逢坂の愛と本気
「──なるべくね、早く、いっしょに暮らしたいとおもってるの」
『のろけ?』
「ちがう。わたしのところには狭いシングルベッドしかないのに、いっしょに寝たいって言って毎晩のようにやってくるから」
『シングルベッドに、ふたりで寝るの?』
「逢坂くんは、床でもいいって言うんだけど、固い床に寝るのと、狭いベッド、どっちが体に負担だとおもう?」
『……聞きたいの?』
「うん……」
『いちばん体に負担なのは、礼といっしょにいたいのに、ひとりで眠らされることだよ。礼を上に乗っけて眠るんだって、本人がしあわせなら、べつに負担になんてならないとおもうけど?』
「わ、わたし、体重の軽い女の子じゃないのよ?」
『礼は軽いよ。まあどうせ、上に乗っかってなんて寝ないんだろ? 毎晩やったって、あいつの体の方には負担なんてないんだし、気にすることないよ』
「優児……!」
『礼が毎晩は負担なら、そう言えばいいじゃない』
笑いまじりに赤間が言う。
「た、たしかにすこし困ってるけど……彼がしたがるからじゃないの。しなくていいから、いっしょに寝させてって言うから、困るのよ」
『……ああ。したくないから今日は帰って、って追い返せないもんね』
「あんな求め方はされたことがないから、ほんとうはしたいのか、したくはないのか、わたしから求めるのを待ってるのか、わからない」
『そりゃ、礼に求められたら、よろこんでするんじゃないの?』
「それを期待してるってこと?」
『そりゃ、どっかで期待はしてるだろ。でも、あいつがいっしょに寝るだけでいいって言うなら、それだけでいいと本気でおもってるんだとおもうけど?』
「…………体温とにおいを感じていたい、髪に触れてないとさみしくて眠れない、って。そんなこと、本気で言う男なんている?」
『礼は、あいつをふつうの男だとおもってるの?』
「──ふつうじゃないって言いたいの?」
『ちなみに。俺もマコに、それに近いことはおもってるけど、口に出しては言わないかな。マコは、俺に対しておなじようにおもってないことはわかってるからね。言うと、俺のためにつき合わせることになっちゃう』
はっ、と礼は手にした携帯電話を見つめた。
「わたしもそうおもってる、から?」
『あいつは、礼が自分の体の心配をしてくれてることは百も承知だとおもうよ。それでもいっしょに眠りたい、っておもってるなら、直球で言うか、脅すかしかないんじゃない?』
「……脅す、ようなひとじゃないわ」
『礼は、あいつに経験ないほど求められるのはうれしいんだろ? 俺は全然だったし、男は大抵、自分勝手な生きものだから。礼のやさしさにつけ上がることはあっても、愛を注がれるのは、未経験──』
「うん……」
赤間の言うとおりだ。
逢坂の愛を感じるたび、震えるほどうれしいのに、どこかで信じられなくなってくる。
これはほんとうに、自分が受けていていいものなのか、と。




