「ネジが五、六本外れちゅう」
「何だ、おまえも気づいてたの?」
「う……ん。こんな美人で、ひかえめなひとって、いない気がして。江野さんのタイプかも、っておもったから、もしかして江野さんは気づかずにつき合ってるのかなー、とか」
「彼女、って言うから、てっきり、おまえは女性だと信じ込んでるんだとおもってたよ」
「だって──見かけが女性なのは、女性あつかいされたいがやき、そうするのが礼儀ってもんがやろ」
「羽角くん……」
「う、わ。待ってください。蓮の方がいいとか、おもわないで──」
「ふうん。羽角って案外、バカじゃないな。ほんとにそいつでいいの、礼?」
逢坂が片手を取って懇願するすがたを、赤間があきれたように横目で見る。
「というか……おまえ、ほんとうに、そのひとを好いちゅうがやなー」
「礼さんは、俺の初恋なんだ」
「えっ。今ごろ、初恋?」
「ちがう。このひとも、俺のユースの先輩なんだ。誠さんたちの同期。ジュニアユースまでここにいて、チームのエースストライカーだった」
「あー。美少年やったがか?」
「そう。きれいだった。今はもっときれいだけどな」
「はー。おまえでも、そがいな顔ができゆうがー?」
「どんな顔?」
「惚れちゅう男のだらしない顔。……あの。大和は、ネジが五、六本外れちゅう男ですけど、やさしいし、動じないし、けっこう頼りになるやつだから、くっついてたら恐いことなんか何もないとおもいます。こいつのこと、どうぞ末永く、よろしくおねがいします」
頭を下げる羽角を、逢坂はぽかんと見つめた。
礼がちら、と視線を投げた先で、赤間が笑いをかみ殺している。
「ネジが五、六本外れてる、だって」
「優児……」
「本人が礼がいいって言ってるんだし、友だちとしては、それが何よりなんじゃないの? それとも、そんな相手は認めない、俺のが美人だって、張り合われるとでもおもってた?」
「そんなことはおもってないけど──」
「逢坂がおまえをここに呼び出したのって、まず、友だちのそいつに紹介しようとおもったからだとおもうけど」
礼はうなずくと、逢坂の腕にそっと手を触れた。
視線が、逢坂から羽角へと流れる。
「ありがとう。そんなふうに言ってもらえて、すごく、うれしい」
「美人はたくさんいるけど、大和を惚れさせる美人なんて他にはおらんがやき。自信持ってくださいね」
「──ありがとう」
礼の微笑を見て満足そうにうなずいた羽角が、じゃあな、と逢坂に言ってクラブハウスからつながっている寮へと歩いて行ってしまう。




