髪フェチ
「下着すがたとか、そういうのを見られるのが嫌だ、ってことですか?」
「恥ずかしいの……」
「恥ずかしがっている礼さんの顔は、とびっきり色っぽいんだけどな」
「逢坂くん……っ」
「はあ、まあ、見るなって言うなら、見ませんけど。目をつむってたらいいんですか?」
「──シャワーを、浴びてきてもいい?」
「ああ。なるほど。いいですよ。でも、髪は濡らさないでもらえますか。この感触、すごく好きなんです」
さら、と逢坂の指が髪をすくい上げる。
指に髪を絡め、逢坂はうっとりとほほえんだ。
「俺、今まで知らなかったけど、髪フェチみたいです。礼さんの髪を撫でてるだけで興奮してくるなんて、変ですよね?」
「えっ……?」
「まだ、見た目じゃわからないかな。触ってみます?」
礼の手をにぎったままの逢坂が、礼が視線を向けた先に導こうとする。
抗わずにいたら、ほんとうに、ジーンズの前立てのそばに押しつけられた。
カアッと頬が熱くなる。
「どうして礼さんが赤くなるんですか。恥ずかしいのは俺ですよ?」
「……何か、期待してるの?」
「それはまあ、いろいろとね。でも、焦ってないので、安心してください。これから、ずっと、ずっと、こうして俺と触れ合ってくれるんでしょう?」
「逃げ出すかも……」
「追いかけます。もう子どもじゃないので、見失ったりしませんよ」
「逢坂くんが」
「ああ。俺がですか? 礼さんに冷たくされたら、そんなこともあるかなー。できれば、昨日の夜みたいに、ぎゅってしがみついてて欲しいですけどね。それとも、逃げるのを追うのが好みですか?」
礼は、首を振った。
逢坂の指から、するりと髪の束がこぼれ落ちる。
「逃げたかったら、逃げて。ぜったいに、追いかけない。約束する。好きな間だけでいいの。それ以上は求めないから、安心して──」
「礼さん」
びくっ、と肩が震えた。
それに気づいた逢坂が、両手をそっと肩に置く。
「そう言わないと、赤間さんのそばにはいられなかったのかもしれないですけど」
「…………」
「俺は、逃げても追いかけるって言われた方がうれしいです。心配しなくても、追いかけられて迷惑なひとに、こんなこと言ったりしません」
「でも……」
「こんなこと、自分で言いたくないですけど。俺、追われるのには慣れてるんです。というか、むしろ、うんざりするくらい経験しているので」
そうだろう、と礼はうなずいた。
逢坂が、ふわりとほほえむ。
「だから、一生愛せる確信が持てないひととは、つき合わないって決めてたんです。このひとが追ってくれるのなら逃げるのもいいな、とかおもうくらいにいとしいひとにしか、用はない。俺、好きな相手には目の前にいてもらって抱きしめる方がいいですけど。礼さんにだったら、背中から抱きしめられたいともおもいます」
「……逢坂くん」




