表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

異世界から異世界へ

最近、この世界の魔力枯渇の問題がかなり深刻化してきている。

俺達はどうも魔法という物に頼りすぎたようだ。

魔法の高等科に伴い、空間にある魔力の生産が追いついていないんだろう。


「我が好敵手よ、何だ? また黄昏れて、もしや、日の消滅を恐れておるのか?」

「シャナ、いきなり中二病全開で話しかけてくるな」


妹のシャナは、一年ほど前から、何故か激しい中二病に目覚めてしまった。

そのせいで、良く振り回されている。


「妾は炎の堕天使、シャナ・ミルエル・ラリファース、シャナではないわ!」

「うるさいな、あまり騒ぐな」

「貴様の心を、我が覇王眼が見抜けぬと思っておるのか?」


シャナはいつも髪に隠れている右目の自称覇王眼を出し、俺を見てきた。

そもそも、このオッドアイは遺伝した物だ、だから、俺もオッドアイではある。

それを、覇王眼なんて・・・良く言うぜ。


「く、こ、心が読めぬ、やはり、我と覇王眼の双極に貴様の絶王眼を持つだけはある」

「絶王眼って、ただのオッドアイだろ? 昔からじゃないか」

「ふはは、さよう、だからこそ、我とお主は双極にあるのだ!」


はぁ、変な風に遺伝してしまったな、なんで俺の目は左が赤、右が青

シャナは左が青で右が赤なんだよ、同じだったらこんな面倒なことは・・・起こりそうだよな。

せめてオッドアイとかじゃ無ければな・・・


「さぁ、我が好敵手よ! 戦おうではないか! ゆくぞ! 我が煉獄の炎を受けるが良い!」

「室内だぞ? まぁ、別に良いんだけど」

「その言葉! 後悔するぞ! ゆけ! 煉獄の炎よ!」


そう言うと、シャナは本当に炎の魔法を俺の方に放ってきたが

大した火力は無い、ちょっと小さい火の玉が飛んでくるだけだ。

シャナに才能が無いからなのか、それとも魔力枯渇が理由なのか。


「シャン! シャナ! ご飯よ!」

「む、むぅ! 食事だと・・・ふ、ふむ、戦いに興じるよりも、食事の方が良いだろう!」


シャナは料理が出来たと分かると、喜び始めた。

言葉ではあまり喜んでいるのを表わしてはいないが、表情は隠せていない。

やっぱり、そこは年相応なんだろう、まぁ、小学生で中二病に目覚めるのはどうかと思うが。

いや、まぁ、学校では結構良い影響を与えているんだよな、不思議なことに。


「兄ちゃ、あ、わ、我が好敵手よ! 共に食事を取ろうではないか!」

「あぁ、そのつもりだよ」


俺はシャナに言われて、立ち上がろうとした、その時、足下が突如光り始めた。


「な、何だぁ!?」

「え? 兄ちゃん! なにそれ!」

「分かるかぁ!」


俺は足下からゆっくりと姿が消え始めた。

これ、何だよ! どうなってるんだよ!


「あぁ、兄ちゃん! 待ってってばぁ!」


それに気が付き、シャナが急いで俺に飛びついてきた。

すると、シャナもその光に一緒に包まれてしまった。


「うわぁぁ!」


俺とシャナはその光に完全に包まれてしまった。

そして、その光が消え始め、目の前が見えるようになったとき、俺達は驚愕した。


「え? え? なにこれ!? 家は!?」

「知るかぁ! 何でこんな平原に!?」


目の前に広がる光景は、非常に広い草原だった。

周りには建物もない、人も居ない! こんな場所があるのか!?


「何なの!? えっと、転移魔法って言う奴!?」

「いや、そんなわけ無い、転移魔法なんて大規模魔法を使う奴は居ないはずだ

 そもそも、魔力が枯渇しているのに、こんな大規模魔法を使えるはずない!」

「じゃあ、どうして!?」


俺達は今の状況に驚愕しすぎて、思考が追いついていない。


「がぁぁ!」

「へわぁ!?」


そして、その思考の中で、今度は魔物という絶滅したはずの化け物が出てきた。


「なに!? この変な生き物!?」

「ま、魔物だ! 絶滅したんじゃないのかよ!?」

「ま、魔物!? え? 見たことないよぉ!」

「ぐがぁぁ!」


俺達はその魔物に完全に包囲されてしまっている!

確か魔物はかなり獰猛なはず、もう戦うしかない!


「クソ! シャナ! 俺が何とか守る!」

「私だって戦えるよ!」


そう言うと、シャナは魔法を放つ体勢を取った。

あんな小さな炎の玉でこいつらを倒せるわけがない!


「シャナ! お前じゃ無理だろ!」

「えぇい! 我が煉獄の炎を受けろぉ!」


シャナがそう叫ぶと、シャナの手元に馬鹿でかい炎の玉が出てきた。

そして、その炎の玉が射出され、目の前の魔物が焼けていく!


「な!」

「え! えぇぇ!?」


馬鹿な、小さな炎の玉程度しか出せなかったシャナが、あんな馬鹿でかい玉を!?

そんな、あり得ない!? いきなりこんなに急成長するわけがない!


「がぁぁ!」


俺が悩んでいると、目の前の魔物が俺の方に飛びかかってきた。


「クソ! やってやる! 凍り付け!」


俺はその魔物に向って氷の魔法を放った。


「な!」


すると、俺の目の前にいた魔物達が一斉に凍り付き、バラバラになった。

お、おかしい・・・ここまで氷の魔法は一瞬で相手を凍らせるはずがない!


「さ、流石兄ちゃん、怖いや・・・」

「お、お前もな・・・何だよ、あの炎の玉は」

「わ、分からないんだ・・・何だか大きいのが出来て・・・」


やっぱりシャナにもあの魔法はよく分かっていなかったようだ。

そうだよな、もしも分かっていたらあんな大きな声で叫んだりはしないはずだ・・・

それにしても、どうなってるんだよ・・・俺達の魔法の威力が明らかに上昇した。

俺達は予想外の出来事が多すぎて、本当に思考が停止しそうになった。

魔力が枯渇した世界で・・・あんな大規模な魔法を撃てるとは思えない。

でも、現にあんな大規模な魔法を放つことが出来た・・・もう、訳分からん。


「・・・私、状況がさっぱり分からない・・・」

「お、俺もだ・・・こんな馬鹿な事が・・・」

「は! も、もしかしたら! 炎の堕天使の力に完全に目覚めたのかも!」


シャナが自分の世界に逃げだした、でも、そのお陰で、何だか俺は少しだけ落ち着いてきた。

やっぱり、シャナはシャナだな、こいつは俺が知っている妹だ。


「はぁ、そんなわけ無いだろ?」

「ふはは! 我はシャナ・ミルエル・ラリフォース! 煉獄の炎を操る堕天使だ!」


シャナが自分の顔に手を当て、高らかにそう宣言した。

そして、その言葉は偶然に目の前にいた女の子に聞かれた。


「れ、煉獄の炎を操る堕天使だって!? くそう! この化け物め! 私が退治しないと!」


その女の子は腰に携えていた剣を抜き去り、そう言い、シャナに接近してきた。


「え? 危ない!」


そして、シャナに接近すると、その剣でシャナに斬りかかった。

シャナはそれにギリギリで気が付き、何とか後ろに下がったが、バランスを崩して転けた。


「痛い・・・」

「堕天使! 覚悟!」

「わぁぁ!」

「あ、あれ? か、剣が・・・う、動かない・・・」


俺は木の魔法を使い、地面から生やしたツタでその剣を止めた。


「妹なんだ、手を出さないでくれ」

「に、兄ちゃん!」

「くぅ、お、お前も堕天使の仲間だなぁ!」

「・・・え? お前、信じてるの?」

「自分で言ってるんだ! 本当だろう!」


・・・あぁ、そうかそうか、この子は馬鹿なんだな。

それとも、純粋とでも行った方が良いか?


「・・・はぁ、あのな、人が言うことをすぐに鵜呑みにするな

 そいつの状況を見てみろ、堕天使様があんなへこたれてるわけなだろ?」

「わ、我は炎の堕天使! こ、こんなんでへこたれてなどぉ!」


シャナは必死に立とうとしているが、斬り付けられた恐怖でか、立ち上がれずにいた。

それでも、口では強気に振る舞っているんだから驚きだ。


「た、確かに・・・じゃあ、この子は普通の子なのか」

「あぁ、そうだ、普通の女の子だ、ただ、変なところがあるけど」

「変じゃない!」

「わ、分かった、もう斬りかからない、だから、剣を離してくれ」

「あぁ、分かった」


俺は剣に巻き付けていた植物を戻した。


「わ、悪かった、謝る、それで、あなたは魔法使いなんのだな」

「あぁ、一応そうなるな、因みにそこの女の子もそうだ」

「魔法使いは非常に重宝されているんだ、私に付いてきてくれ、魔法ギルドって場所に連れていく」

「魔法使いが重宝されてる? 何でだ?」

「魔法使いは数が少ないんだ、ほんの数人」

「す、数人だと!? そんな馬鹿な!?」


魔法使いは腐るほどにいるはずだ! 殆どの人間が魔法を使える!

なのに、数人だと!? あり得ないぞ、そんな事!


「驚くとこか? 魔法使いは選ばれた物しかなれない」

「・・・そんな馬鹿な・・・」


更に状況が分からなくなってきた・・・謎の光、魔物、異常な威力の魔法

建物が全くない平原、その上魔法使いが貴重だという発言・・・

少し嫌な予感がしてきた、でも、情報が足りない。


「・・・じゃあ、案内してくれ」

「あぁ、そこの女の子も連れて行かないと」

「大丈夫だ、俺が背負っていく」

「うぅ、何て無様な姿だぁ・・・すまぬ、我が好敵手よ・・・」


俺は中二全開のシャナを背負って、その剣士に付いていくことにした。

もう、こうなると、その魔法ギルドって場所で情報を集めるしかない。

そうすれば、ここが何処なのか、分かるはずだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ