同期加入の三人(レンタル復帰含む・年齢差あり)
江野誠:FFのキャプテン。ユース出身で、逢坂の三つ上の先輩。赤間の同期で、現在は恋人。
紀藤悠一:FF所属。大卒入団。神前と同い年で、親友。既婚。
一八一センチ、七八キロ、体脂肪率は六から七パーセント。
チーム一を誇るトレーニング量で培われた、彫刻のような肉体──
江野誠はそれを、シャワー後もすぐに白いインナーシャツの下に隠してしまう。
「おい」
いずこからか、声がした。
紀藤のものだ、と気づいて振り返れば、メガネの向こうからあきれた目が自分を見ている。
「逢坂。ひとの性癖に口出す気はねーけど、せめて本人が気づかないていどに、遠慮して見てやれ」
「性欲込みで見てるなら、こんなふうにガン見したりしませんよ」
「……まあそうだろうけど。どっちにしろ、じろじろ見るなって言えないやつをじろじろ見るのは感心しない」
当の江野誠は、素知らぬふりで下着を穿いている。
「すみません、誠さん。相変わらず、芸術的なまでにいい体をしているのに、ちらとも見せびらかさないひとだなーとおもって見てました」
「見……せびらかすって、誰にだ?」
「ファンのひととか?」
「江野のヌードを見たいファンなんているか? いたら、ただのマニアだぞ」
紀藤のことばに、江野が物言いたげな顔をする。
逢坂はほほえんだ。
「俺のヌードなんかより、はるかに見る価値があるとおもいますけど?」
「却下。江野のお色気を期待するようなファンはいらねーの。というか、こいつにお色気担なんかさせたら殺される……」
「直さんにですか?」
「ん? あー、そう。あいつは、江野には、こいつの献身的なプレーを評価するファンに愛されて欲しいんだと」
「直さんらしいですね」
そう応じたものの、だからといって神前が親友である紀藤を殺す──それほど怒るところは想像ができない。
逢坂は、ちら、と江野の顔を見た。
怒るとしたら江野自身だろう。
他に紀藤が恐れるとしたら、密かに江野を買っているという、美しい奥さんだろうか、とおもう。
「ところでおまえ、神前を待ってるのか? あいつ、取材だから当分戻って来ないぞ?」
「紀藤さんは、直さんを待ってるんですか?」
「前に先帰ってたら、二週間もぶちぶち文句言われたからな。うるせーから待ってる」
「だから、そんなふうに甘やかすなって言ってんでしょうが。女子高生じゃあるまいし、いちいち待っててやる方が異常だ」
怒ったような口調で江野が言った。
紀藤は手にした雑誌で、パタ、と自分を扇ぐ。
「まあ、そうなんだけどな。女子高生ならともかく、誰があんなのの甘えたにつき合ってやるんだよ」
「……そんな物好き、あんた以外にいるはずがない」