先輩の愛
「俺は、直さんにちゃんと愛してもらっているとおもうし。直さんは、それほど器用だともおもえないし。俺も、大切なひとには、しあわせになってもらいたいですから」
「恋人ができれば、それが男でも、よろこぶとおもうよ?」
「直さんには、紀藤さんがいるので、恋人はサッカーをやめてからでもいいんだろうな、と。本気で欲しいのなら、得ようとくらいするでしょう?」
「まあね。してないよね、ひとの心配はするくせに」
「俺が迫ればつき合ってくれるかもしれませんけど、俺は、一生それで構わないんですけど……サッカーをやめて余裕ができたとき、きっと、俺との交際は、直さんにとって重りにしかならない。さみしいからって後々後悔するものをつかませるくらいなら、求めないのも愛情かな……と」
赤間が、ほほえむ。
それは、ふしぎな表情だった。
痛そうでもあり、眩しそうでもあり、でも、わかると言われている気もする。
「──そうか。おまえはほんと、俺がおもってたより、ずっとバカみたいだな。手に入るものを、みすみす逃そうとする」
「ええ、バカです。でも、直さんや誠さんみたいな先輩を、そばで見てるとね。俺、ふたりにあこがれているんですよ。自分さえ良ければいいって強引に行くのがフォワードらしさなのかもしれないですけど。チームのためを想うふたりの元で、俺だって育ててもらったわけですから」
「ふーん。まあ、自分さえ良ければいいってフォワードなら、直くんにフリーキック蹴らせるためにわざと倒されようなんて、はなから考えないしな」
「……なんで、今年はほとんどやってないのに、知ってるんですか?」
「大樹が試合見て、吠えてたから。あんなフォワードどうやって育てたんだ、さすが直だー、って」
「曽根、大樹さん……ですか」
「いくつ上?」
「八つ、ですかね。さすがに遠すぎて、先輩ってかんじはしませんけど」
「ふうん? まあ、そのうち帰ってくるよ、大樹も。FF愛なら、直くん以上なひとたちだからさ」
「そうなんですか?」
「そうだよ。直くんだって、アニキたちっていう先輩がいて、ああなってるんだ。おまえが先輩の愛に育てられたとおもってるなら、直くんに返すことより、下に注ぐことがその愛に報いるってことだからな」
「……はい。おぼえておきます」
うなずいたあと、逢坂は赤間の肩に手をやった。
「ところで、赤間さん。さっきの話ですけど」
「あー、礼のこと?」




