かわいこいじめ(笑)
「ちなみに、蓮」
「うう。やっぱり、オレも飲む。そのグラス飲み干して、オレにちょうだい」
「おまえさ。もし、自分の好きな相手が彼のことを好きだったとしたら、どうする?」
「カレ?」
逢坂の手から、空になったグラスを奪いながら、羽角が首を傾げてみせる。
「赤間優児」
「ヒッ! おそろしいこと言うな! 命が惜しかったら、あのひととだけは争ったらダメ。ヘビの前のカエルの方がまだ長生きできるきー」
グラスを持つ手が震えている。
羽角は、本気で赤間優児が恐いらしい。
グラニ時代、いったいどんなひどい目に合わされたというのだろうか。
「おまえの好きな相手が、彼の想い人だ、とは言ってないだろ。彼に片思いしてるだけだとしたら?」
「…………外見と、曲者さで言えば、おまえでも手を打つ気にはなるかも?」
「──何で、俺の話にすり変わるんだ」
「おまえが訊きゆうがは、好きな相手の想い人があのひとなんだ、どうしよう……やないがか?」
くしゃり、と前髪を掻き上げながら、逢坂は羽角の持つグラスに焼酎を注いだ。
「まあ、そうだけどな。ちなみに、誰か聞きたいか?」
「興味ない。むしろ、聞いたら呪われそうやき、聞きたくない」
「呪うって、俺がか?」
「赤間さんっ!」
「おまえの中の赤間優児って、いったいどんなだ」
いつになくまずそうな顔で焼酎を一口のんで、羽角がちら、と逢坂を見た。
「前に、神前さんに聞いたがやけど……」
「直さんに? なにを?」
「オレのこと、ここでならうまいこと育つかも、って言ってグラニからレンタルさせたがは、あのひとらしい」
ぞく、ととたんに背筋が震えた。
「そ……それはこわいな、たしかに」
「それだけやないき!」
むんず、とまたしても腕を掴まれる。
「オレが前から着ちゅうTシャツ、わかる? 灰色っぽいピンクのやつ」
「ああ。何か、グラニのチームメイトからもらったとかいう、おまえの一張羅────って、まさか?」
「あれくれたの、赤間さん……」
「そうか。……でも、そこはべつに良かないか? ありがたい方だろ?」
「あ、ああ、ありがたいか、ありがたくないか、と言えば、ありがたくないき」
「どうして?」
問えば、羽角の目がまたしても涙目になった。
「あのTシャツくれたときに」
「うん?」
「オレのこと狙ってるゲイっぽいデザイナーにもらった、きもちわるくて着る気にならないしおまえにやるから外出着にしろよ、って……!」
逢坂は、無言で頭を抱えた。
黙ってあげればいいのに、と心からおもう。
羽角がおびえるのも無理はない。
「オレ、あれ着て外出するたび、実は発信機かなんかで追跡されてて、赤間さんと間違えてとっ捕まって犯されるんじゃーとかおもって、超こわかった!!」
赤間優児も赤間優児なら、羽角も羽角だ。
田舎から出てきたばかりの羽角が、都会をどんなところとおもっていたかがよくわかる。