本気になって
「誠さんの恋人が赤間さんってことは、古賀さんはフリーなんですか?」
「今はどうだろ。恋人見つけるつもりで、マコとの同居を解消してもう半年近いから──」
「………………」
「おまえ今、そこらの男からだったら奪えるかも、とかおもった?」
「おもいました。無理ですかね?」
「まあ、そこらの男からだったらな。ただ、礼が愛してるのって、実は俺なんだよね……」
いたずらっぽい微笑に、逢坂はうなずき返した。
「構いません」
「へえ?」
「だって、赤間さんは誠さん一筋でしょう? 誠さんは浮気を許すタイプじゃないし。許されないとわかっていてするはずありません。だったら、問題ないです」
「ふつうは、他に好きな相手がいるってだけで、大問題だとおもうけど?」
「それを言うなら、俺だって直さんが好きですよ。だからまあ、お互い様ということで……俺に、紹介してもらえませんか?」
「知り合いだろ?」
「ま、誠さんの恋人だとおもっていたので。連絡先なんか、訊いてません」
「──俺が紹介するわけ? まあ、俺はいいけど。けっこう悪趣味じゃない、それって?」
「じゃあ、誠さんに頼もうかな。……でも、赤間さんが誠さんの恋人だと知らないことにして、どうやって、誠さんの恋人だったはずのひとを紹介してくれって頼めばいいんです?」
「あのさあ。マコはおまえに、礼を恋人だって紹介したの? するわけないよな?」
「そりゃ、してませんけど。友人で、同居してる、って言われたら、遠回しに恋人だと言ってるんだ、って解釈しませんか?」
「…………実際につき合っていても、マコなら、そう言って紹介しそうではあるな」
「でしょう?」
身を離した赤間が、しげしげと逢坂を見下ろす。
「礼と、おまえか────言っとくけど、性転換してるわけじゃないから、見るやつが見れば、女装ってバレるぞ」
「いっこうに構いません」
「礼はさんざん俺と寝てるから、ヘタクソだと捨てられるかもな?」
意地悪な視線に、逢坂はほほえみ返した。
「誰とどれだけ経験があろうが、べつに気にしませんよ」
「おまえ、べつにゲイってわけじゃないんだろ? 直くんはあきらめるにしても、礼を選ぶことはないんじゃないの?」
「──正直に、答えてもいいですか?」
「つーか、ウソで適当な答えなら聞かなくていい」
率直な赤間のことばに、逢坂はうなずいた。
「俺のことを好きな、きれいな女なんかいくらでもいるけど、そんなのとつき合ってもたいくつなだけです。誰も、俺を夢中になんてさせてくれない。それに、ひとに紹介して祝福されるだけのパートナーなんて、つまりません。嫉妬やヤキモチなんてのも、うっとうしいだけだし」
「なるほどな」
「失ったらもう二度と手に入らないようなひとを、世間の批難や中傷から守り抜くくらい至難の交際なら、本気になってやる甲斐もあるでしょう? しかも、相手は他の男を愛しているひとだなんて──おもしろい。いつか、あなたより愛してると言ってもらえたら、どんなに誇らしくしあわせだろう」
「いい性格してるな、おまえ……」
赤間の視線に、逢坂はにっこりと笑い返した。
「まあでも、古賀さんに選んでもらえなきゃ、始まらない」




