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Imitation Star  作者: 十七夜
6:四角関係…五角関係?
32/50

見ててくれるひと

「うまいこといくかどうかは、ふたりの問題だからさ。つき合ってくれなきゃ直くんをあきらめられない、って脅せば礼としてもオーケーしやすかっただろうけど。それとこれとは別らしいから、礼は、自分のきもちだけで選べばいいよ」


赤間の視線を受けて、逢坂は天井を仰いだ。

くしゃりと、髪を掻く。


「いえ、いいです。脅すような真似はしません。せめて、何があっても守ると信じてもらえないことには、身を任せる決心なんてしてもらえないでしょうから」

「守……?」

「俺、正直なところ、男の外見のまま男を愛すのと、女性の格好をするのと、女性の体になってしまうのと、どういうふうにちがうのか、さっぱりわからないんです。他のひとがどうおもうのかも、よくわかりません。だから、そこにどんな悩みとか苦しみがあるのかも、俺には理解できないとおもいます」

「…………」

「俺に言えるのは、どうであろうと俺は気にしないし、あなたのありのままを受けとめます、ってことぐらいです。この先変わったって、べつに構いません。ああでも、どうでもいいから、というわけじゃなくて。あこがれのエースストライカーだったときのすがたとか、髪を切ってくれた手や服を選んでくれたまなざしとかが、なくなるわけじゃないってことです。あなたが、誠さんを想う赤間さんを想いつづけた事実も、消えな────アッ」


あわてて口を押さえたものの、口に出したことばは消えるはずもない。

おず、と赤間を見れば、じろ、とにらまれる。

その隣で、江野はきょとんとしていた。


「すみません……」

「知っているの、マコと優児こと?」

「え──っ」

「すみませんっ、すみません、言うつもりじゃ──」

「まあ、いいけどさ。じゃなきゃ、おまえが礼に、俺のことを好きでも構わない、っていう根拠が抜けてるんだ。どのみち、不自然におもわれる」

「そうですけど……すみません、誠さん。実は、おふたりの関係を知って、古賀さんは誠さんの恋人じゃないんだって、気がついたんです。でも、赤間さんが自分から自慢してきたとかじゃありませんから。のろけられはしましたけど」


いつになく動揺していた逢坂は、礼がくすっと笑ったことに気づかなかった。


「俺は、ええと、直さんのこともあって、赤間さんのことをかなり意識してたから、誠さんが『とくべつ』なことに気づきましたけど……ふつうはそこまで勘繰らないとおもうし、その──」

「ああ……いや、事実だし、気づいたおまえが悪いわけじゃない。それで、礼にもいい相手ができるのなら、むしろ良かったかな、とおもう」

「マコ、まだつき合うって決めたわけじゃないよ」

「そうだけど……逢坂が、礼を初恋だって言ったのは、ほんとうみたいだから」

「ゴール前の礼は、落ち着いてて、キレ者で、優秀だったからね。でもさ……どこで、誰に見られてるか、わかんないもんだよねー」


笑った赤間の向かいで、うつむいたまま、礼がぽつりとこぼす。


「…………ごめんなさい」

「え? ええ? それって──」

「あのとき……苦しさから逃げることしか、考えてなくって。見ててくれるひとがいたなんて、おもわなかったから」

「ああ、昔の話か。──気にしないでください。直さんと出会えて、プロ生活もちゃんと満喫してますから。でももし気が向いたら、いっしょにボールを蹴ってもらえると、うれしいです」


顔を上げた礼が、逢坂に向かってこくりとうなずく。

そのうつくしい顔に浮かんでいたのは、少年のような微笑だった。



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