全力の魔法
魔法ギルド参加して、最初の仕事が課せられた。
俺達の最初の仕事は凄く単純で分かりやすい物だった。
「最初の仕事が村に来ている魔物の迎撃なんて、災難だね」
「いやいや、むしろ嬉しいさ」
俺としては、こんな単純な仕事が最初の物だと分かって、非常に喜ばしい。
なんせ、自分が考えた魔法を盛大に放つ事が出来るんだから。
始めてやることだから、どうなるかは分からないが、やってみないと分からないからな。
「ふはは、我が炎の堕天使の力をこんなにも早く披露できるとは思わなかったぞ!」
超火力の炎魔法を扱えると分かって、シャナの方もかなりテンションが高くなっている。
ここに来る前は小さな炎の玉しか出せなかったのが、こっちに来たら馬鹿でかいのが出せるからな。
そりゃあ、中二病からしてみれば、感激だろう。
「いやぁ、2人からもの凄い覇気を感じるよ、これは、凄そうだ」
「ようし、派手に暴れてみるか!」
「うむ! 我が好敵手よ、どちらが多く倒せるか勝負だ!」
「良いぞ? 面白い! 乗ってやる!」
俺とシャナは競争することにして、一気に魔物の群れに近寄った。
そして、俺は魔物が俺の射程内にまで入ってくると、速攻で魔法を発動させた。
「確か、俺が考えた魔法はこうだ!」
そして、自分が考えた魔法をぶっ放してみた。
すると、俺の目の前で強力な爆発が連続して発動して、魔物を盛大に吹き飛ばした!
「しゃぁ! 成功だ!」
俺が考えた魔法は、自分が接触していない所の魔力を大爆発させる魔法だ。
遠隔操作系の魔法だから、結構集中力がいるが、成功した場合の範囲は予想以上だった。
これも豊潤な魔力のお陰なんだろう。
「な、なんと! 流石は我が好敵手! だか、我も負けぬぞ!
力無き魔物共よ! 我が煉獄の炎に焼かれて、永久の眠りに着くがいい!」
シャナはそう叫ぶと、こっちに来てすぐの魔法よりも規模が大きい炎の魔法を放った。
そして、目の前の魔物達を消滅させながら、その炎の巨大な玉はゆっくりと進んでいく。
まさか、シャナがあんな規模の魔法を放てるとは思わなかった。
「や、やったぁ! 理想的なの出来た! 兄ちゃん! 凄いでしょ!?」
「あぁ、確かにな」
シャナは理想的な魔法を放てたのがよほど嬉しかったのか、キャラを忘れて大喜びしている。
しかし、あれだな、ゆっくりと魔物を消滅させつつ、大きくなっていく火の玉
これ、魔物から見てみたら、絶対に絶望的な状況だろう。
「ふははぁぁ! 我が煉獄の炎の力! 見たかぁ!」
そして、ある程度の大きさになって、ゆっくりと小さくなり始め、最後には消滅。
どうやらそれもシャナの理想的な形だったようで、シャナは大喜びしている。
ゆっくりと魔物を呑み込んで大きくなり、最後にはゆっくりと小さくなり消滅する魔法。
シャナの奴、とんでもない魔法を使ったな、俺も負けちゃいられない。
「俺もやるぞ!」
俺は今度は自分の近くの空気を瞬間で凍らせて、相手の方に飛ばした。
そして、その氷のつぶてが相手に当ると、そこから更につぶてを大量に出し飛んでいく。
この魔法はそれを繰り返しネズミ算式に増えていく魔法だ。
最初は地味なんだけど、数が多い相手だと最終的に恐ろしい殲滅力を誇ると思う。
それに、あまり魔力も消費しないしな。
「我が好敵手よ、随分と地味な物を」
「まぁ、見てろ、その内この魔法の怖さが分かる」
そして、そのつぶての連鎖反応は俺の狙い通りに起こり、周囲の魔物を貫いていった。
更につぶての数も増えて、増えて、ドンドンと処理できそうに無いほどに増え始めた。
「な、なんだこの数は!」
「よしよし、上手くいてってるな」
そして、増え続けるつぶては、魔物の群れの殆どを壊滅させて、消滅した。
見た目は地味だが、確実に相手を仕留める魔法、やっぱり数が多いと高い殲滅力を誇るな。
「・・・え? あの、魔物の群れはどうなったの?」
「遅いぞ、もう殲滅済みだ、まぁ、残りは残党程度だな」
「あ、あんな数をこの短期間に? 怖いんだけど?」
「単体で弱いんだ、苦戦する理由は特にないよ」
「ふ、我が覇王の力と好敵手の絶王の力の前では、あの程度の魔物、道ばたに転がっている石同然だ」
「それは言いすぎだ」
「・・・と、とにかく君達が凄いのはよく分かったよ、後は休んでてよ、残党は私達が倒すから」
「あぁ、分かった」
「ふ、しくじるでないぞ」
さてと、これで俺の魔法の威力が良く分かったな、やっぱり魔力が豊潤だと色々出来る。
「我が好敵手よ、やはり強いな」
「お前もな、全く随分と強くなる物だ」
「勿論だ、我は炎の堕天使、強いのは当然なのだ」
・・・あぁ、そう言えば、シャナは節約が苦手だったよな。
だから、魔力が枯渇していると、あまり高火力の魔法は出せない。
でも、魔力が豊潤なこの世界なら、節約無しの魔法の方が火力が出るのか。
だからシャナはあんなに強くなったって訳か、まさか苦手が武器になるなんてな。
「苦手を克服しなくて良かったな」
「我に苦手な物など無い、ただ、今までは世界が我に追いつけなかっただけなのだ!」
シャナは中二キャラになると、妙に強気な発言をするよな。
でも、確かにそうなのかも知れない、シャナは魔力が枯渇した世界に適応しようとしなかった。
だから、魔力が豊潤なこの世界ではあんな魔法を放てた。
ある意味では、世界がこいつに追いつけなかったのかも知れないな。