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Imitation Star  作者: 十七夜
エピローグ―礼視点―:交際開始
39/50

逢坂大和、という男

『俺は、裸になった礼さんが、いちばんきれいだとおもいます』


この世に、そんなセリフを照れもせず言うひとがいるとはおもわなかった。

しかも、どんなに選び抜いた衣服で女性同然に装っていようが、脱いでしまえば、あきらかに男の体をしている自分に、だ。

髪を撫でながら、泣きたくなるほど甘いキスをされた。

服の上から抱きしめて、背中を撫でて、腰を撫でて、脚も撫でて。

それでも、肌に直接触れようとは、しなかった。

せつなくなるほど、長い長い抱擁と、キスを受けた。

きれいな髪ですね、と褒めてくれた。

甘く低い、なめらかな美声で。

うなじを撫でながら、首筋に這うくちびるの感触に、背筋が震えた。

おもわずその手をつかむと、きつく、指を絡められた。

舌を絡めるキスをされて。

気づけば、服の下へと、男らしい大きな手を招き入れていた。

どんなに手入れをしても、きっと女性ほどやわらかくはなれない肌。

それでも、うれしいと、囁いて。

じっくり、じっくりと、丸みのない上半身を、その手は愛撫してくれた。


──逢坂大和。


赤間優児に抱かれることに慣れていたとはいえ、面食い、などと贅沢を言う気は、みじんもなかった。

男の体でもいいと言ってくれるひとがいれば、それでいいと、何度もおもった。

それでも心に引っかかっていたのは、消えない、初恋のひと。

どうしたって、消えない。

その、夢のような愛撫の記憶も、体から消し去ることはできなかったから。

もしも、男の体でもいい、心に、消えない想いを抱えていてもいいと言ってくれるひとがいたなら──

それがどんなひとだろうと、すがりつこうとおもった。

好みなんて、関係ない。

こんな自分を受け入れてくれるひとがいるのなら、愛を返さなくては罰が当たるとおもっていた。

なのに……

礼に、男でもいい、赤間を好きで構わないと言って交際を申し込んできたのは、よりにもよって、逢坂だった。

幾万の女性の中から、ひとりを、否、好きなだけ何人でも、選べるほどいい男だ。

何の冗談かと、おもわずにはいられなかった。

からかい、弄ばれ、捨てられても、ふしぎはない。

赤間がそんな男をすすめるはずはないとおもってはいても、赤間さえ騙せるほど、悪い男なのかもとさえおもった。

それほどに、彼の好意など、礼にとってはありえなかった。

ただ、自分が初恋をしたのとそう変わらない年頃に、自分に恋をしたのだと言われたのは、ふしぎと腑に落ちた。

神前のことが好きだと聞いて、赤間が自分にすすめるわけも、腑に落ちた。

それでも、贅沢だと、わかっている。

わかっている、のに。

逢坂のまなざしに包まれていると、何もかも許されるような気がした。

醜い生きものだとわかっているのに。

それでも、逢坂がきれいだと言ってくれると、うれしかった。

うれしくてたまらずに──

ついに、衣服をすべて脱ぎ捨て、一糸まとわぬすがたをさらして、たくましい体と抱き合った。

恥ずかしいのに、うれしくて。

恥ずかしくてたまらないのに、幸福で。

見ないでと言いながら、全身の感触を隠せないほどに、すがりついた。

燃えるように熱い体の下で、溶けてしまうのではないかとおもうくらいに、熱くなって。

自分が赤間に、少しも愛されていなかったことを、思い知った。

思い知らずにはいられないほどに、愛を感じた。

それでも、一夜が明けたら、何と言われるかはわからない──

そう、おもっていたのに。



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