平凡が目標です
こちらの短編を、元に、連載します。よろしくお願いします!!
わたしのことを知ってる人達、たとえば、クラスメイト。そんな子達に、こう質問する。
“花奈のこと、どう思ってる?”
その言葉に、10人中10人が
“あー、あの平凡な子ね”
そう、言ってほしい。
そうやって、わたしは人の中に埋もれて生きて行きたい。
それがわたしの目標。
目標であり、絶対に守りたいこと。
だから、わたしは毎日そんなふうに言われるように努力している。
だって、わたしには、記憶があるから。
乙女ゲーム「恋色に咲く」通称、恋咲。
そこでは、ヒロインが悪役令嬢の脅し、イジメにも耐えて、イケメンたちと結ばれる、っていう、まぁ、王道物語。
それが舞台となる世界に、わたしは転生した。
わたしはその乙女ゲームでいう、悪役に転生していた。幼い頃、鏡を見て、銀色に輝く髪と赤になっている瞳で思い出したのだ。
もちろん、その事を知ったからには、その愛されるヒロインのための舞台である恋色学園には行きたくなかった。けれど、恋色学園は一定の年齢になった子供は必ず行かなければならない。それを免れることが出来るのは、他国への留学しかない。
けれど、わたしは前世は病弱だった。生まれも育ちも病院。だから外へは行ったことがなく、怖かった。どんなことがあるのかわからないから。
人と会うのもいやなのに。留学なんて。論外。ならば、恋色学園に行くしかない。
ゲームの中のわたしは、成績が良く、かわいいヒロインに嫉妬して色々な嫌がらせをしていた。
それをしなければいいんだ。
そう決めた。そして、悪役転生ものも読んでいたわたしは、ストーリーと違う動きをすると、攻略者たちに目をつけられる、と思ったので、平凡になる。
そう決めた。目標!
そうして、入学式。
……どうしてこうなった。
わたしは白目を向いて倒れそうになるのを必死でこらえる。
わたし偉い誰か褒めて。
目の前にはふわふわなピンク色の髪の毛。
「花奈さん!会いたかった!」
そう言いながらわたしにタックルをかましてきたこのピンク色の少女。
そう。恋咲のヒロイン。東 里桜
ぎゅっと。もう離さないと言うかのごとく力いっぱいわたしを抱きしめる。
「いや、あの、」
「あぁ!声も可愛い!花奈さん!もうほんと大好き!」
……倒れてもいいですか。
そんな感じで始まったこの学園生活。
あの、わたし、平凡になりたいんですが!