信憑性ゼロ
「しかもこいつ、羽角とあちこち出かけて、デートだ恋人だって言われてても平気なんだろ? じゃあ、礼の方がずっと良くない? 見た目、完璧な美女なんだし、ひょっとして男かもとおもっても、誰もつっこめないよ」
「まあ、たしかに、礼と歩いてて、恋人とおもわれることは気にしても、女じゃないとおもわれてるかもとは、おもったことないな」
それでも、礼はうつむいたままだ。
逢坂は、頭を掻いた。
「俺じゃ、ダメですか? そりゃ、女性と遊んだことはありますけど。恋人がいるのに、裏切るような真似はしませんよ」
「…………」
「てかさあ。逢坂、おまえどうして、本命は直くんだって言わないの?」
「うぐ! 赤間さんっ──それを言ったら、ますます断わられるじゃないですか……っ」
江野が、ぎょっとした目で見ている。
礼も、逢坂を見ていた。
「つくづくバカだな、おまえ。自分が、男だろうと礼がいい、俺のことを好きでも構わない、って言う方がよっぽど不自然で信憑性ゼロだって気づかないわけ?」
「ぜ、ゼロ?」
「……直くんが、本命なの?」
「そうだよ。恋人にするなら礼より直くんがいいって」
「あ、赤間さんっ」
「即答だったろ、おまえ」
「即答じゃないです。──そりゃ、直さんのことは好きだし、交際を迫れば考えてくれるのかもしれないですけど。のちのち後悔されるのも、人生の汚点とおもわれるのもごめんですから」
礼が、小さなうなずきを返してくれる。
「でも、直さんがダメだからあなたにしておくとか、そういうことじゃないんです。恋人を作ることであきらめようっていうんでもありません。そりゃ、直さんと交際する難しさに比べたら、あなたとの交際の方がはるかに俺にとって楽なことは、間違いないですけど」
「…………優児が彼をすすめる理由は、わかったわ」
「そ。礼が俺のこと好きでも、ガタガタ言えないんだよ。それに、直くんでもいいって男なら、礼の体が気にならないっていうのも、当然だとおもわない?」
「そ、う……かも、しれないけど……」
「まあ、顔がいい男は信用ならないかもね。それなら、お友だちってやつから始めてみれば? べつに、つき合うことにしといても、気に入らなきゃ別れりゃいいだけだとおもうけど。一度つき合うと、別れるっていうのもそうかんたんにはいかないだろうから。──どう?」
「友人からで、構いません。それならいいですか?」
小さいが、たしかにうなずきが返ってきた。
逢坂は、おもわずこぶしをにぎる。
「やった。よかった。うれしい。俺、こんな恋愛っぽいの、初めてです」
「恋愛ぽいって何だ。まんま、恋愛だろ。礼、こいつちょっとバカなところあるからな。下手したら、直くんよりバカかもしんない」
「礼と、逢坂……か。見かけはパーフェクトだけど。考えもしなかったな。俺も、礼にはいい相手かもって気はするけど──」
江野が、あごに手をやってむずかしい顔をしている。
「あのね、マコはあれこれ考えなくていいんだよ。マコを連れてきたのは、三人だけじゃ、まるで俺が逢坂をそそのかして礼を押しつけようとしてるふうに見えるかもしんない、とおもったからってだけだし」
「そ、それは、そうかも」




