いちばん、きれい
「あー、そっか、赤間の元カノなんだっけ? そりゃ、逢坂を素直に褒めたくないよなー。こいつけっこう優秀だし、ルックスじゃ負けてるし、こき下ろすところといったら頭の中身くらいしかないもんな、わかる、わかる」
「へー、優児が? 嫉妬してんの? いいだろ、自分にはマコがいるんだし」
「うるさいよ、そこのふたり! あと、そっちのふたり。新居探しなら、相談に乗るから言って。どうせ、逢坂はどこでもいいって言うだろうし、俺が、逢坂とでも住みやすそうなところ、見繕っといてやる」
「優児……」
「ありがとうございます、赤間さん。お礼のキスなら俺がするので、礼さんには要求しないように」
「するか! 帰るよ、マコ」
赤間が、江野の腕を引っ掴んで、出入り口に向かう。
逢坂は、すっ、と礼の手をすくい上げた。
「俺たちも、帰りましょうか」
「うーわー、ムカつくくらい絵になるな」
「紀藤さんのご夫婦も、お似合いですよ」
「俺たちがお似合いなのは中身だけだってわかってんだよ」
クラブハウスを出たところで、背後を振り返り、礼が訊いた。
「奥さん、きれいなひとなの?」
「うん。すごく美人です。……誠さんに訊いてませんか?」
「マコに?」
「誠さんは、紀藤さんの奥さんに好意を持ってたんじゃないかとおもうんですけど。だから、礼さんを紹介されたとき、誠さんの好みってわかりやすいなー、とおもいました」
「マコの好みが美人っていうのは、優児に聞いたことがあるけれど、私はただの友だちだから。でも、それじゃ、優児が恋人なのには、おどろいたでしょう?」
「いいえ。赤間さんも、きれいなひとですから。女性的な美しさじゃないですけど、造形のきれいなひとですよね」
「……そうね。優児は、どんなでもいいから女になりたいっていつも言っていたけれど。優児は女のひとより、よっぽどきれいだとおもう」
「立ってると、見とれますもんね」
「──見とれるの?」
「ええ。……あ、いや、待ってください。そういう意味じゃなくて。きれいで、おもわず目が離せなくなるものってありませんか?」
「────スーツすがたの、逢坂くん?」
「えっ、俺? 俺ですか?」
「完璧で、隙がなくて、芸術品のようだ……って、言われない?」
頬が、熱い。
逢坂は、片手でぱたぱたと扇いだ。
「い、言われるかな? あんまり意識したことがないです。女性は大抵大いに褒めてくれるので、社交辞令みたいなかんじに聞き流しているというか」
「そうか……そうよね」
「ああ、でも、礼さんに褒められると、うれしいです。すごく」
逢坂の顔を見た礼が、くすっ、と笑う。
自分ではわからないが、さぞやうれしそうな顔をしているのだろう、と逢坂はおもった。
「あの──」
「なあに?」
「そうやって美しく装っている礼さんも、きれいです、けど」
「ありがとう?」
ちょっと小首をかしげて、礼が応じる。
「でも、俺は、……裸になった礼さんが、いちばんきれいだとおもいます」
「っっっ──!」
瞬時に朱に染まった顔で、礼が、肩をひとつぶった。
「怒っちゃいました?」
赤い耳のそばで問えば、小さく首が振られる。
「よかった」
「……逢坂くん、も」
「名前で呼んでくださいよ。ベッドの中では呼んでくれたでしょう?」
「…………逢坂、くんも」
「ちぇっ」
「裸のときが、いちばん──」
ステキ、と蚊の鳴くような声で礼が言ってくれる。
「そうですか? ありがとうございます。ぜんぶあなたのものですから、独り占めしてくださいね。──今夜も、朝まで」
ここまで読んで下さって、ありがとうございます。
逢坂×礼は、礼視点でもうちょっとだけつづきます。そこまで読んでいただけたら幸いです。




