うなずけない理由
「逢坂……おまえ、モテるだろう? 礼はたしかに美人だけど、美人な女は他にいくらだっているよな?」
「ええ、まあ」
「恋人が欲しいなら、選択肢なんて掃いて捨てるほどあるだろ?」
「そうですね。その気があれば、今までだってつき合っていましたよ」
「じゃあ、何で今、礼なんだ?」
「──最近になって、誠さんの恋人じゃないとわかったから、ですかね」
「前から、礼が好きだったって言うのか?」
「ええ。俺の、初恋なんです」
答えたら、江野がむっと眉をしかめた。
ふっ、と黙っていた赤間がわらう。
「逢坂、ものすっごい、ウソくさい」
「えーと。正確に言えば、ジュニアユースにいたときの、古賀さんが、です。俺は、小五か、小六でした。もちろん、クラブの先輩で、男だってわかっていましたけど。顔だけじゃなくて、シュートフォームも見とれるくらいきれいで」
はっ、としたように礼が逢坂を見た。
「もう一年早く生まれていたら、いっしょにプレーできるのになっておもってました。……ぶっちゃけ、赤間さんとか誠さんは、当時、俺の眼中にはなかったです」
「…………だけどな、礼はもう、サッカー選手じゃないぞ」
「そうですね。プロになれたらいっしょにプレーできるかも、って夢もすぐに消えちゃいました。──でも、消えたとおもっていたあこがれのひとと、もういちど出会えてうれしかったです。しかも、誠さんの恋人じゃなかった」
礼がふるふると首を振ってうつむく。
「男が恋愛対象だと知らなくっても、俺は交際を申し込んだとおもいますけど、そのすがたでいるなら、俺が口説いてもいいんでしょう? もちろん、女性じゃなくてもいい、赤間さんを好きでもいい、という男が俺ひとりなんてうぬぼれてはいませんけど。誰かを選ぶのなら、俺を選んでくれませんか?」
「………………」
うつむいたまま、礼が首を振る。
「そりゃ、赤間さんに敵うとはおもっていませんし。誠さんにも、ちょっと敵わない気はしますけど。そこらの男になら負けないとおもいます。ええと……外見で女にちやほやされているような男は、嫌いですか? 顔以外にも、いくつか取り柄はあるとおもうので。誠さんに訊いてみてください」
「えっ──うん、逢坂は、人間性にはまったく問題はない……とおもう。礼のことを好きだっていうなら、反対する理由はないし。優児が仲介するのも、理解はできる」
「よかった。誠さんにやめとけ、って言われたら、どうしようかと」
「いや……それは言わないけど。ただ、礼がうなずけない理由も、わかる気がする」
ちら、と江野が赤間に視線を向けると、うなずきが返った。
「派手な男すぎるって言うんだろ? 逢坂といっしょに歩いてたら、容赦なく見られるもんな。しかも、女たちに」
「──それは赤間さんが相手でも、おなじでしょう?」
「同じじゃない。……な? これが、こいつをおすすめする理由。神経は鋼鉄製だよ。女の視線になんか、無頓着なんだ」
「……それだって、赤間さんにだけは言われたくないですけど」




