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Imitation Star  作者: 十七夜
1:羽角蓮が語る赤間優児
3/50

悪魔な元チームメイトに戦々恐々

羽角蓮:FF所属、昨シーズンまで横浜グラニからレンタル移籍。五輪代表候補。高知出身、酒豪、美形、方向音痴。

「おまえな! 酒飲みゆう場合やないき!」


焼酎入りのグラスに伸ばした手を、むんずと掴まれる。

ファンの女の子たちのふたりにひとりは、きっとその手で、自分のことを悦ばせてくれている、などとおもっているにちがいない。

ときどき、そういう関係を前提とした激励のファンレターが届いたりするのだ。

しかし、逢坂大和おうさかやまと羽角蓮はすみれんは、まったくもって、そんな色っぽい関係ではなかった。

いっしょの部屋にこもってやることと言ったら、ただの酒盛りだ。

羽角の寮の部屋に泊まったことは一度や二度ではないが、その真相は、酒豪の羽角に酔い潰されて眠っただけだという。


「酒飲まずにごちゃごちゃ悩んでて、何かいいことがあるのか?」

「薄情なこと言うな。オレがどうなってもええがか?」

「はあ。最悪、ポジション奪われるだけだろ。べつに、煮たり焼いたりされるわけじゃない」

「そがいなこと、わからんき!」


腰を浮かした羽角に両肩を掴まれ、がくがくと揺さぶられる。

さすがに、逢坂はグラスから手を離した。


「おまえ、あのひとがどんな人間か、知らんがやろ?」

「天才で、イケメンで、直さんの後輩……だろ」

「ち、が、う! にこにこ笑いながら、七転八倒しゆうチームメイトを眺める、アクマ! アクマやき!!!」


大きな目に涙を浮かべて、訴える。

逢坂はうなずいた。


「そのチームメイトっておまえのことだ? 半泣きになってたらもっと眺めていたくなるのも、ちょっとわかる」

「なんでっ?」

「かわいいから。俺は、頭くらいは撫でてやりたくなるけど」

「撫でんな! かわゆうないき! ……ううっ、せっかく、福岡の町にも慣れたのにぃ」

「うそ言うな。慣れてないだろ、ぜんぜん」

「慣れた! ひとりでデパートにも行けるし!」


しかし、ひとりでは帰れないのが羽角だ。

逢坂はそう言い返してやりたいのをこらえた。


「というか、ポジションが被るからって、まだお払い箱と決まったわけじゃないだろ」

「相手は代表やき!」

「元代表だろ。監督が変わってから、選ばれてない。それに、おまえだっていちおう、五輪代表だ」

「……そんな次元の話やないき! 赤間優児あかまゆうじゆうがは、人間とちがうの! おまえも、会えばわかる!」

「人間じゃなく、悪魔ねぇ?」


逢坂は、グラスを口に運びながら返した。

どんな被害妄想だろう、とおもう。

ユース時代、トップチームにいる赤間優児を何度も見ているが、「天才?」と首をひねりたくなるようなふつうの選手だった。

たしかにときどき、目が醒めるようなインターセプトなんかはしていたが、スルーパスの鋭さなら羽角だって負けてはいない。

けれど、サポーターに異常に愛されている選手ではあった。

サポーターだけではない。

ひとり、彼に尋常でない愛を注いでいる人間がいることを、今の逢坂は知っている。



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