「烏骨鶏?」
そして、その翌日──つまり今日には、いっしょに暮らすことを決めた。
そのためにも、逢坂は友人や先輩に、礼を恋人として紹介したい、と言った。
何と言われるのか、と恐怖に背筋が震えた。
逢坂に自分のような人間が相応しくないことなど、誰に言われるまでもなくわかっている。
なのに、逢坂はあっけらかん、と笑っていた。
『礼さんのこと、蓮は誠さんの恋人だとおもってるから、おどろくだろうなー』
ね、と笑顔で問われたら、震えなどどこかに消えてしまった。
おもわず逢坂に抱きついたら、肩を押し返された。
ダメです、と強張った顔をして。
『もうそろそろ、出かけないと練習に間に合わないので。つづきはまた、今夜、ここで。今夜も、ここに泊まっていいですか?』
『こんなに狭いベッドで、もう一晩いっしょに寝て、大丈夫?』
『くっついていれば、べつに。でも、窮屈なら、床にでも寝ますか? 俺は、礼さんといっしょなら、床だろうが何だろうが……あ。そうか、世の中には、ホテルってものもあるのか。そういうところに誘った方がいいのかなぁ』
礼は、ぶんぶんと首を振った。
どんな種類のホテルだろうが、市内に住む逢坂が行けば、一発で目的を見抜かれる。
純然たる女性ならべつに構わないだろうが、礼はそんな場所に逢坂と出入りする勇気はなかった。
それで、結局今日も、礼の暮らすワンルームへとふたりで帰ってきたのだった。
逢坂はベッドに座り、横に座る礼の体を抱き寄せ、さっきから髪を撫でている。
ぞくり、とするような愛撫の手つきだ。
「逢坂くん、あのね」
「名前で呼んでくれないと、返事しません」
「…………」
「大和って名前、嫌いですか? 呼びにくいのかな。ユージ、マコ、レイ、ナオ、レン、だもんな。紀藤さんの奥さんも、ユウって呼んでたし。何か、ちがう名前でもつけましょうか?」
「ちがう名前って……!」
おもわず、礼は吹き出した。
ネジが五、六本外れてる、とまではおもわないが、たしかに逢坂はときどき変なことを言う。
「大和って名前、かっこいいわ」
「そうでしょうか」
「かっこよくて、何だか恥ずかしいの。ごめんなさい……」
「まあいいか。理性がなくなると、呼んでくれるみたいだし。逢坂クン、よりはとっさに呼びやすいんですよね、きっと?」
にっこりと、目眩がするほど端正な顔で、笑ってみせる。
これほどにすてきな男性が、自分を抱きしめ、いとしげに髪を撫でているなど、ぜったいにおかしい。
おかしい、とおもうのに。
逢坂は、ほほえんだまま、ちゅっ、と頬にキスをくれる。
「それで、何ですか?」
「すごく、うれしかったの……」
「はい?」
「服を着てても、脱いでも、きれいだって言ってくれたでしょう?」
「ああ。はい。また見れるとおもうとどきどきするし、これからずっと見れるかとおもうと、ワクワクします」
頬が燃えるようなことを、平然と逢坂は言う。
礼は、逢坂の口を両手でふさいだ。
「だから──その間のわたしは、見ないで欲しいの」
おとなしく口をふさがれたまま、逢坂が首をかしげる。
「女物の服を脱がしていくと、男の体が出てくるのは、滑稽でしょう?」
「……うこっけい?」
わざわざ礼の手をぎゅう、とにぎって口から外しておいて、そんなことをつぶやく。




