばらく時間が掛かるから好景気は一年くらいって感じかな?その後はスライム牧場の成果次第だと思うな」


「春にはスライム牧場が本格稼働しますからねぇ。せめて秋になる前にはスライムゼリー回収の具体案を出さないと今後がキツくなりますねぇ」


「そんな風に不安な事を言ってるけど、ユウキくんは何かアイデアがあるんじゃないの?」


流石はアドルさん、わかってらっしゃる。


「ま、無くは無いですけどね。早めに企画書にして提出しますよ」


「企画書の提出はトラス管理部長にお願いね。僕は夏ごろには異動になっちゃうから…」


「え?人事異動ですか?」


「うん。アサイ村にギルドの出張所が出来るんでね。内々で辞令が出たんだよ」


アドルさんは夏には出張所の所長として故郷のアサイ村に戻ってくる事が決定してるようだ。


「おお!所長さんですか。出世ですね。おめでとうございます」


「ありがとう。これもユウキくんが学校計画を進めてくれたおかげだよ」


「いえいえ、俺は村で勉強させてもらっただけですから」


そうは言ってもねぇ〜と、アドルさんは言うが所長に選ばれたのはアドルさんの努力の結果だと俺は思っている。

アドルさんが優秀な人だからこその人選のはずだ。俺自身は何もやっていない。運良くミーシャ婆さんに拾われただけだ。


アドルさんは努力の結果として故郷へ錦を飾る事が出来たんだと思う。

俺はそのおこぼれに預かっているんだから、俺の方が感謝しないとね。


アサイ村に戻ったら、いろいろとガンバらなきゃなぁ〜。


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